「チョコレートとしての完成度が高い!」
こういう食べ合わせを考えるのも好き。
サペさんのブースから斜め右、少し離れた次のブース。
「あら、いらっしゃいませ」
穏やかな編み込みお姉さんことセレスさんのブースは、落ち着く色合いの緑あふれるデザイン。テーブルに敷かれているのは、深いグリーンの布地に控えめな銀の刺繍が施されたクロス。
「どうぞ、たくさん味わってくださいね」
その手に導かれるようにテーブルを覗けば、見るからに滑らかそうな艶やかなコーティングのスティックタイプのチョコレート。
3列に綺麗に並べられたスティックチョコはまるでラベリングのように、それぞれ端に赤、緑、黄と小さな葉っぱ型のチョコレートが1枚つけられている。
「可愛い…!」
「それでは、ありがたく」
「いただきますね」
ぽきり。
葉っぱごと半分ほどひと口にいただく。途端に口に広がる華やかで深い薔薇の香り。
「これは…」
「んん、美味しいですぅ…!…ベースはヘーゼルナッツ?でも、ハーブっぽい感じも……?あ、わかった!ゼラニウムだ!」
「私のは…柑橘系、でしょうか?とっても美味しいです!」
赤が薔薇、緑がヘーゼルナッツ、黄色が柑橘。
わかるようなわからないようなラインナップですが…。統一感、という意味ではどうなのでしょう。
そんなことを思っていると疑問に答えるようにセレスさんから説明が入る。
「あらあら、赤毛のお嬢さんはとっても舌が敏感なのねえ。そうなの、グリーンの葉っぱはヘーゼルナッツゼラニウムとヘーゼルナッツ。赤は薔薇とルビーチョコレート。黄色がカレンデュラとレモン。それぞれお花と合わせたチョコレートなの」
嬉しそうなセレスさんがそれぞれのチョコレートについて説明して下さるのを聞きながら、残る半分のチョコレートを口に入れ味わう。
チョコレートのなめらかな舌触り、鼻を抜ける香り、全体の調和。
たしかにとても美味しい。それに楽しい。特にお茶請けに華やかで楽しいチョコレートは受けそうだ。
「見た目からも何色にしようかと選ぶ楽しみがありますし、スティックタイプで持ちやすく口に入れる量を調整しやすい…。素晴らしいですね!」
「なるほど。ハートさんからするとそういった視点での評価も必要なのですね」
「ええ。主催者の孫という立場もありますが、私もどちらかというとビジネス視点で考えてしまいますね。ちなみに、セレスさまは森のチョコレート屋さんと呼ばれていたはずです!」
「そんな感じですねえ」
サペさんのブースでも思ったけれど、やはり並み居るショコラティエのトップ。見た目、香り、味わい、どれをとっても突出しすぎてバランスが崩れるといったことがない。
そのうえで、食べられる際の利点すらあるとなれば、まさに考え抜かれた逸品だ。
「わたしは味と見た目です!チョコレートとしての完成度が高い!」
「まあ!嬉しい」
様々な観点を持ち評価するプロの目を持つお嬢さんに、バイトくんが元気よく声をあげる。
結局、こういったシンプルな意見が強くもあるわけで。
3者3様の声に、にこにこのセレスさん。
ぜひ3種類すべて食べて欲しいと勧められるので、ありがたく頂戴する。もちろん、休憩所で食べられるようプレートにも載せておく。
「ちなみに、セレスさんからおすすめの飲み物との合わせ方などはありますか?」
「はい!わたしも聞きたいですっ!」
「そうですねえ」
おっとりと手を頬に当てるセレスさん。
サペさんはスパイスの刺激とチョコレートの濃厚さにミルクを合わせるのがいい、と言っていたけれど。チャイのような感じだろう。
では、セレスさんは?
「私はお茶に詳しいわけではないのですが、自分で試作を繰り返す際にはハーブティーを合わせることが多かったでしょうか」
「!味はもちろん、お花の香りも素敵ですし、ハーブティーはたしかに合いそうですぅ!」
ハーブティーマスターのバイトくんがすかさず同意する。
もちろん、その組み合わせはとても合いそうだ。セレスさんのブースも草木を思わせるグリーンのコーディネートなわけですし。とはいえ、
「わたくしは薔薇のチョコには少し濃い目のキームンなども合いそうだと思います。なんて、王道過ぎるでしょうか」
「では、カレンデュラとレモンならウバですね!王道の合わせ方も、好まれる方は多いですから王道なのですし!」
一般的な合わせ方ではあるけれど、それゆえに好む方も多そうな組み合わせをあげれば、お嬢さんが楽しそうに笑ってフォローの手を入れる。
「うふふ。好きな組み合わせで休憩所でも楽しんでくださいね。もちろん、いつでもまた食べに来て下さい。たくさんご用意していますから」
そう言ってセレスさんは穏やかに笑った。




