第16話 心臓の音 その1
「ふあぁ…眠い…」
メルスがおおあくびしながら呟く。メルスとミアはエクトル達と別れ一旦先に宅邸に戻る予定だ。
「なぁ…なんか声しないか?」
「は?」
今俺たちは森の道を通っているのだが…たしかに何か大声が聞こえてくる…どこかで聞いた覚えのある声だ…
「止まりますよ‼︎」
「うあぁぁぁっ!」
フィリシアが馬車を急ブレーキさせる。メルスとミアは体制を崩し壁にぶつかる。
「痛えな…おい!フィリシアさんもっと優しく…ってなんだこれ⁉︎」
馬車の止まった先にある光景は無数の死体が転がっていた。残酷な風景だ…。
「何よこれ…でもこの兵士って…」
「バルカラ帝国の兵士ね…馬車もあるから次期王女アンネ様の軍団ではないでしょうか?」
「なんだあいつか…別にいいだろほっといて」
メルスが興味なさそうな素振りを見せる。恐らくさっきのアンネの対応で嫌気がさしたのだろう。
「でも…彼女に何かあったなら助けなきゃ…」
「おいおいマジで言ってんのお前?さっきあんな対応されたんだぞ?あんな奴ほっといてもいいだろ。俺たちには関係ないさ」
「駄目だよ。助けなきゃ」
もちろんミア自身はバルカラ帝国の事を良く思ってないし、アンネロバートの発言によって傷がついているだろう。しかし彼女の心にはきっと分かってくれるだろうという希望もあった。
「ミア様どうされますか?」
「決まってるじゃない。アンネを探すわよ。ここにはアンネの死体はない。まだ生きてるはずよ」
「探すって…どうやってだよ」
「あんた少しは考えなさいよ」
少し口喧嘩になっている。とにかくこの状況を見る限り…あまり考える時間の余裕もない。今こうしている間にも何者かと戦っているのか…あるいは逃げている。
「東の方から声が聞こえたぞ」
「ん…」
「俺がさっきなんか声するって言ったやんか。東の方から聞こえた。だからあいつは多分そっちだ」
メルスが東の方向に指を刺しながら話す。
「じゃあ行くわよ!私についてきなさい!」
「フィリシアさんはどうするんですか?ここで待ってますか?」
「私もついていきます。あなた達に何かあったらまずいので…」
「わかった。じゃあ行くぞ!」
ミア達は東の方向へと走っていった。




