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絶対に死にたくない銀河皇帝庶子が戦艦を与えられたので給糧艦に改装したら、前線へ出ずっぱりにさせられた件。  作者: 英 慈尊
1章 ファーストミッション

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マミヤのお仕事 後編

 給糧艦アマテラスにおけるマミヤ・ビルケンシュトック少尉の役割を、あえて既存艦艇のそれに当てはめるならば、主計長ということになるだろう。

 第二次世界大戦時代の昔から、軍艦において艦長に次ぐ役職として、非常に重要なポジションである。

 他に並び立つ立場なのが機関長と医療長で、地球文明時代から「機関長、医療長、主計長の三長官が暇そうにしているようなら、その艦は安心だ」というのが、水兵たちにとっての共通認識であった。


 さて、ここで常識的な話をするが、主計という兵科は実戦時において、戦力的に貢献できるところが少ない。

 これは、アマテラスが給糧艦という特殊な艦種に属するからではなく、他の艦種における主計兵も同様だ。


 戦闘時に果たすべき役割があるとすれば、消火活動や人命救助といった各種のダメージコントロール。

 軽視してよい役割でないのは間違いないが、現実的に、艦が撃沈される寸前なのを華々しく救うような活躍など、望むべくもないのである。


 そもそもが、戦艦というのは、各分野のスペシャリストたちがそれぞれの職分を果たし、一個の生き物として力を合わせることで真価を発揮する兵器。

 万年筆を模した記章の兵士が実戦時の戦闘力へ大いに貢献しているようでは、それはもう、戦う前から負けているのであった。


 ただし、これはあくまでも一般的な主計兵における話であって、それを統括する長ともなれば、やはり話が変わってくる。

 では、戦闘時の主計長に課された重大な役割とは、何か?

 ズバリ、戦闘記録の作成であった。


 地球文明時代から、様々な形で戦闘のオートメーション化を推し進めてきた人類であるが、結局、マンパワーが最後にモノを言う構図は変わっていない。

 それは、人間ほど柔軟性の高いマシーンをついぞ生み出せなかったからであったが、ここで重要なのは、人間が主役である以上、精神的感情的な影響からは逃れられないということ。

 それを記録するのに最も適切なのは、やはり、同じく感情を持つ人間であるというわけだ。


 ゆえに戦闘時、マミヤはブリッジに立ち続けていた。

 特に描写もなかったので、一見すれば何もせずあいつ(A)大した(T)棒立ちだぜ(B)バトルしていただけのようにも見えるが、手元のタブレット端末にはしっかりと記録を打ち込んでいたのである!


 とはいえ、多くの速記がそうであるように、こういったものは急変する現場(げんじょう)に対応すべく、略語のオンパレードと化している面があるため、そのまま戦闘詳報として提出するわけにはいかない。

 ゆえに、後日の清書が必要不可欠であり、マミヤは今、私室にてその重要な業務へと挑んでいたのだ。


「――日、本艦はジンバニアの隠密隊から攻撃される火力艦ヴェルダンディの現況を把握。

 非武装の給糧艦たる当艦であるが、友軍の危機を見捨てるわけにはいかず、僚艦たるシールド艦クシナダと共に勇進ス」


 カタカタ……と。

 20世紀から一切形式を変えぬキーボードのタイプにより、言葉を打ち込んでいく。

 高度にモジュール化された結果、艦内での職責に関わらず、全員が同じ内装となっている個室は、しかし、年頃の女の子らしくいくらかの私物で華やかせてあった。


 通常、壁面に収納されたままである洗面台は、出しっぱなしの状態で各種コスメを配置しているし、同じく壁から引き出したままのベッドには、ハート型のクッションを配置。

 さらに、室内の片隅にはアロマディフューザーを設置しており、無機質な室内を香りでもって彩っているのである。


「当艦が駆けつけた折、敵M2部隊の攻撃と同隠密艦の雷撃を受けたヴェルダンディは、すでに大破状態。

 戦闘力と航行能力の喪失を確認する。

 ただし、艦本体のフレーム部分は健在であり、ヴェルダンディ側の通信機器故障もあり確認はできないものの、乗員の大半は生存していると判断。

 救援のため、戦闘に突入ス」


 モニターのウィンドウには、当時ブリッジで記録したログが、ズラリと並んでおり……。

 素人には意味不明な時刻と記号の羅列にしか見えないだろうそれを、文章という形に翻訳していく。

 翡翠の瞳に映し出されているのは、しっかりと記憶したあの時の光景……。

 火力艦ヴェルダンディで発生した副官の内紛を握り潰すため、いささかの虚飾を必要とする今回の詳報であったが、今記しているのは一切の嘘偽りなき真実だ。


「艦長イラコ・ジーゲル殿下はかかる状況に対し、単身、出撃を決意。

 本艦の空きブロックへ艦外作業用に搭載していた旧式試作機に搭乗ス」


 だが、ここでマミヤの瞳に――様子のおかしい輝きが宿り始めた!


