第二十一話 3つの関門
「シャアア!!」
「グルアア!!」
「キシャア!!」
「せい!」
ロストは3匹の化物相手に劣らない戦闘を繰り広げていた。
「まずは青色熊からだな」
「グルアアア!」
一気に距離を詰めようと踏み出す。しかし次の瞬間には立ち止まってしまう。
「くそっ、糸が」
「キシャアアア!」
間違いなくそのまま直進していれば胴体が真っ二つだっただろう。大蜘蛛の糸はそれだけの凶悪性を誇っている。
「シャーッ!」
「くっ!」
お次は毒蛇が刺を飛ばしてきた。当然当たれば麻痺する。当たった瞬間死にはしないがこの場で麻痺すれば死ぬことは容易に想像がつく。どの攻撃も容易に当たるわけにもいかず3匹全てに気を配らなければいけない。
「くぅ!」
「シャーッ!」
相変わらず蛇は毒刺を容赦なく飛ばしてくる、大蜘蛛は辺り一帯に糸を張り巡らせる。青色熊はその爪を振るう。絶妙なまでの3匹の連携である。
「キシャアア!」
大蜘蛛は隙さえあれば直接糸を飛ばしてくる。毒蛇は隙を見つけては噛み付いてくる。青色熊は常にロストを狙い続ける。
「はっはっは・・・・くそっ!」
ここでロストは賭けに出る。3匹の包囲網の穴を探しほんの一点だけだが空白地帯を見つける。
「これで間違えたら即死間違いなしだな」
そう苦笑を顔に浮かべているが負けるとは何一つ思っていない顔つきでその空白地帯へ駆け出す。
「キシャアアア!!」
「当然お前が来るよな、知ってたよ」
大蜘蛛がそんな隙を逃すわけもなく糸をロストへ向けて放ってくる。
「けど、ここを駆け抜ける!」
大蜘蛛の糸も当然張り巡らせてあったがそこをロストは風の刃で切り裂く。
「さすがに硬い!」
当然大蜘蛛の糸も魔力が込めてあり硬さはその糸を武器として使っているロスト自身も身に染みて分かっているが押し通る。
「うおおおおお!!」
「シャーッ!」
蛇はその立ち止まり糸を切ろうとしてるロストを見逃すはずもなく毒刺を一気に飛ばしてくる。
「壁!」
ロストは後ろを振り向きもせず背後に土魔法で壁を形成する、これで毒蛇の刺を数秒は防げる。
「これだけ防げれば十分だ!!」
そして風の刃に更に神力を込め風の刃の切れ味を跳ね上げる。そして遂に糸を断ち切ることに成功する。
「まずはあいつらを引き離さないと!」
「シャーッ!」
「ガルアアア!!」
「キシャアア!!」
それぞれ逃すものかとばかりに一気に詰め寄ってくる。そこにロストは地面を一気に凍らせる。
「こんな程度じゃ足止めにならないだろうな。だから!」
ここでロストはもう一手を加える。
「これで、どうだ!」
地面一帯を火炎地獄にした。人間ならこの炎に少しでも触れればその触れた部位が簡単に消し炭になるレベルの火力である。
「よし、流石に少しは足止めになったか」
ロストはその内に全力で走り逃げ回る。そしてようやく撒いたようで壁にもたれかかる。
「ハァ・・・ハァ・・・流石にキツイな。あの3匹相手は一旦引くことしか出来ない」
ロストは今は体力の回復の一手に全力を注ぐ。
「ここで体力を回復させながらあいつらの対処法を考えるか」
ロストは頭を回す。
「まずあいつらは間違いなく目がよくないはずだ。この点は俺の方に分がある、夜目が効くからな。ここは暗い、となれば一匹ずつ確実に仕留めていくのが得策だな」
運がいいのか悪いのか、今ロストがいる階層は言うほど広くもなく、狭くもない。そんな微妙な間取りを持った階層だった。
「何で仕留めるかな・・・今俺が使える武装としては糸、魔法、ボウガンか・・・」
今ある武装を確認し、どれが確実性を持つかを確かめる。
