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二つの名前が出れば、多少、オクトール様の表情が和らいだのが分かった。緊張よりは、若干、興味の方が勝ったんだろう。前もってシルヴィアに聞いておいて良かった。
「お二人を見つけたら声をかけましょうか」
「……いいのか?」
「もちろんですわ」
シャハルク商会の商会長も、ノルテンブデン氏も、シルヴィア経由で紹介してもらえるはずだ。シルヴィア自身が、気になる人物がいれば間を取り持つ、と前々から言っていたから。
社交辞令かな、なんて思ったのは最初だけで、以前の夜会で本当に何人かは紹介して貰っている。多分、向こうも向こうで、侯爵家と関係ができる、とメリットがあるから成立するんだろうけど。
侯爵家のわたしでメリットを感じるのだ。王族だったら、もっと関わり合いになりたいだろう。
「シルヴィアから出席する人のことはある程度聞いていますわ。オクトール様の興味がある人にだけ声をかけましょう」
あとは有象無象――と言ってしまうと言い方が悪いが、それでも、関わらなくていい背景だと思った方が、オクトール様の精神的にはいいのではないだろうか。
わたし自身はシルヴィアと話せれば満足だし、不特定多数には、わたしとオクトール様が仲良しであるというアピールができればいいので、わざわざ話しかける必要はない。
むしろ、一人ひとりにオクトール様とは仲が良くてアインアルド王子との婚約破棄には何のダメージも受けていない、と言ってしまえば、どうにも嘘っぽくなる。言い訳がましく感じるだろう。
「何か楽しいと思えることを考えましょう。今回は貴族だけでなく、あらゆる商会の人間が来ていますのよ。例えば素材の話とか、新しい魔法道具の話とか、そういう話ができるかもしれませんわ」
わたしからしたら、まだまだ勉強中の身だから、あんまり魔法道具全振りの話になってしまうと置いてけぼりになる可能性が高くて抵抗はあるが……そもそも他人と接するのが苦手なオクトール様に比べたらマシなはず。
「――屋敷が見えて来ましたわ」
貴族家の館にしては新しく、平民の家にしては豪華すぎるオルゴンド家の屋敷。家督を買い取った際に改装を行ったとシルヴィアからは聞いていたが、何度見ても凄いものだ。子爵家という爵位で、うちの侯爵家と変わらない規模のものを持っているとは。……いや、家督を買ってすぐだと言っていたから、あのときは男爵家だったのか?
このサイズの屋敷だから、招待客も結構な人数だろう。実際、ざっくりとシルヴィアに人数を確認したら、なかなかの人数が今日やってくると言っていた。
不安はあるけれど――うん。
「二人ならなんとかやれますわよ」
わたしは自分にも言い聞かせるように、オクトール様へと言葉を投げかけた。
わたしの言葉を聞いて、計らったように馬車が止まる。
――さあ、夜会が始まるぞ。
緊張も不安もあるけれど、二人ならなんとかなるだろう、と思ったことは、嘘じゃない。きっと、大丈夫。




