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私達、『パーティ鷺宮』です。  作者: ai-emu
第7章 ヒカリとアースドラゴン
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第56話 ギルド長の憂鬱

ギルド内の特別室で、ギルド長の接待を受けたヒカリ。

「あのギルド長、今日はただ先日買ってきた魔物の素材を売りに来ただけなので、他の冒険者と同じ対応でいいのですが。ほら、私も一応、Aランクの冒険者ですし。」

ヒカリのせめてもの意趣返しに、ギルド長は、笑顔で返した。

「前回もそんな事を仰っていましたが。ヒカリさん、前回あなたが、ここに持ってきた素材の量を覚えていますか?」

その問いにヒカリは、前回の事を思い出してみる。たしか、前回ストレス発散の目的で、魔物を狩りに、降魔の森に出かけたのが、4月の頭だったはず。その時は、何を倒したのだったかな?何をどれだけ倒して、ここに持ち込んだのか全く覚えていない。

「確か、4月の頭あたりだったことは覚えているのですが、その時、何をどれだけ持ち込んだのかは、記憶にないですね。今の私は、しなくてはいけない事が山ほどあるので、どうでもいいことは、気に留めない事にしているのです。どうも、この件に関しては、どうでもいい事に分類されているみたいですね。」

コテンとかわいらしく首を傾げて答えたヒカリに、ギルド長は、あんなにたくさん持ち込んだのに、どうでもいいのかと、苦笑いを浮かべて、1枚の紙切れを見ながらヒカリに説明していく。

「この紙に纏めてありますが、あの時は、…。以上、全50種類1500匹を持ち込まれました。ちなみに、その際お支払した討伐料金は、金貨5000枚です。ちなみに、今回は、どれだけお持ちになりましたか?」

「今回ですか?正確には数えていませんし、何より、森の中にいたのは、1日だけでしたので、あまり多くはないですよ。まあ、森に入ってすぐにテラテクスの群れに出くわしまして。その群れを殲滅したのが、一番多い魔物ですね。その後、いろいろな魔物の群れに出会うたびに殲滅していたので、正確な数は解りません。

前回は、たしか後で商会が依頼した分を買い取ったので、今回は、担当者のサリュースを連れてきますた。なので、商会が依頼している分については、継続依頼以外は取り下げていただきます。」

ヒカリの言葉に、その場にいた全員が戦慄を覚えた。テラテクスと言えば、Aランクの魔物だ。その群れを殲滅してきただと!さらにその他にもいろいろ殲滅してきているらしい。これは、今回も気を引き締めておかないと、えらい事になると、ギルド長は思った。

「ヒカリさん、どうも、私の考えていた量よりも多いみたいですので、町の北側に広がる騎士団演習地で、鑑定をさせてもらってもよろしいですか?多分、ここの裏庭では、足りなくなりそうですので。」

「分かりました。早速向かいましょう。」

ヒカリは、席を立つとそのままドアに向かおうとして、ふと思い立ち振り向いた。

「ここから演習地までは少し距離があるので、転移でそこまでお送りしましょうか?」

「それは助かります。では、関係者に連絡してきますので、少しお待ちください。」

ギルド長は、秘書の女の子に、関係者(魔物の素材を依頼してきた商会関係者や医療関係者など)を演習場に集めさせる指示を出し、自身は、鑑定士を全員招集するために部屋を出た。ヒカリは、掲示板まで歩いていき、鷺宮商会名義で出されている依頼の紙をすべて剥ぎ取り、再び部屋に戻った。

ギルド長が、鑑定士を連れて部屋に戻ってくると、全員を纏めて演習場まで転移した。

「サリュースも含めて、全員覚悟は出来ていますか?」

ヒカリがその場にいた全員に覚悟を聴いた。何の覚悟化は、この場にいる全員が、言わなくても解っている。全員が頷くのを見届けると、ヒカリは、闇の倉庫ダークスペースから魔物と取り出していった。

「本日の目玉商品は、一番最後に出すとして、まずは、テラテクスから行きましょうか。」

そういうと、ヒカリから10メートルほど離れた場所に、テラテクスの死体100匹が、地面から1メートルほどの高さに現れ地面に落とされた。着地した瞬間には、大きく地面が揺れる。テラテクスの素材を依頼してきた関係者が、鑑定をしていく。サリュースは、依頼書をめくって、2匹分を商会用として確保した。その場で必要量だけ確保していく関係者たち。それでも50匹ほど残ったため、今後にすぐ供出できるようにするため、ギルドが纏めて引き取った。

「次は、テラテクスを殲滅している最中に、襲ってきた群れです。もちろんすべて殲滅しておきました。」

そういって、ヒカリは、テラテクスの横に、狼のような魔物が姿を現した。数にして100匹ほど。これまたすごい数だ。鑑定士たちが、狼のような魔物を見聞していく。

「これは、ラリアークに似ていますが、種族が違いますな。ラリアークの突然変異でもないし…。ヒカリ殿、『魔物大全』をお貸し願いたいのだが、よろしいですか?」

「はい、構いませんよ。『魔物大全』ですね。少しお待ちください。」

そういって、何処からともなく、分厚い本を一冊取り出して、鑑定士の一人に手渡した。なぜヒカリが、『魔物大全』なる本を所有しているのかをギルドの鑑定士が知っているのかと言うと、2年ほど前まで遡る。

当時、まだCランクだったヒカリが、たまたま、ギルドで行われた鑑定会を見学していた時、鑑定士でも解らない魔物がいた。当時すでに『光の神子』になっていたヒカリが、図書館から『魔物大全』を取り出して、鑑定士に貸し出したことがきっかけになる。

