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EPISODE 11 ~計画を中止させよ!

ガウェインを倒した一行は通路の奥へ、奥へと進んでいく。

が、誰一人会う事も無く、物騒な博麗製鋼の静かな世界の中を突き抜ける。

所々にある埃や煤が使う人の少なさを物語っていた。


「お、あれは?」


錆びついた手すりと共に設置された、古臭い階段。

螺旋状になっており、何処へ繋がっているのかは分からない。

・・・が、カナがここで口を開いた。


「この階段・・・非常用階段です。見覚えがあって・・・。だからここは・・・」

「そうか!ここは非常用の出口なのか!」


ここの存在が納得いった4人。

非常用の階段など余り使う人はいない上に、非常時しか使わないここの人の少なさにも辻褄が合う。


「でも何故あそこに警備用ロボットが?」

「私たちのような考えを持つ人たちが他にもいるんですよ、きっと」


サリエルたちは目の前の螺旋階段を昇って行く。

階段を昇る際に鳴る、鉄の鈍い音が使用者の少なさを醸し出していた。


「・・・これで最上階まで昇るんだね?」

「奴らは最上階にいます・・・会議でも何か行ってるはずです」

「確かにこんな状況でのんびり出来ないしな」


目が回りそうになる程螺旋状の階段は続く。

昇るにつれて手すりの錆びは少なくなっており、段々使用者が増えてきたことを語る。

所々に設置された扉。

これが色々なフロアと繋がっているのだ。


「因みに最上階は何階・・・?」

「ここの最上階は・・・確か27階です」

「要するに扉を26回見ればいいのね」


気が遠くなりそうな階段。

螺旋状の階段から上を見上げると、限界までまだまだ距離があった。


「・・・なんか気が遠くなるような世界ですね・・・」

「螺旋状ってのも一種の嫌がらせみたいね・・・」


精神がおかしくなっていきそうな階段。

それでも彼女たちは昇って行った。

扉の奥から聞こえる様々な声。

喋り声、笑い声、怒号・・・。


賑やかな社内にカナは何処かイラつきを感じていた。


「こんな会社・・・こんな会社・・・堕ちて正解なんだよ・・・」


悲しそうに呟いたカナの言葉。

そこには夢も希望も一夜にして失った、可哀想な悲嘆が含まれていた。


「私たちはこれが正しいと思ってるけど、多くの人が犠牲になるんだろうな・・・」

「・・・いつか博麗製鋼は潰れる。・・・これは紛れも無い事実だろう。

・・・横領を止めなければ」

「でも銀行も横領に関してはザル警備では無いでしょ?と思い始めたんだけど」

「向こうには粉飾のプロが存在しましてね・・・」


「あ」


そう、博麗製鋼は先日まで隠蔽を隠し続けていたのだ。

これが内部告発者である美鈴のお陰で発覚したのであり、横領はまた別の内部告発者がいないと立件出来ない。

・・・鈴仙、衣玖といったエキスパートたちが再び立ちあがったのだ。

そして銀行も、横領されるとは予想だにもしていない。

・・・このままでは着服されるのも時間の問題だ。


「酷い奴らだな・・・」

「でも金勘定に関しては向こうのほうがレベルは上。・・・こうなったら戦うしかないんだよなあ・・・」

「何か複雑な心境に陥りますね・・・」


サリエルを筆頭にした4人は進むこと何十分かで最上階・・・階段の終焉までやってきた。

もう続きがない扉。

サリエルはその扉を開けると、眩しい日光が彼女たちの視界に入る。


「ま、眩しっ」

「静かに」


夢美はぬえを制した。

ここは既に最上階フロア、いつ見つかってもおかしくない場所だ。

4人の近くの大きな部屋の中からは誰かの会話が聞こえる。


