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オクトール様も、言うときは言うんだなあ、と思いながら、わたしはナノハの出方を見る。下手にこっちから仕掛けると、状況がひっくり返されそうで怖い。アインアルド王子に彼女を攻略してもらうよう誘導したにも関わらず、何度か失敗しそうになってひやひやした記憶が蘇る。
攻略ヒロインの中では一番幼い見た目をしているが、中身は外見に反比例している。
適当なところで会話を切り上げて、ロルク氏とノルテンブデン氏を探すのに戻りたいな、と考えていると――。
「美しいだろう?」
――まさかの、オクトール様の発言だった。思わず、「へっ?」と侯爵令嬢にあるまじき、間の抜けた声を上げてしまう。わたしは慌てて持っていた扇で口元を隠した。
褒めてくれるとか聞いてないんですけど!?
あまりに唐突なことに、わたしは対応しきれない。やばい、今どんな顔してるんだろう。
オクトール様がずっと自信なさげにしていたものだから、彼が失敗しそうになったときのシュミレーションは何度か脳内で行っていたのだが、まさかここまでやってくれるとは全く思っていなくて、処理が追い付かない。彼をあなどっていたつもりはないけれど――自分が情けない。
ああ、もう! どうにでもなれ!
「……他でもないオクトール様が選んでくださったドレスですもの。似合わないわけありませんわ」
顔面を取り繕えた自信はあまりないが、少なくとも声は震えなかった。さっきまでの調子が戻っている。
これはこれで、仲良しに見えただろうか? 少なくとも、アインアルド王子に未練がないことはアピールできたと思うんだけど……。
「……仲が良さそうで結構デスね。アインに振られたので、どうなることかと思ってマシた」
……これはどっちだ? 妙に張り付けたような笑顔が、分かりにくい。
でも、ここまで来たなら最後まで走りぬくのみ。
「確かにアインアルド王子は婚約者でしたけれど……親の決めた結婚相手に嫁ぐのが貴族令嬢というものではなくて?」
一夫多妻制が嫌で、アインアルド王子からいい感じに婚約破棄してもらうために、前世の知識を総動員してアインアルド王子にとってのハーレムエンドを成し遂げたわたしが何を言ってんだか、という話ではあるが、まあ、この世界の人間には分からないことである。
アインアルド王子に気持ちがないからショックを受けていないことと、オクトール様と仲がいいというアピールはこれで十分だろう。ナノハの笑顔が微動だにしないので、ハッキリ伝わったかは分かりにくいが、ここまで言って分からないような相手ではない。
丁度いいし、ロルク氏の所在を聞いて別れるか、と思っていると、タイミングよく、ロルク氏の方から声をかけてきてくれた。




