第19話 ギルドでお仕事しよう①
謙治と玲子が試練を受けているころ、先に通過した3人は、カランの冒険者ギルドで、他のメンバーとともに、3グループに分かれてギルドの仕事を請け負っていた。とりあえず暫くは、ギルドの仕事を積極的に請け負って、住処にしている建物を買い取ろうと決めたためだ。
テラフォーリアの冒険者ギルドは、世界中に支店を持つ世界最大の組織だ。大きな町には支店があり、その発言力は、国王ですら凌ぐ事がある。しかし、有事以外は、行政に干渉しておらず、そのため、国王などとは、良好な関係を築いていた。
ギルドのランクは、そのまま冒険者の強さだけではなく、人格すらも現しており、ランクが上の者には、荒れくれ者などいなかった(人間やめている者はいたが…)。
ギルドのランクは、Fランクから始まり、Sランクが一番上になる。また、討伐対象である魔物も、強さに応じてランク付けされており、自分のランクにあった依頼を受けるシステムになっていた。
ヒカリたち『パーティー鷺宮』のメンバーは、魔法の修行を終えた日に、ランクアップの試験を受けた。
これは、Fランク冒険者のみが1度だけ受けれるもので、早い話が、順番にランクを上げていくのを実力に応じたランクまで上がれるシステムだ。実力があるものは、さっさと上のランクに行ってもらうために、ギルド側が用意したものだ。
この試験により、『パーティー鷺宮』のメンバー全員が、見事ランクアップをすることが出来た。総合的に一番劣っている校長先生ですらDランクに上がれた。光莉たち神子メンバー6人は、Aランクに、他のメンバーもすべてBランクに上がることが出来た。
光莉を隊長とするグループは、街道沿いに出る魔物や盗賊の討伐依頼を請け負っていた。
魔物はともかく、盗賊の討伐は、流通の障害になるだけではなく、治安にも大きく関わってくるため、常に依頼があるもので、報酬の金額もそれなりにいいものだった。
盗賊の討伐依頼とセットになっている商隊の護衛をしながら、カランから北に50キロほど行ったところににあるセイルンまで街道を歩いていく。カランを発ってしばらく行くと、案の定盗賊のお出ましである。20人ほどのちょっとした集団で現れた盗賊は、商隊を囲むように周りを包囲して、決まったセリフを吐いていた。
「光莉ちゃん、この人たちどうやって倒そう?」
「そうね、私は、商隊を守ることに徹するから、あなたたちで対処してみなさい。ちょうどいい実践の訓練になるでしょう。」
「分かったわ。なるべくなら、あなたたちでどうにかしてみなさい。危険になったら手を貸してあげるわ。あっ!一人残しておきなさい。『光の防御陣!』」
光莉は、発動キー(カオスワード)だけを唱える。すると、薄く光る膜が、商隊の周りに張り巡らされた。事前の打ち合わせ通りに、商隊は、光莉を中心とした円陣形に集まっている。その周りを囲むように、メンバーが配置につき、盗賊団の殲滅にかかった。
戦闘は、メンバーの魔法攻撃により、数十分で終了する。最後に生かされた一人が、踵を返した逃走を図った。光莉は、慌てずに対処をした。
「多佳子、私、あいつとちょっと鬼ごっこをしてくるから、あなたたちはこのまま、商隊を護衛してセイルンまで行きなさい。セイルンで合流しましょう。」
光莉は言付けをメンバーの一人の多佳子にすると、踵を返して盗賊を追っていった。
「あのう、あなたたちの隊長さんは、何処に行ったのでしょうか?」
商隊のリーダーが、言付けを受けた人に尋ねた。
「さっき襲ってきた盗賊さんは、数が多かったでしょ。光莉ちゃんは、逃げていった盗賊さんの後を追って、アジトでも潰しに行ったんでしょう。それよりも、光莉ちゃんがいなくなった事で、『光の防御陣』も解除されたようですし、早くセイルンまで行きましょう。
光莉ちゃんのことなら大丈夫です。きっと無傷でセイルンに来ると思います。お土産をたくさん持って。」
そういうと、多佳子は、商隊を引き連れてセイルンまで歩き出した。
光莉は、逃走した盗賊を追って、原野を駆け抜けていた。いや、原野を走っていたのは盗賊で、光莉は、『姿隠し』を使い、低空を飛行していたのだが…。
盗賊が、城の中に入っていく。光莉は、少し高度を上げて城を上から観察した。城内には、数十人規模の大盗賊団がおり、いつの間にこんなに膨れ上がったんだと感心するくらいの規模だった。光莉は、城の上空で、『姿隠し』を解くと、風魔法の『音声拡大』を発動する。
「おバカな盗賊さんに告げる。無意味な抵抗はやめて、今すぐお縄につきなさい。」