「霊夢と魔理沙・・・経営者と副経営者です」

「よし、会話の録音だ。ぬえ」

「任せてください」


誰にも気づかれないように4人はその部屋の近くに隠れ、ぬえはその部屋の扉近くに録音機をセットした。


「霊夢、だから私たちはもう無理なんだよ・・・あれを行わなきゃ」

「・・・仕方ないわね。・・・鈴仙曰く、美鈴が盗んだらしいね、あの書類」

「解雇されたことに腹を立てたみたいだぜ・・・」

「ったく、私たちを困らせるなんて、酷い裏切り者ね。

・・・そういや美鈴は銀行に匿ってもらっているらしいじゃない」

「鈴仙の報告だとリリーが支店長を務める支店にいるみたいらしいぜ」

「じゃあ私たちも復讐、よ。奴らの金を着服して宇佐見銀行を破綻させる。

・・・破綻すれば奴らの融資を受けていた多くの会社が消えていくだろうね。

・・・私たちから身を引いた投資家や株主のようにね!」


どうやら霊夢は間接的に陥れた銀行に恨みを抱いているらしかった。

宇佐見銀行から融資を受け経営している企業を博麗製鋼の株主と捉え、同じ運命を歩ませたいらしい。

そんな考えに至らせた4人は何とも言えない感情になった。


「確かに悪いのは向こうだけど、霊夢たちにも感情はあるんだよな・・・」

「でも勝手に経営不振に陥った向こうのやり方がいけないんじゃないの?」

「どうして経営不振に陥ったのかな?」


夢美の極論に誰も答えるものはいなかった。


「・・・どうして、なのかな・・・?」

「それもいつか答えが出るはず・・・」


すると部屋から物音が聞こえ、扉のドアノブが動いた。

誰かが中から出る合図だ。


「隠れろ」


見つからないように隠れた4人。

部屋の中からは魔理沙が立派なスーツ姿で出ていった。

彼女はエレベーターに乗って何処かへ向かっていった。


「・・・さて、霊夢をまずやっつけますか・・・!」


サリエルはすれ違い様に部屋の中へ入り、続いて3人も入る。

ぬえはその際に設置しておいた録音機を回収する。

シンプルに綺麗な花だけが飾られた大きな部屋の中で、椅子に座っていたのは霊夢であった。

外の眺めを見乍ら、やってきた敵を把握した。


「来たのね、ここに。よく見つからなかったわね」

「お前が色々な道を作ってくれたお陰さ」


サリエルはセノヴァを構えた。


「・・・で、本日はどのようなご用件で?武器を構えてるなんて物騒ね」

「着服しようとする経営者なんかよりは全然物騒じゃないと思うんですけど」

「・・・!?・・・な、何故それを!?


霊夢は腰を抜かした。

2つ目の緊急事態用の画策が既に敵に知れ渡っているとは思ってもいなかったのだろう。


「宇佐見銀行に腹を立てて着服、横領・・・人間の屑ですね」

「罪もない沢山の企業を潰して自分たちだけ生き残ろうとする愚行なんか止めて見せますよ」


霊夢は立ちあがり、4人の前に立っては笑い始めたのだ。


「そうね、あんたたちなら知ってると思ったわ。・・・でも証拠なんて無いじゃない」

「今さっき話してたこと、もう忘れたんですか?」


ぬえは録音機を取り出し、先程の会話を全て再生する。

紛れも無い魔理沙と霊夢の会話。疑いようがない。


「・・・で、他に言い訳は?」

「・・・そうね、他には特にないわ。

でも、その録音機・・・私が取り戻さなきゃ不味いみたいだからここで消えて貰うわ!

この会社の塵となって消えなさい!反逆者たちよ!」


「・・・何が反逆者、だよ。これが経営者だとは考えたくもないな」


吐き捨てた夢美の発言に頭に血が昇った霊夢は怒り、大声で言い放った。


「あんたたちは私たちの計画、画策の殆どを邪魔してきた!

