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私達、『パーティ鷺宮』です。  作者: ai-emu
第8章 再開の宴
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第63話 闘技大会の余興①

鷺宮魔法学園の年間行事の中で、最も大きな行事になる『学生闘技大会』が始まった。場所は、カランの北側に広がる騎士団演習場の一角。剣技た体術の他、学園の名前が示すように、魔法が飛び交うため、町中では危ないからだ。参加資格は、学園の高等部に通う総勢200名。各学年一人ずつのパーティ、計50組による団体戦で行われ、上位4パーティには、豪華な賞品が出るとあって、告知が出された直後から、各パーティごとの練習には、力が入っていたらしい。ちなみにパーティの編成は、公平性を期すために、くじ引きで決められる。

学生が並んでいる前で、ヒカリが、大会の挨拶をし、3日間にわたる大会がスタートした。数々の名勝負が繰り広げられた大会も最終日。学生間の勝負も終了した午後、大会の余興とばかりに、日ごろあまり目にしたことのない教師陣と、ギルドランク上位者による模擬戦が行われることになった。実はこちらの方が盛り上がっているかもしれない。なんせ、6人の神子とギルドランクの上位者が、拳を交えるのだから。

「そういえば、俺たちがまともに戦う事って、訓練以外じゃ初めてじゃないか?」

タケシが呟くと、それに追随するように皆が頷いた。

「ヒカリが、闘技場の周りに張った結界のおかげで、本気で暴れても大丈夫だからな。今日は、日ごろのストレスを発散させるために、本気で殴り合うぞ。」

「しかしなぜ、俺たちの試合だけは、木刀なんだ?」

「そりゃあ、俺たちが実験でやりあえば、”試合”じゃなく、”死合”になるからだろ。まあ、魔法は使えるんだ。やり方次第で、面白い試合が出るだろ。」

そんな他愛もない会話を断ち切るかのように、ヒカリが呟く。

「まあ、積もる話もあるけど、生徒たちが楽しみにこっちを見ているから、そろそろ始めようか。ところで、どうやる?生徒みたいにトーナメント方式にする?それとも、1試合だけの単戦方式でやる?」

「ところで、ヒカリちゃんたちはどうするんだ?神子の力を全開放してやるんか?それだと、すぐに決着がついて面白くないんだが。」

「それもそうね、私の力は、3割程度に抑えましょう。あとは、各々の実力に合わせて、力加減を変えましょう。タケシもサトミさんも、それでいいでしょ。」

「ああ、ヒカリがそのくらいの力加減で戦ってくれるなら、面白い試合が出来そうだ。俺は構わない。そうだな、…俺も3割で行くか。サトミさんやリョウコたちはそれでいいか?」

ヒカリに続いて、神子の力の強いタケシが答える。

「私は普段あまり戦う事がないから、力の制御がうまくできないかもしれないけど、…5割くらいでやってみるわ。」

普段は食堂の厨房で、料理を作っているだけのサトミ。神子の力を使用しているのは、カランの屋敷とバーガル郊外にある別荘の水槽を繋げているだけなので、力の制御には自信がない。それに戦闘をあまりしていないため、少し多めに5割と答えた。

「俺とマナミ、リョウコは、ストレス発散でよく降魔の森に行っているから、3割でいい。」

ケンジが代表して答えた。普段タケシと、ギルドの依頼でパーティを組むことが多い炎帝の鉾のリーダーケイトが、そう言えばと言う感じでノリコに話しかける。

「あとは、ノリコさんだっけか、精霊魔法の使い手は。」

「私に何か御用ですか?」

ノリコがキョトンつぃた感じで答える。

「ノリコさんも、出来るなら力を抑えてほしいのだが。」

「そうですね…。私の力もヒカリさんたち同様、人外の域にいますし…。解りました。まだまだ力の制御は完璧ではないですが、3割くらいの力で戦います。」

「ありがとう。決め事も住んだことだし、いつまでも待たせても仕方ないから、さっそく始めようか。初戦は俺が出る。相手はこちらから指名させてもらおう。そうだな。ノリコさん、お願いできるか。」

「いいわよ、ケイトさん。」


ケイトとノリコが前に出て、他のメンバーは、観客席の壁際まで下がった。暫くのにらみ合いが続いたあと、試合は唐突に始まった。

初めに仕掛けたのは、ケイト。木刀に水属性の魔法をかけて切れ味を増したものにして、風の移動魔法を使い、高速移動でノリコに先制攻撃を仕掛ける。

火の大精霊サラマンダー

ノリコが右手を弧を描くように振ると、5メートルほど離れた場所に、炎の壁がそそり立った。ケイトは、急制動をかけながら水で強化した剣を、上段から振り下ろす。風と水が合わさった斬撃が、炎の壁に激突し水蒸気を立ち昇らせた。霧が晴れた後、そこに見えていたのは、木刀を合わせてつばぜり合いをしている2人。女性であり、戦闘経験の乏しいノリコが、ケイトと渡り合っている姿だ。

直後ケイトが、大きくジャンプをしながら後退していく。ケイトの着地した地面には、地面からせり上がる杭が乱立していく。後退しながらも新たな魔法を用意するケイト。

「踊り狂うは水龍の戦舞!」

ケイトの詠唱によって、地面から水の竜巻がそそり立つと、龍の形を成してノリコのを襲う。ノリコは、水龍に即座に対応する。

風の大精霊シルフィードよ、風塊を成して水龍を封じよ!」

ノリコが言霊を紡ぐと、水龍の直上に風の塊が出来水龍を押し潰した。ノリコはさらに、言霊を紡いでいく。そうして現れた風と水の刃を、ケイトの全方位に展開させた。

「参った!」

ケイトの降参宣言を聴くと、ノリコは魔法を解除した。何も話し合っていないのに、暗黙の了解とばかりに、降参宣言をすれば自動的に試合が終了する。

戦闘を開始して僅か10分程度。しかし内容は、無詠唱の魔法での打ち合いに始まり、水源など存在しないのに、水属性の魔法が飛び交った。目の前で行われた戦闘に開いた口が塞がらない生徒たち。自分たちが行った試合よりも、高度な戦闘を見ることが出来、しばらくしてから大きな拍手が起こった。

「これで3割しか出していないのか!かりにも俺はAランクだぞ。俺の最大の魔法を意図も容易く防ぐなんて、精霊魔法は、どれだけ規格外なんだ?