「糸・・・は微妙だな。一匹始末できたとして2匹以上いたら接近しないといけないから終わりだ。魔法・・・はある意味確実だが予想外な方向から攻撃されると少し危ないか。ボウガンは・・・ダメだな。俺の持ってる矢は状態異常系だらけだ。確かに今使えばこの窮地を切り抜けられるのかもしれないがここで使うのは矢が勿体無いか」
色々なパターンを頭の中でイメージし、実践する。
「・・・決めた」
ロストは頭の中で思い浮かべた数パターンの中から最も生存確率の高い戦闘方法を取る。
「結局これか」
そう苦笑しながら腕の手袋の輪を引き糸を取り出す。
「行くぜ・・・」
ロストは暗闇の中行動を開始した。
「グルルルゥ・・・」
青色熊は先程まで追い詰めていた小さな獲物を探す。あと少しの所で殺せたのだが一瞬の隙を突かれ逃してしまったのだ、そのため青色熊は少々気が立っている。
「ルルルゥ・・・」
次見つけたら確実に仕留めると思い小さな獲物を探す。
タンッ・・・
「ガルァ!!」
小石を弾く音がし、音源の方へ視線を向ける。
「ルルル・・・」
しかし音のした場所は無人、小動物一匹いない。
「・・・・・」
タンッ
「!!」
再び小石が地面を叩く音がし、そこに目を向けても何もいない。
「・・・・ルァ!」
いい加減苛立ちが頂点に達したのか青色熊は両腕を闇雲に振り回し始めた。音がした場所へ一気に駆け、左右に腕を振り回す。青色熊は嗅覚も最初に使っているが、どういう訳か小さな獲物は匂いが何一つしないのだ。結局、聴覚と視力の二つに頼るしかないのだ。
「ガルァ!」
「終わりだ、まず一匹」
青色熊は獲物を見つけたと思った瞬間獲物が逆さまになっている事を一瞬謎に思った瞬間青色熊は永遠の眠りについた。
「やはりバラけてくれたか、助かる」
ロストはあの3匹が固まっている状態が一番怖かったのだが、どうやら3匹は明確に仲間意識を持っていた訳ではなく殆ど偶然で出来たようなパーティだったようだ。
「これなら蛇も速攻で倒せばここを切り抜けられるか。ここの階層はどうやら主格のボス3匹を一気に襲わせるのが目的だったのか」
そんな適当な考察を述べながら蛇も速攻で殺すと決め、蛇を探す。
「あの蛇に糸は少し向いていないかもしれないな。体から刺を出すやつだ、完全には縛れない確率が非常に高い、確実に魔法で首を落とそう」
最初に蛇と戦闘した時のことを思い出し、油断は絶対にしないと肝に命じる。
「大蜘蛛用の準備も同時進行しないとだな」
そして再びロストは蛇を探しに行く。結局ほんの数分で蛇は見つかった。どうやら蛇もロストを探しているようでしきりに首を左右に振っている。
「・・・?あいつ夜目が効くのか?いや、それはないか。夜目が効くならあの場から自ら動いて探索するはずだ。たぶん俺の体温を探してるんだ・・・蛇らしい探知方法だな」
そこでロストはここから蛇までの距離を把握し、移動にかかる。
(恐らく俺とあの蛇の距離は13、4m弱。ここから蛇までの必要時間は2秒・・・いや、1秒以内だ。それで確実に不意を打ち首を・・・落とすッ!!)
そこで一気にロストは駆け出す。神力を使い、体に身体強化を付与させているため普通の人間から見れば一瞬で消えたようにしか見えないだろう。しかし蛇はロストが駆け出す1秒前にロストの方向に首を向け、ロストを視認した。
「何!?」
「シャーッ!」
しかし神速で駆け出したロストはもう止まらない。当然自分に突っ込んでくることが分かっていれば対処方法はそんなに難しい事ではない。
「シャーッ!」
「またか!」
蛇は一瞬で全身から針を出し、身を守る鎧とした。当然その針にはあの強烈な麻痺毒がたっぷりと付着しているだろう。
「ならその鎧ごと貫いてやる!」
「シャーッ!」
ロストは風の刃をいつもの3倍程に伸ばし、通常の片手剣と遜色ない程の長さを形成する。
「あんまり使い慣れてねぇけど、オラァ!!」
「シャー!!」
ゾンッ!