「第四皇子殿下いわく、

 『武装がない!?

 だから何だって言う!

 タイゴンはただの旧型M2じゃないんだよ!

 動かし方次第で、戦えるってことを見せてやる!』」


 せっかくなので、音楽をかけておこう。

 イラコ殿下は精神的ロジスティクスと称して、軍歌――すなわち音楽のことを言及していた。

 なるほど、優れた音楽というものは仕事を捗らせる。

 ……というわけで音楽アプリの作業用BGMフォルダをランダム再生すると、腹の底に響き渡るような出だしを特徴とする軍楽風のBGMが、モニターのスピーカー部から鳴り響いた。

 なんと高まる気分……!

 今にも、巨大なナニカが大地へ立ちそうだ!


「出撃したイラコ殿下は、兄君たちに敵の矛先が向かわぬよう挑発を敢行。

 以下は、その一部抜粋である。

『ジンバニア王立連合のM2部隊に告げる!

 今、お前たちの前に出てきたこのM2――それが何だか、分かるか!?

 乗っているのは、この俺だ!

 銀河帝国第四皇子、イラコ・ジーゲル!

 人質に頼るしかない腰抜けどもに、この首をやれるものか!

 欲しいというなら捨てて来い、人質なんてものは!

 そして正面から来るんだ!

 来られるものならな――ジンバニアのM2部隊!』」


 カタカタカタ……カタカタ、と、スゴ腕のピアニストもかくやという素早さで、マミヤの指がうごめく。

 マミヤはな、今、止まらないんだよ!

 この詳報作成だってそうだ!

 誰が止めるっていうんだ、こんなもの!

 やれる時にやる、それが一番なんだ!

 今のマミヤは絶好調なんだぞ!

 止められるものなら止めてみろってんだ!


「さらに第四皇子殿下の言葉を記録として残す。

 『返答はもらった、中隊長殿!

 礼は言っておくが、それで引くつもりはない!

 改めて名乗る!

 俺は銀河帝国第四皇子、イラコ・ジーゲルだ!

 皇子が直々に相手をしてやるんだぞ!

 その意味、分かっているんだろうな!

 栄誉だと思うなら、逃げるなよ!

 堂々とかかって来い!

 来られるものならな――中隊長殿!』

 うふ……。

 うふふふふ……」


 怪しい笑いが、爆音BGMの鳴り響く室内にこぼれる。

 なんという素晴らしい戦闘詳報であろうか。

 もし、毎週土曜日の夕方に放送したのならば、重厚かつ斬新なミリタリー描写に根強いファンが生まれ、後に新規カットも加わった総集編的な劇場版が上映。

 プラモデルもガッポガッポと売れて40年以上続くコンテンツとなり、どこぞの商業施設に等身大タイゴン立像が建造されることであろう。


「さらに、当艦及びシールド艦クシナダには隠された機構が存在。

 両艦が変形合体することにより超巨大スーパーロボット、アマテラスオオカミが――」


 かくして、マミヤ・ビルケンシュトック少尉特製の戦闘詳報は完成せり。

 後日、タキオンネット経由でこれを一読した銀河皇帝フリードリヒ・ジーゲルは、久しぶりにかつての戦友ことメケーロ・ビルケンシュトックへ、メッセージを送ったという。

 メッセージの内容は、こうだ。


『マ?』


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― 新着の感想 ―
そのままで皇帝までお目通し通ったのかよ、この報告書⋯⋯
「もえあがれ~♪もえあがれ~♪燃え上がれ~♪タイゴンーー♪」 マミヤ副官の作業用BGMはきっとこれですね。 かくして第1話『タイゴン 大地に立つ』から40年以上続くシリーズが開幕。 プラモデルはガッ…
皇帝w
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