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ココロノツバサ-Eternal Odyssey-  作者: Kanra
Sector 1 スーパーGT in 富士スピードウェイ
4/110

第3話 スーパーGTフリー走行

 ピットビルのテラスを歩いていると、前方から2人組が歩いてくる。

「お疲れ。」

 と、言ったのは三条神流。小岩剣より6つ年上で、本拠地群馬で小岩剣の兄貴分。その隣に居るお下げ頭に眼鏡っ子は、三条神流の幼馴染にして腐れ縁で相方。そして、三条神流の女房である松田彩香。

 二人もレーシングドライバーで、三条神流はZD8型BRZ、松田彩香はGR86に乗り、TOYOTA GAZOO Racing GR86/BRZ Cupのクラブマンシリーズに出場している。と言っても、スポット参戦で年間エントリーは出来ない。それでも、今回は富士スピードウェイまでの長距離遠征を行ない、初めての富士スピードウェイでのレースだった。

 結果は三条神流が全30台中15位。松田彩香が14位。

 パドックを見ると、N‐ONEオーナーズカップの参加車両がゾロゾロと出て行くところだった。

 三条神流、松田彩香、小岩剣は群馬を拠点にした大規模なレーシングチーム「赤城ディスタントムーングループ」、通称ADMに所属しており、三条神流と松田彩香は主力ドライバー。小岩剣は軽カー主力ドライバーという立ち位置だ。 

 かつて、軽カー主力ドライバーはもう一人いて、N‐ONEオーナーズカップに出場していたのだが、結果を残せなかった上、ポンコツの寄せ集めのようなチームのメンバーと性交してそれの度が過ぎてスポンサー企業の怒りを買った挙句、上武道路や首都高速で滅茶苦茶やってオービスを複数回、それも制限速度80キロオーバーで光らせて免許取り消しとなって、ADMを叩き出された。

 夢も無く、何となくで生きながら群馬に流れ着いた小岩剣は彼女を追って、レーシングドライバーへなるべくADMに入りつつ、坂口拓洋からの指導を受け、群馬サイクルスポーツセンターでラリードライバーと同格、赤城サンダーボルトラインでADMの主力ドライバーのロータス・エミーラに勝つと言う戦績を残したのだが、レーシングドライバーとしては不完全な形で目標を失い暴走。

 見るに見かねた三条神流が富士スピードウェイの遠征に随伴させたのだが、暴走する小岩剣を見た坂口拓洋が、未だレースに出ていないにも関わず、小岩剣が「レースに出ても無駄だ」と暴言を吐いたため、「寝言は寝て言え!」と強引にS660ワンメークレースに出場させた。結果は小岩剣のS660の性能から考えると良い物ではあったが、全体の結果で見ればあまり良いものでは無かった。

 昼食後、ADMのメンバーの半数はもうやる事が無くなったが、小岩剣はまだ用事があり、富士スピードウェイに留まる。

 坂口拓洋の出場するスーパーGTのフリー走行が始まるからだ。

 坂口拓洋は相方の坂口愛衣と共に、スーパーGT300クラスに出場しているが、来シーズンは代理のスポット参戦ながら、スーパーGT500クラスに出場することになっている。

 埼玉県秩父市を拠点に活動するレーシングチーム「ホワイトレーシングプロジェクト」は、小岩剣が訓練を受けたチームで、坂口拓洋と坂口愛衣の所属するレーシングチームだ。

 そして、スーパーGT300クラスには坂口拓洋・坂口愛衣の二人のコンビで出場している。

 小岩剣はホワイトレーシングプロジェクトのスーパーGTフリー走行を見学するのだ。

 フリー走行が始まると、ピットロードからスーパーGTマシンが、一気にコースインする。

 最初の15分までで新品タイヤの奴はアタックをかけ、その後、何度も調整しながら予選シミュレーションをし、場合によってはレースのシミュレーションをする。

 拓洋もその流れだ。

 拓洋と愛衣は、フリー走行の段階から既にレースモード。この二人は、フリー走行しながら、互いのタイムを競い合って、競い合いながらマシンのセッティングの方向性を確認しつつ、レース本番へ向けて気持ちを高めていくのだ。

 HRC所属の佐藤蓮がアタックを開始したのを皮切りに、山本尚貴も続く。

「10周。ピットインタイミング任せる。」

「了解。」

 愛衣と拓洋、この周から10周の間、模擬レースを始める。

 ちなみに、このフリー走行の間は、ピエール北川氏による実況も行われている。なので、愛衣と拓洋が模擬レースを開始したと見ると、そちらの実況も適宜行う。

 TGRのブレーキング勝負。

 コカコーラコーナーのライン取り合戦。

 100Rからアドバンヘアピンのブレーキング勝負。

 300Rの加速勝負。

 ダンロップコーナー。

(アンダー気味だな。)

 と思う。

 5周目、ピットに入る。

 ドライバー交代とタイヤ交換。

 だが、タイヤ交換でトラブル発生。タイヤを止めるナットが工具から外れて転がった。

 3秒のロス。

 これは痛い。

 結局、残りの周回数でその遅れを取り戻せず、模擬レース終了。

 交代した坂口愛衣が、すぐさまピットイン。

「ドンマイ」と、ミスをしたメカニックを励ますと、マシンセッティングに入るため、一旦ガレージにマシンを入れる。

「おっと?ここホワイトレーシングプロジェクトが一旦ガレージにマシンを入れます。何かセッティング変更でしょうか?」

 と、ピエール北川の実況。

「今、ホワイトレーシングプロジェクトNSX GT3にとって宿命のライバルは、TOYOTA GR86。その86はコーナリングスピードが自分よりも早い。それと見るや、それに対抗するためのセッティングをするのは、今しかありませんからね。セッティング変更して、再度アタックをかけるでしょう。」

 解説の言う通りだ。

 セッティングを終えると、坂口拓洋が乗り込んで、またガレージを出てコースイン。

 鬼気迫る拓洋の姿。

 小岩剣には、恐ろしくも見え、また美しくも見える。

 拓洋は、フリー走行時間ギリギリまでアタックをしては、ピットイン練習。更にはセッティング。と繰り返す。

 そして、最後のアタックでようやく「よし」と言った。


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