ロストは風の刃を蛇の針鎧に刺しこむ。少し鈍い音がし、ロストは針の鎧ごと貫通した実感があった。
「シャ、シャーッ!!」
「痛そうだな。だが今回は・・・」
瞬間ロストは左手にも魔法で刃の形を形成した。しかも今回はいつもの風じゃなく・・・
「鎧の内側から燃やし尽くされるってどんなモンなんだろうな?教えてくれよ」
赤色の炎ではなくもっと温度の高い青色の炎で形成された刃が左手に出現し、蛇に突き刺さった。
「シャーッ!?!?」
「そら、燃えろ燃えろ!!」
ロストは実に楽しそうに蛇を燃やす。炎の刃は青色の炎なのだがこれは神力を使った特別性の炎、まず通常の青色の炎なんかより全然温度は高い。その結果か・・・
「おっと、針が溶けたな」
蛇ご自慢の針がドロリと溶けてしまった。そしてそこまでの温度なのだから当然中身は・・・
「・・・・」
物言わぬ黒い物体になっていた。
「とにかく2匹目。残るは・・・」
「キシャアアアア!!」
「お前だけだよ、大蜘蛛」
丁度いいタイミングなのかロストが蛇を焼却している最中にロストを発見したのか咆哮を上げていた。
「キシャアアアア!!」
「ハァ!」
ロストは一気に大蜘蛛に向かい駆け出す、当然大蜘蛛は糸を張り巡らせる。
「甘い!」
ロストは目に神力を更に回し、通常では見えないような糸も全て見切り、避ける。
「ハァ!」
ロストと大蜘蛛の距離は1m程。この距離ならロストは普段は使えない魔法を存分に使うことが出来る。
「水槍!」
ロストは大蜘蛛の右側に一瞬で回り込み、水の槍を形成し大蜘蛛を貫こうとする。
「キシャアアア!」
「うおっ」
しかし大蜘蛛は一瞬でロストのいる方向へ顔を向ける。いきなり振り向かれたのでロストは驚きはするがそれも一瞬。正面は不利だと一瞬で判断を下し、すぐさま攻撃を切り替え更に大蜘蛛の側面を取ろうとする。
「遅れはとらないぞ」
「シャアアア」
大蜘蛛はロストの速さについていけておらず、すぐさま側面を取られる。
「ハァ!」
ロストは水の槍を投げて使うのではなく手に持ち、常に神力を注ぎ込み形、切れ味、硬さを維持し振るう。
「今度は左側面」
「シャアアアア!!」
ロストは一瞬で右側面の4本の足を切断し切り落とす。そして同じく神速と言っても違和感のない速度で左側面に回り込み、再び槍を構える。
「これで終わりだ」
すぐに4本の足を切り落とし、大蜘蛛の背中に飛び乗り頭を切り落とした。
「ふぅ・・・手こずったのは3匹固まってた時だけだったな」
ロストは武装の補充という事で大蜘蛛の腹を裂き、大蜘蛛の糸を回収し大蜘蛛を炎で焼却する。
「さて、階段を探すか」
そしてロストはこのフロアの探索を再開する。
「ああ・・・すごい、すごく強くなってる。でも次は大丈夫かな?最初の関門だよ。頑張ってね・・・私の騎士様」
最後まで読んでくださってありがとうございます。
今回の話はロストが2ヶ月前の時に比べてどれだけ強くなったのかを見てもらう話のような話になりましたね。あの大苦戦していた大蜘蛛を一瞬で屠れる程の実力をロストは身につけたって事ですね。
まぁまだ前菜なんですけどね、そんな簡単に抜けられる程食堂のメニューは甘くありません。
誤字脱字がありましたらお手数ですが報告よろしくお願いします。
応援、感想、アドバイス、お待ちしています。
たくさんの感想ありがとうございます!感想には基本返信を心がけています。感想が作者の励みであり、執筆の原動力になります。感想お待ちしています!
「補足説明」
「青色熊は獲物を見つけたと思った瞬間獲物が逆さまになっている事を一瞬謎に思った瞬間青色熊は永遠の眠りについた」の一文ですが補足の説明としてワイヤーで首を落とされたため上下が逆さになって見えたのが最後にみた風景、という事を意識して書きました。分かりづらい描写にしてしまい申し訳ありませんでした。