その後、暇を見つけては、鑑定士たちが、ヒカリの元を訪れて、『魔物大全』の写本を作っていった。それが4か月前、すべて書き写すことが出来、今ではその写本を元に、本が出版されている。あまりのも分厚いため、ランクごとに分けられた写本は、ギルドにはなくてはならない本となってしまった。しかし、注文量に対して印刷が間に合ってなく、納品に数ヶ月待たなくてはいけないほどヒットしている。

この本を唯一取り扱っているのが、原本の所有者であるヒカリが経営する鷺宮商会であり、これは、本を出版するに当たり、ギルドと取り交わした契約に基づいている。代金は、7巻セットで金貨7枚、取り分として、写本を手伝った鑑定士たちに、総額で金貨2枚を渡し、あとは、商会の取り分となっている。製本作業は、毎日行われているが、印刷技術があまり発達していない世界である。基本手作業のため、1日に1セットできるかどうかだ。なんせ1冊当たり、1000ページを超えているのだから。

最初の1セットは、写本を請け負ってくれたカランのギルドに提供した。2セット目は、鷺宮魔法学園の図書館に置かれている。3セット目からは、注文販売の形をとり、現在に至る。

原本である『魔物大全』を捲りながら、件の魔物を調べる鑑定士たち。程なくして、該当する魔物が見つかった。魔物の名前は、トランシクス。Aランクの魔物であり、ラリアーク同様に、血肉の部分すべてが薬の材料になり、骨や牙などは、武器、武具の素材になる。もちろん、作られた薬は、ラリアークを材料に造られた薬よりも上位の物になり、効き目は最上級モノだ。

ヒカリは、サリュースと相談のうえ、半分の50匹を確保し、残りをギルドに売った。後ほど競りにかけられて、市場に流通していく事になる。

次々と演習場に積み上がっていく魔物たち。そして、今回のストレス発散のために討伐した魔物をすべて出し終えたヒカリは、最後のとっておきを披露することにした。

「次が最後の魔物、いや、魔獣になります。とりあえずお見せするために出しますが、これを売り渡すつもりはありません。なぜなら、次の魔獣は、これが最後の成体だからです。既にこの世には、同種の生命体は存在していません。たまたま私が、最後の一体と契約して、契約時に、その体を譲ってもらいました。」

そういってから、ヒカリは、皆の前にアースドラゴンの躰を見せた。

「これが、テラフォーリアの大地にて、最後の個体であるアースドラゴンです。詳しい話は省きますが、ドラゴン種の生態についても、教えてもらいました。」

ヒカリたちの目の前に出現した全長50メートルの金色の鱗で覆われたドラゴン。背中には、2対4枚の大きな白い翅が生え、真紅の瞳が、ヒカリたちを見下ろしている。

「この躰の所有権は、すべて私が持っています。ここから取り出される素材は、すべて私が管理し、素材の一部を売る際には、それ相応の試練を受けてもらう予定です。」

呆然と立ち尽くしていた関係者の中から、ギルド長がヒカリに確認をした。

「ヒカリさん、少し触らしてもらってもよろしいですか。」

「少しくらいなら触っても構いませんよ。ただし、鱗などは、勝手に剥がさないでください。」

「それは分っている。この機会を逃せば、2度と触るどころか、拝むことも出来なくなるからな。」

ギルド長が恐る恐る金色の鱗に手を触れた。それを皮切りに、その場にいた関係者全員が、一斉にアースドラゴンの躰に触り始まる。

「これ一体で、どれくらいの値が付くのか、想像したくないな。」

誰かかそんな事を呟くと、それに答えるように誰から呟いた。

「鱗1枚で、金貨数百枚、いや、これが最後の個体なのだから、金貨数千枚は値が付くだろう。一体丸々となると、国家予算数十年分の値が付くと思うぞ。」

「ヒカリさん、鱗一枚だけでいいから、ギルドに売ってくれんか?」

「何に使うんですか?」

「月に一度開かれる、ギルド主催の競り市で、メインとして扱おうを思う。」

「別に売るのは構いませんけど、こちらとしても、ただ競りにかけるだけでは、面白くありません。」

「確かにそうだが、ヒカリさんは、どうするつもりなのかね?」

「確か次の競り市は、明日開催ですよね。競りの最後に、鱗を見せます。

競りは、普通に行いますが、そこでは落札はしません。競り値が高い順に、五人まで選び、次の競り市までに、使用方法を提出していただきます。その中で、有効的かつ、実用性に優れた使用方法を提示した者に競り落としてもらいます。

もちろん、個人団体問わず、観賞目的で競り落とすことは、私が許しません。もちろん転売することも許しません。提出したとおりに利用してもらいますので、定期的に報告していただく義務を生じさせます。

こんな条件でもいいならば、ギルドにお売りしますが。」

「それは構わない。所有者がそう決めたのなら、ギルドとしては、それに沿うように競りを行うまでだ。」

「分かりました、契約成立です。お好きな場所の鱗をお取りください。」

暫く、アースドラゴンの鑑賞会が開かれた後、ヒカリは、アースドラゴンの躰を、闇の倉庫ダークスペースにしまった。

翌日、カランの冒険者ギルドで開かれた競り市は、最後に登場したアースドラゴンの鱗が、競り値で最高額を更新した。所有者の意向で、観賞目的での購入が禁止されたのにも拘らずである。最低額でも金貨6000枚を提示してきたのだから。

ちなみにヒカリが、ギルドや関係者に売り払った魔物の総数は、25種類297匹。1人で1日で狩ってきた魔物の数としては、あり得ない数だった。そのうち鷺宮商会が引き取った数は、10種類120匹だった。ヒカリが手にしたすべての魔物の売値は、金貨10万枚だった。

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