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有無の騎士  作者: 七咲衣
魔神の食堂編
20/79

第二十話 本当の魔神の食堂

迷宮編開始!!

ロストが猛毒地帯を彷徨い、熱帯地帯を彷徨い歩いた時から2ヶ月は経った。ロストはその間にも武装や実力、精神的な強さも2ヶ月前とは桁が違う実力になっていた。


「・・・よし、準備完了だ。もう二度とここには戻ってこないかもしれないからな」


ロストは今日この拠点を去ることを決意した。その理由はこの魔神の食堂の北に当たる場所にあきらかに他とは一線を超える厳かな大扉があったのだ。ロストは直感でその場所こそ自分が超えるべき壁と理解した。そして何故かあそこを超えなければいけない気がしたのだ。


「長らく世話になった。ありがとう」


そう言い残しほんの2ヶ月と少しだがこの深淵に落とされてから初めて安堵できる場所だったのだ、愛着が沸くのは仕方がないだろう。しかしここにずっと留まっているのも力は手に入らないと思いここを出る決意をしたのだ。


「・・・行くか」


ガラガラガラ!!


そんな大きな音を立てロストの拠点は崩れた。


「さて、どんな所かな」


そしてロストは北の大扉へ向かう。


ロストは知らない。そこで自分の運命に大きく関わる出来事が起きるという事に。








「・・・ついた」


大扉には1時間もかからずに辿りついた。しかしこの大扉を潜ったが最後。間違いなく長期間に渡りこのダンジョンで過ごす事になるのは明らか。


「いいぜ、ここで力が手に入るというのなら俺はどんな危険地帯でも自ら飛び込むだろう」


「俺は12魔騎士を力で叩き潰す」


そして大扉に手を置いた瞬間まるでロストを待っていたような、呼応するように大扉は自然に開いた。


「・・・・・・」


ロストは大扉の向こうの暗闇へ歩いていく。


暗闇に迎え入れられるように・・・





「あぁ、やっと来た、来てくれた。私に相応しい唯一の騎士様。さぁ、早く・・・早く来て。ここからが本当の魔神の食堂。あなたには前菜、スープ、魚料理、肉料理、ソルベ、メインディッシュ、生野菜、甘味、果物、コーヒー。数々の難題が課されるでしょうね・・・それにこの食堂にはメインディッシュは一回ではないの・・・・・・・。でもあなたならそれを乗り越えられるわ。まだお互い名前を知らない者同士だけど、必ず会えるわ・・・」









ロストが大扉を通過した同時刻、第0院にて。


「あぁ~・・・死ぬ、辛すぎる」


そう言って食堂にてトールは仰向けに倒れこむ。


「情けないですわよ、トール」


そして食堂にはレアが入ってきてみっともなく倒れ込んだトールに注意を促す。


「そうだよ!男の子でしょ?もっと元気にしないとね!」


ヘスティアも食堂に入ってきてトールに発言する。


「今日は5人か、珍しいな」

「アレス、お前も今日は食堂に来れたのか。珍しいな、お前が来るなんて」

「俺だって師匠から許可が出れば飯を食べには来るさ。珍しいことは確かだが」

「今日集まれた面子はこれだけか?」

「いや、アルテミスも来るだろう。先に自室で汗を流すって言ってたがな」

「余裕だな、あいつ」


今食堂に集まった人数は4人、残りの4人はまだ来ていない。


「まず間違いなく倒れてるんだろうな」

「そうだろうね~」

「まったく、情けない限りですわ」


この第0院の訓練は想像を絶する訓練だった。致死性があるのは当たり前、今はまだ大丈夫だが子供達にはあと3年したら致死率90%以上の訓練を施すと各自の師匠に言われている。


「ハァ~・・・そうは言ってもよ~」


ここにいる子供達の実力は今や同年代の子供達とは比べ物にならないほどの実力になっている。通常の国の軍隊でもここの子供達全員で相手にすれば間違いなく壊滅させられることは確かな程の実力を既に手に入れている。それでも師匠達にはまったく足りないと言われている。