生きるだけで精一杯の私たちを殺そうとして、無実な社員たちも間接的に追い詰めているじゃない!」

「いやいや、霊夢も私たちや宇佐見銀行を追い詰めようとしているじゃん」

「どちらも正しいと思ってるからこういう戦いが起こるんですね・・・」


サリエル以外の3人も武器を構え、霊夢も近くにあった博麗製鋼製のとてつもない武器を構えた。

全長3mはある長い丈を誇る黒塗りの銃に「博麗製鋼」と刻まれていた。


「れ、霊夢・・・なんだその武器は?」

「中小企業なんかでは作れない、博麗製鋼最新の武器『4000XL』よ。

・・・一撃であんたたちなんか吹っ飛ばせるわよ」


「基本理念を作ったのは私たち・・・。・・・こういう形で使われるんですね」


カナは道路標識を地面に刺しながら呟いた。


「そうね、なら1つ問題を出してあげるわ。

・・・毎月定額を払えば使い放題なものは何か、知ってる?」


霊夢は得意そうに問いを出してきた。


「な、何が言いたい!?」

「いいから答えなさいよ」


「・・・携帯のパケット通信とか、ですか?」

「それも正解ね。でもサリエルが1番身近なものもそうよ」

「サリエルさんが1番身近なもの・・・?」


4人は悩んだが、他に答えが出ない。


「分からない。答えは何だ、霊夢」


すると霊夢は4人を嘲笑しながら答えた。


「正解は・・・『正社員』。あんたたちの事だよ!金さえ払えばあんたたちは幾らでも会社に貢献する!

この4000XLもあんたたち正社員を扱き使わせて作った代物!