まあ、最後のあれを、いきなり出されなくてよかったよ。あれはさすがに命が縮んだ。」

軽口を叩きながら、ノリコと握手するケイト。ノリコもそれに答えて軽口を叩く。

「最後のあれは、思い付きでやったんですけど、まさか出来るとは思いませんでした。…でもヒカリちゃんやタケシ君なら、あれも簡単に防げるでしょうね。」

「まあ、確かに。あいつらは、人外を通り越して、化け物だからな。

しかし、俺たちの試合でこれだけ驚いていると、ヒカリちゃんとタケシの試合は、どんな反応を示すんだろうな。今から楽しみだ。」

2人は、談笑しながら壁際まで歩いていった。


続いてフィールドに出てきたのはタケル、指名したのはタケシ。

「タケシ、相手をしてほしいのだが。」

「いいですよ。」

そうして始まる試合。双方ともに、剣士タイプの前衛職なのだが、魔法についてもかなりの腕があるため、剣技と魔法が合わさった見ごたえのある試合展開を見せている。

タケルのいた地面が、いきなり消失し闇に染まる。後ろに飛んで落下するのを交わしと、予め予想がついていたのか、鋭い棘の生えた土壁が周囲を固めた。その壁を利用してタケシに向けタケルが飛べば、気流を乱されて地面に落下する。落下する先には、新たに闇の落とし穴が待ち構えているのだから、空中で落下の位置を変えなくてはいけない。無限に増えていく落とし穴を躱しながら、タケシに突進していくタケル。待ち構えていたタケシが、斬撃を見舞っていく。

斬撃の応酬をしている最中に、タケルが詠唱により、茜色に染まった上空から炎の雷が落ちてくる。地に落ちた雷は、そのままタケシに向かって地を走っていく。

闇の神子であるタケシは、闇魔法と地属性の魔法を得意としている。闇と地はとても相性がいいのだ。さらにそこに、風属性の魔法まで組み込んでくるのだから、対峙している者にとっては、とても厄介な存在なのだ。片やタケルは、基本は風属性の魔法を使うが、火属性と水属性の魔法にも精通しており、風属性の魔法の中に火と水の要素を混ぜ込んでくるため、自然界ではありえない現象すらも現象すらも起こすことが出来る。

試合は、攻守が激しく交代しながら20分ほど続いた。

「闇よ。我に従い空間を越えよ。」

最後は、タケシの放った闇魔法で勝負がついた。タケシが言霊と紡ぐと、タケルが振り下ろした剣先が途中で闇に消え、タケル自身の首筋に現れたのだ。これには、さすがにタケルも冷や汗を流していた。

「闇魔法には必ず存在するこの魔法、こんな使い方もあるんだぞ。タケル、降参する?」

タケシは、左手を前に翳しながら、タケルに聞いた。

「この使い方は斬新だな。自分の剣にやられるなど、誰が考えるものか。俺の負けだ。」

タケルの降参宣言で、試合が終わる。歩きながらタケルが聞いた。

「そういえば、途中からスピードが上がったんだが、どうしてだ?」

「あまりにタケルが強いから、途中から6割まで力を上げたんだよ。それでもついてくるんだから、こちとしても冷や汗だらだらの展開だった。最後は、瞬間的に全開まで出したな。最後に使ったあれ、空間を支配しないといけないんだ。まだ俺では、空間を支配するには、全開まで力を出さないと支配する事が出来ないからな。」

「空間を支配するか。お前は出来ないと言ったが、余裕でやってのける奴なんか要るのか?」

「俺の知っている限りでは2人いる。1人目はキャロルだ。」

「確か、テラフォーリアの創造神『金色の女王(クインメシア)』が人型になっている時の名前だったな。キャロルなら、この星そのものだから、これくらいは朝飯前だろう。もう一人は、…まさかヒカリか?」

「その通り。ヒカリは人間であるにも拘らず、空間支配程度なら余裕でやってしまう。あの程度なら無詠唱でやってのけるだろう。知ってるか?ヒカリが己の影に造っている『闇の倉庫ダークスペース』の数。」

「いや、知らないな。あの魔法については、俺も欲しいのだが、闇の属性が使えないと無理だと言われて諦めた。ノリコが精霊魔法で、同じ働きをする魔法を作り出せたから、俺たちのパーティとしては必要ないが。」

タケルは冷や汗と垂らしながら、タケシに聞いた。

「ミライの躰を入れるためだけに1つ、武器や生活用品を入れるために1つ、狩った魔物を入れておくために1つ、食料品を入れるための1つで合計4つだ。闇の神子である俺ですら、3つが限界なんだぞ。」

3つも闇の倉庫ダークスペースを作ることが出来るタケシも人外だが、ヒカリはさらに上を行っているみたいだ。そういえば、ノリコの訓練で、ミライを長時間具現化させて戦わせていた時も、息ひとつ乱していなかったのを思い出すタケル。ヒカリの人外っぷりを確認しながら、壁際まで歩いていった。


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