「皆揃っているようね」

「お、アルテミス」

「これで今日来られる者は揃っただろう。食事にしよう」

「そうだな~」


5人の子供達は自分の指定席に着き、横にある呼び鈴を押しコックを呼ぶ。


「ここのコック達ってどうしたんだろうな」

「さぁ、お抱えって言ってたし自前のコックなんだろう」

「へ~」

「そんなことよりまずは腹ごしらえだ。腹が減っては戦はできぬ」

「なんだよ、それ」

「俺の出身国に伝わる言い伝えさ」

「ふぅん」

「それより私お腹ペコペコだよ。早く食べちゃお!」

「そうだな」


各自自分の好きなメニューを注文し出来るのを待つ。


「それにしても・・・」


話すことがなくなり少し静かになった所でアルテミスが発言する。


「彼、どうしてるのかしら。もう3ヶ月ほど帰ってきてないでしょ」

「彼・・・あ、ロストか」

「そういえばそんな子供もいましたわね」

「一回も帰ってきてないもんね~」

「師匠達に聞いても訓練してるとしか言わないしな」

「何してるんだろうな」


彼らが思い出すのは約3ヶ月ほど前に1回だけ会ったことがある少年。少年は子供達が訓練を開始された日から一度も帰ってきていない。


「死んだのかしら」

「おいアルテミス!そんな言い方ないだろ!」

「そうだよ!きっと毎日厳しい修練をしてるんだよ!」


トールとヘスティアは死んだと言うアルテミスに抗議の声を上げる。


「彼貧弱そうでしたもの。ありえますわ」

「そうだな。ここの訓練は厳しいを通り越して異常レベルだ。あいつは見た感じ何かに秀でている雰囲気でもなかった。死ぬ確率は十分にある」


レアとアレスはありえると考える。


「っ、でも・・・」


それでもトールは何か言いたげだったがそこで料理が出てきたので口を閉じる。


「とにかくロストが生きてたならここに帰ってくるだろ。その前に腹ごしらえだ」

「・・・そうだな」


そして5人は食事を開始する。



そして第0院の子供達は想像もしない形でここからいなくなった少年と邂逅する。







「っ!早速お出ましかよ!」


暗闇の中ロストはいきなり横方向から襲いかかられた。


「アオオオン!!」

「ッ!懐かしい奴が出てきたな、おい」


何を隠そう襲いかかってきたのはロストを魔神の食堂の深淵に落とした立役者。あの狼の魔獣である。


「アオオオン!」

「おっと!」


いきなり爪を振るわれる。当然そんなものに当たるロストではない。


「あの時との違い、試させてもらおう!」


スゥゥゥ


「アオオオオン!!」


また一瞬奇妙な音がしたと思った瞬間狼の口から何か放たれた。


「おっと!」


ロストはそれを軽々避ける。


「なるほどな、この何かの正体は圧縮して放った空気か。あの奇妙な音は空気を吸ってたんだな。把握した」

「アオオオン!」


しかしいくら頭のいい魔獣とは言えさすがに人の言葉を把握は出来ない。


「一つ面白いことをしてやろう」


ロストは一つ悪巧みを思いついたように右手に魔力を集め始める。


スゥゥゥゥ


ロストは奇妙な音が一瞬した瞬間刹那の間に狼との間合いを詰める。そしておもむろに右手を狼の顔の前に突き出した。


ボンッ!


「息を思いっきり吸ったもんな。そりゃ周りがいきなり真空状態・・・・になったら内蔵はグチャグチャになるよな?」


ロストが行ったことは至極簡単なことである。狼の全身を覆うように辺りの空気を一気に風の魔力を使いなくしたのである。当然周りが真空状態になれば狼の肺の中の空気は外からの圧力がなくなり中の抵抗する圧力だけになり肺はその抵抗する圧力により自壊する。


「ガフッ・・・」

「終わり、だな」


もはや狼は吐血しか出来ない状態になっていた。


「まぁ火葬くらいはしてやる。じゃあな」


ロストはその狼を灰にするくらいの火力を持つ炎をイメージし、無詠唱で狼を火葬する。


「さて、当然これだけで終わりじゃないんだろうな」


どうやらここは相当に広いらしく壁なんて見える気配すらない。


「地道に進む道を探せってことか」


そう呟きながらも更に奥へ進む。


「グルアアア!!」

「甘い、その程度の気配読めないと思うな」


後ろから迫ってきていた殺気に一瞬で反応してみせるロスト。


「温いなぁ、それに今度は赤色熊か。今まで戦ってきた魔獣が大体出てくるみたいだな。今までの復習でもさせるつもりか?この洞窟の主は」

「グルアアア!!」


赤色熊は自分の爪を打ち鳴らし爪を発達させる。


「それに恐怖してた自分が懐かしいな」

「グルアアア!!」

「当然今はそんな安っぽい攻撃は喰らわないけどな」


ロストは後ろから迫ってきていた赤色熊の攻撃を軽々回避し一瞬で赤色熊の背後に回り込む。そしてロストは自分の手首まで覆うような黒色の手袋に付いている丸い輪を一気に引いた。


キィィィィ!