量産出来ないこの武器こそ、あんたたち社畜の力の結晶!どういう形で使うかは私の自由なんだよ!」


「・・・正社員を道具扱いしてるのか、霊夢。経営者として失格だな」

「そういう固い考えをしてるから何時まで経っても中小企業のままなのではないのかしら?」

「お前な・・・!」


サリエルの本気の怒りを買った霊夢。だが本人は嘲笑っていた。


「・・・怒ればいいじゃない。それが社会の暗黙の了解、あんたたちには壊せないのよ」

「・・・やってみなきゃ分からないですね」


ぬえはきっぱりと言い放った。


「私はサリエルさんの会社を優良企業として認めています。このままなら精進して成長しますよ。

逆に貴方たち博麗製鋼の経営は最悪。それに横領まで視野に入れてるじゃないですか」


「・・・あはははは、だから何?」


開き直った霊夢。もう彼女を助けられないと悟ったサリエルは剣先を霊夢に向けた。


「正社員は道具なんかではない・・・!・・・彼らにも、彼女らにも意思はある!」

「意思はあるけど、会社に背くようなら解雇すればいい話なんだけどね。

・・・だって代わりは他にうじゃうじゃいるじゃん。・・・カッコいい言葉を押し付けないでよ」


霊夢は4000XLの砲塔の先を4人に向けた。


「ならその真実を覆して見せなさいよ。・・・サリエル、愚かな考えの持ち主がね!」


                     δ


霊夢は構えていた4000XLで一気に4人に射撃した。

その瞬間、彼女たちに襲い掛かったのは物凄い衝撃波。

部屋の壁を壊し、外からの風が入れるようになってしまった。

4人は部屋の何かしらに必死に掴まるが、物凄い衝撃波はそれらも崩し、縁に必死に掴まっていた。

部屋の下に敷いてあったカーペットも衝撃で吹き飛び。部屋の床も衝撃で抜けそうになっていた。


「見たでしょう?これがあんたたちの力よ!」


吹き荒れる暴風。

コンクリート基礎も揺れ始め、不安定になっていく。

最上階のコンクリートに掴まって抵抗していた4人の真下はコンクリートの道路。

落ちたら一溜まりもない。


「うう・・・!」


とてつもない力を前に狼狽える4人。

博麗製鋼が作り上げた最新兵器はとてつもない力を誇っていたことをつくづく感じた。

やがて暴風が吹き止むと、4人はガタガタになった部屋に戻り、霊夢と対峙した。

当の霊夢は楽しんでいた。


「・・・どう?これが最新技術よ」

「もう少し他の所に力をかけろよ・・・!」


サリエルはセノヴァを構えて一気に斬りかかったが、霊夢は再び射撃した。

が、ぬえがその瞬間に霊夢の手元にショットガンで撃ち、霊夢は4000XLを一瞬離してしまう。

4000XLは5人に牙を剥き、霊夢はすぐに4000XLを持ったものの、彼女たちは外へ衝撃波で流されてしまう。


「お、落ちてる!?」


最上階から落下しようとしている5人。

霊夢は真下にいる4人に向かって落ちながらも4000XLを構えた。


「これで死ぬのね!」


再び4000XLを構えて真下に向かって射貫いた霊夢。

避けようのない4人はそんな霊夢にどうしようもなかった。


「きゃあああああ!!!」


真下に向かって放たれた衝撃波が彼女たちに襲い掛かるが、空気上の抵抗で落下速度は変わった訳ではない。

暴風が彼女たちの邪魔をするが、ぬえは狙いを定めた。


「狙い完璧!」


暴風を考慮したうえで、落ちながらも彼女は真上に向かって射撃した。

その銃弾は霊夢の腹部に直撃し、彼女は4000XLを手放して腹部を押さえる。

が、もうコンクリートは迫っていた。


「武器でビルの窓ガラスを突き刺して固定しよう!」


                       δ


4人はすぐに博麗製鋼のガラスに武器を刺し、自身を固定させた。

霊夢は空中の4000XLを再び構え、同じくガラスに突き刺して固定した。

中で働いていた社員たちは突然割れたガラスに驚愕するも、そこに入ってきた5人に更に驚く。

負傷した霊夢はすぐに倒れ、サリエルが尋問をかける。

ぬえは録音機を取り出し、夢美とカナは他の社員たちが襲ってこないよう守っていた。


「さて、1つだけ質問に答えればいいわ。

・・・どうしてここはこんなに経営が苦しいのかしら?横領しなければいけない程にね!」


横領、の部分をわざと強調して発言するサリエルは意地悪であった。

それに対し霊夢はゆっくりと答えた。


「月麗カンパニーが・・・私たちと提携を崩そうとしたから・・・。

・・・私が仕方なく・・・お金を渡して提携崩しの取りやめを図って貰った・・・」

「じゃあ月麗カンパニーはその金をどうした?」

「・・・純狐とヘカーティアが独占したんじゃないかしら・・・?

・・・それからよ、2人が連鎖的解雇を始めたのは・・・」


しっかりとぬえは今の発言を録音した。


「・・・提携取り止めがそこまで恐ろしかったのか」

「・・・1番の取引相手が無くなれば、私たちはサミニウム源の警備用ロボットが作れなくなる。

・・・それは痛手なのよ・・・」


尋問を止めたサリエルは次に何をすべきか決めた。


「・・・徹底的に追い詰めよう。次は魔理沙、か」


するとぬえの携帯に着信が入る。相手はリリーであった。


「はい、もしもし・・・」

「衣玖と天子が動いた!」


凄い剣幕で語るリリー。2人が何か動き始めたのだろう。


「わ、分かりました!」


ぬえはすぐに電話を切り、サリエルに伝える。


「2人が着服について動いたようです!」

「ならそっちが先決、か。今から宇佐見銀行へ急ごう!魔理沙はその後だ!」

「はい!」


4人はすぐにそのフロアを後にした。


「ま、魔理沙・・・」


すぐに社員たちに囲まれて処置を受けた霊夢は魔理沙に全てを賭けていた。




この小説はFFを意識しています(今更感)

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