光莉は、盗賊を小馬鹿にしたような忠告を述べると、騒めいている中庭に降り立った。すぐさま光莉の周りに、盗賊が武器を突きつてて威嚇してくる。光莉は、そんなことは意に介さずといった態度で、次のセリフを述べた。
「この中に盗賊さんたちのリーダーはいますかぁ?」
「はっ!そんなこと誰が答えるか!てめえ一人だけとは、ずいぶんと舐められたものだな。今夜のおかずにしちまおう。」
「はあ~。どこでもゴロツキの考えることは同じなんですねぇ。早く答えないとこうですよ。」
光莉は、半ば呆れたように言うと、右手を適当な塔に定めて魔法を撃った。
「空気圧縮弾!」
光莉が、発動キー(カオスワード)を唱えると、掌の前に高密度に圧縮された無色透明の球体が現れる。球体は、光莉の『行け!』という言葉で、ターゲットのされた塔に、高速で撃ち出された。塔に当たった瞬間、大爆発とともに、塔が中ほどあたりから崩落する。中にいるだろう盗賊もろとも。
「次は何処に撃ちましょうか?リーダーは何処にいます?早く出てこないと、このお城が更地になっちゃいますよ。」
そう言いながら、光莉は、適当な塔に狙いを定めて、空気圧縮弾を撃ちだした。あっけなく崩壊していく塔。もちろん盗賊たちも、光莉に襲いかかっているが、鉄壁の防御の前に、掠り傷一つ行ける事も出来ずに屍の山が築かれていく。城の半分が更地に変わった頃に、やっとリーダーらしき者が現れた。
「貴方が、リーダーですかぁ?待ちくたびれました。おかげで、しなくてもいい運動をしてしまいましたよ。」
光莉は、盗賊たちを小馬鹿にしながら挑発していく。
「ふん!何をほざくか小娘が、汗ひとつ掻いていないくせに、何が運動だ?
地の精霊よ、彼の物を縛る戒めを作れ『大地の戒め』」
リーダーは、光莉に魔法をぶつけた。すると、土の鎖が光莉の両足に絡みついて動きを封じた。
「属性持ちだったんですか。リーダーさんは。まさかこの城も、その自慢の魔法で何かしてましたか?」
「ああ、ここは騎士団が詰める小さな砦だったんだが、そいつらから奪って俺の魔法で、ここまで大きくしていったんだ。ところで小娘、動きを封じられたのに、なぜそんなに平然としていられるんだ?」
「ああ、別に動けなくても、あなたたちを殺す方法なんて、いくらでもありますから。例えば、こんな風に。」
光莉の指がパチンとなると、リーダーの後ろに控えていた盗賊数人が、足元から立ち上る炎によって、瞬時に灰になった。
「私と止めるのなら、指の先まで拘束しないといけませんよ。口を塞いだとしても、無詠唱で魔法も撃つ事が出来るので無意味です。ちなみに、その騎士団の皆さんは、何処にいますか?」
光莉は、もうこの世にはいないだろうけれど、一応聞いてみた。
「あいつらか。あいつらなら、この城の人柱として、何処かに埋まっているはずだぞ。」
「ふうん、まあいいや。ちなみにここにいるので盗賊さんたちは、全員揃っているの?」
「まだ城内にもたくさんいるぞ。そんなこと聞いてどうするんだ?」
「まだ城内のもいるのかぁ。面倒だなぁ。まあ、いいや。城ごと潰れてもらいましょう。どうせ捕まっても縛り首が待っているだけだからね。あっ!今外にいる盗賊さんは、全員生きたまま町まで連行するので、そこんとこヨロシク!
ちなみに、リーダーさんには悪いけど、この『大地の戒め(アースロック)』、私には効かないから。」
そう言うと、光莉は、埃を払うかのように右手で足元を撫でる。すると、土の鎖が、砂になって風に流されていった。そして一言、発動キーを唱えた。
「範囲更地化!」
すると、城が、瞬く間に更地にへと姿を変えていった。あたり一面、真っ平らな更地と化した元盗賊団の城跡に、リーダーを含めて10人ほどの盗賊が、その光景を呆然を見つめていた。
「じゃあ、あなた方を拘束します。『風の戒め(ウインドロック)』!」
光莉が、発動キーを唱えた瞬間、呆然とあたりを眺めていた盗賊たちに風による枷が生まれる。その枷は、口、胴体、足首に絡みつき、身動きができない状態にした。
風の力によって、拘束された盗賊は、空中を漂い、空を高速で飛行していく光莉の後ろを追従していく。セイルンの手前で降り立った光莉は、そのまま街道をトコトコ歩いて、町に入っていった。町の門で多佳子と合流してから、セイルンの騎士団に盗賊を引き渡す。その時に、盗賊の城について説明していく。今そこは、ただの更地になっていることも併せて説明した。盗賊たちは、無抵抗で空を高速飛行したせいで、全員気を失っていたが、光莉は、そんなことお構いなしだった。光莉は、盗賊の引き継ぎを終えると、多佳子の待つ宿屋に消えていった。
もちろん、無傷で現れた光莉を、驚愕した商隊に迎えられて…。
話の矛盾点を修正しつつ、加筆しています。