そんな音がし、取り出した武器で赤色熊の首を締め付ける。


「ま、終わりだな」


そして一気に力を込め左右に引っ張る。当然赤色熊の首が更に下層の大蜘蛛の糸に耐えられる理由もなくあっさりと首に食い込み一瞬で首が落ちる。


「あ、食料として必要になりそうだしこいつは解体しよっと」


そう言って赤色熊を風の刃で手早く解体していく。


「こいつ、どんな味するかな」


そう呑気に考えながら肉を採取していく。


「よし、解体完了」


残った毛皮などは服の代わりに纏う事にする。


「よし、こんなもんだろ」


そして皮を大蜘蛛の糸で固定し防具兼服にする。


「見た目はみっともないけどこんな所、俺以外誰もいないだろ。こんなもんでいいや」


そう結論付けしばらく歩く。


「しかし暗いな・・・あ、そうだ」


ロストは自分の体に魔力を巡らせれば身体強化できる事を思い出し目に神力を回す。


「十分だな。これで暗闇に困ることはなさそうだ」


ロストは自分の目に神力を回した結果視力が相当よくなり今まで5m先も見えなかった程なのに今は30m先は見えるようになった。


「夜目の心配はこれでなくなったな。十分だ」


そしてこれからは常時目に神力を回すことを決め、更に探索する。そしてしばらく歩き回っていると上に登る階段を見つける。


「ここから先に行けって事か」


そして躊躇うことなく足を階段に乗せ、歩を進める。


「ここで終わりか」


おおよそ20段程登るとロストが今登ってきた階段は消滅していた。


「後に引けない仕組みか。って事は多分ここで死ぬかここを登りきらないとこのダンジョンからは抜け出せないって事か」


そしてそう考察を述べていると右方向から濃密な殺気が襲いかかる。


「シャーッ!!」

「今度はお前か、毒蛇」


次に襲いかかってきたのは猛毒地帯に生息していたあの大蛇。


「シャーッ!」

「お前との戦い方は今でも根強く俺の頭の中に残ってるよ」


そう呟きここで巨大毒蛇との死闘が開始された。


「そう簡単にやられてたまるかよ」

「シャーッ!」


そしてロストは毒蛇の噛み付きを難なく回避し一瞬で勝負を決めようとした瞬間だった。


「ガアアア!!」

「うおっ!」


後ろから巨大な爪が振るわれそれをスレスレで回避する。


「お前も一緒に出てくるか」


何を隠そう巨大な力を手に入れたロストの一番最初の敵、青色熊だった。


「お前は楽勝だからいいや。しかし2匹相手か・・・少し手こずりそうーー」

「キシャアア!!」

「何!?」


再び別方向からの奇襲。しかも奇襲をかけてきたのは他でもない、ロストを一番苦しめた相手の大蜘蛛だった。


「グルルルル・・・」

「シャー」

「キシャアアア」

「この3匹を相手にか・・・こりゃ骨が折れそうだ」


しかし逃げる気は更々ないようでロストは体に神力を巡らせ身体強化を施す。


「行くか」


今までの強敵相手に一歩も引く事なく敵対する。


「ガルァ!」

「シャーッ!」

「キシャアアア!!」


ここで4匹の化物達による戦闘が開始された。


最後まで読んでくださってありがとうございます。

さて、今回から本当の魔神の食堂編が開始されました。今回の話では今まで戦ってきた敵の総集編みたいな感じになりましたがこれはほんの序章だからです。まだ序の口です。上の階層にはまだまだ化物を登場させる予定です。そう簡単にはいきません。作者、必死に魔獣の元となる動物勉強中。今度図書館で5、6歳児が読むような動物図鑑を読んでくる予定・・・

誤字脱字がありましたらお手数ですが報告よろしくお願いします。

読者の皆様の感想、全て読ませて頂いております。とても励みになり、これからも更に面白くしよう!という意気込みになります。これからもこの作品、よろしくお願いいたします。

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