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ナノハ・シャハルク。
よく言えばスレンダー、悪く言えば幼児体形な小柄なヒロイン。貧乳キャラポジションの彼女は、非常に面倒くさい。
一見して、明るく気のいい性格に見えて、その実、商人の孫娘として、いろいろと計算づくで行動するタイプの人間だ。裏表のないベルデリーンと違って、言葉の全てが嘘っぽい。恋愛フィルターをかければ、小悪魔タイプに分類されるんだろうか。
ただ、攻略後は主人公の前でだけは素直な女になるという、そういうところが人気なキャラだったんだけど。
個人的には嫌いなタイプ。まだ分かりやすく警戒心と敵対心をバチバチに向けてくるエルレナの方がいい。
とはいえ、ロルク氏を探すなら彼女も一緒だと思っていたので、そこまでげんなりするわけでもない。話しかけられたのは意外だけど。
そもそも、王位を目指し、アインアルド王子を敵対視している時点で、彼の周りにいるヒロインたちに関しては、一人として関わらずに避けられる気がしない。
「素敵なドレス着てマスね! シルちゃんに紹介してもらったんデスか?」
独特なイントネーション。確か、シャハルク商会に出入りする東ヶ島の商人に世話してもらうことが多くて訛りが移った、とか、そんな設定だったっけ。彼女に会うたびに思うけど、出身地はこの国なのに、いつまでも訛りって抜けないもんなんだろうか? しかも、仮にも妃になる人間なら矯正されると思うんだけど。
まあ、キャラ設定に突っ込んでも仕方ないか。他との差別化よ。
――しかし、シルちゃんに紹介してもらった、ね。
確かにレインリースはオルゴンド商会に所属する商会の系列店。予約が殺到する店で先に新しくドレスを作ってもらうなら、シルヴィアの口利きがあったと思ってもおかしくはないだろう。実際、見合った見返りがあれば、シルヴィアはそういうことをしてくれる子だし。
でもこれは――と、反論しようとしたら、先にオクトール様が「僕が贈ったんだ」と口を開いた。
「女性の衣装にはあまり詳しくないが、他者からも似合っているように見えるならなによりだ。……それにしても、レインリースはオルゴンド商会の系列だったのか」
最後の方はほとんど独り言のようだったけれど、ナノハの耳にはしっかり届いたようだ。別にシルヴィアの口利きじゃない、どころか、オルゴンド家そのものが関係ない、ということは彼女にちゃんと伝わったはず。
その証拠に、数回だけ、不自然なまばたきをしていた。。嫌味を言ったつもりなのに、言い返されてつらまらないんだろう。
今だ、とばかりに、わたしは少しオクトール様にすりよるように近付いて、「オクトール様、わたくしの為にいろいろ調べてくださったんですの」と、言う。
オクトール様が動揺する気配も、眼鏡のふちを撫でる様子も感じない。……独り言じゃなくてわざとだったか。




