第18話 神との契約⑤『風の神子』と『地の神子』
玲子は、王都ロンドリアを出て西に向かって海岸沿いの街道を歩いていた。このまま10日ほど歩けば、フワンソワ州州都、テアスリアに入る。玲子は、一旦テアストリアで、登山の装備を買い揃える。緑色の光は、ちょうど、テアストリアの北にあるテール山の頂上を指していたからだ。
玲子は、(ああ、登山かあ…)とため息をつきながらも、テール山を登り始めた。早朝から登り始めて、太陽が中天にさしかかる頃、リョウコは山頂に到着した。さて、風の神である天龍は、どんな試練を用意しているのやら。玲子は、とりあえず、山頂を一周してみた。テール山は、山頂に大きな火口があるいわゆる富士山型の活火山だ。地元の話によると、ここ300年ほど噴火していないようだが…。山頂を一周しても、神殿らしき建物は発見できない。ふと火口を覗くと、火口の中央付近にぼんやりと、石で造られた神殿が見えていた。
「あれか…。」
玲子は、神殿を確認すると、ゆっくりと火口に降りていった。神殿に入ると、ふわっと浮かんだ感覚がした。下を見ると、足元には、先ほどまでいたテール山が見える。今玲子は、空中を浮かんでいるみたいだ。しかし、足元には、床らしきものがあり、その上に玲子は立っている。推察するに、ここは、空中に浮かんでいる神殿ということだ。さすが風の神だけはある。
いろいろと推察していると、何処からともなく声が聞こえた。
『我は、天龍。天空とそこを流れる風を支配する者。
風の試練を受けし汝の名は。』
「私の名は、葛谷玲子です。
風の神、天龍。試練を受けに来ました。」
『…これより風の試練を行う。』
試練の開始とともに、玲子の周りに数個の竜巻が生まれて、玲子を通過していく。これはいったい何なのだと思った瞬間、玲子は、記憶のすべてがなくなっていた。そして、玲子の周りには、無数の宝箱が現れる。
『汝の周りの宝箱から、玲子、そなたの『記憶』を集めろ。『記憶』の入った箱は、全部で12個ある。その箱には、そなたの魔力が流れている。』
リョウコは、自分自身の魔力の気配を頼りに、『記憶』を集めていった。数時間後、すべての記憶を集め終わると、宝箱は風によって空中に霧散していった。その後、玲子の前に、緑色の髪をした少女が現れる。玲子の右手の薬指に、2匹の龍が浮彫にレリーフされた金色の指輪が現れた。2匹の龍が咥えるように、緑水晶が輝いている。
『玲子、試練の通過おめでとう。この指輪は、あたしからあなたに、『風の神子』である証として贈ったもの。あたしの力を与える事のできる、『風の神子』と認めるわ。あたしに名を与えなさい。さすれば、あたしとの契約は完了する。』
「それじゃあ、シルフと呼んでもいい?」
『今からあたしの名は、シルフよ。これからよろしくね、玲子。』
「こちらこそよろしく、シルフ。」
玲子はシルフとともに、天空の神殿から、カランまで空を飛んでいった。
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その頃謙治は、王都の東にあるゲルマニア州州都、ベルルンにいた。ベルルンは、町の中央を流れるノエル川を境に、南北に町が分かれている。北側に領主の館があり、それを中心に貴族や富豪の屋敷が建ち並び、南側は一般の庶民が暮らす家屋が建ち並んでいる。ノエル川には、大きな中洲があり、そこに市場と、町のシンボルで観光名所でもある白亜の大神殿がある。また、町の至る所に、龍神の石像が安置してある。
町の人に聞いてみると、この町のある地域は、過去幾度となく天災に見舞われたが、この町だけは不思議と無事だった。そこで言い伝えに則り、歴代の領主が、天災があるたびに、龍神の像を町中に安置していったそうだ。
言い伝え曰く、遥か昔、古より続く天災を鎮めるため、祈りを捧げていた巫女のもとに、大地と豊穣の神『地龍』が現れた。
地龍は、巫女に告げた。『この地に我を祭る神殿を建て、日夜祈りを捧げよ。我は、その祈りの力で、この地に災いが起こるのを防ごう。
また、そなたの子孫が、その神殿を守る巫女となり、来る日に神殿に訪れる『地の神子』を迎えよ。』
これは決定的である。謙治は、その巫女が守る神殿の場所を聴いた。そこは、町の中央を流れるノエル川の中州にある白亜の大神殿だそうだ。謙治は早速神殿に足を向けた。
神殿の中に入ると、昼間ということもあり、観光客がたくさんいる。神殿の奥に鎮座する『地龍』の像の前で暫く佇んでいると、隣から声がかかった。
「地龍様の像がそんなに珍しいですか?神子様。」
『神子』という単語に驚いた謙治は、声のかけられたほうを向いた。そこには、日本の神社で見る、巫女の衣装に身を包んだ少女が、謙治をじっと見ながら佇んでいた。
「なぜ僕が『神子』だと思ったんですか?」
少女は、ニコリと微笑んで答えた。
「私は、250代目の巫女にあたります。私たち巫女の一族は、初代より受け継いできた力の一つに、『地の神子』を見分ける力があります。あなたからは、『地の神子』の力が全身から放たれています。
『地の神子』様、大地と豊穣の神『地龍』様の試練をお受けになりますか?」
「はい、僕はそのためにここまで来ました。」
「分かりました。では、こちらにおいでください。」
謙治は、巫女の後ろについていき、神殿のさらに奥の部屋まで案内された。その部屋は、神殿の地下にあるらしく、少しじめっとしている。窓のない部屋のそれぞれの壁には、風水などでおなじみの四神(玄武、白虎、青龍、朱雀)の絵が描かれており、天井には、地龍らしき龍神の絵、床には、見たこともない複雑な魔法陣が描かれていた。謙治が、魔法陣の中心に立つと、声が聞こえてきた。
『我が大地と豊穣の力を求めし者よ。我からの試練は、魔法陣から四神及び我の名を探しだし印をつけよ。』
謙治は、魔法陣をじっくりと観察した。すると、複雑な図柄の中に、無数の文字列が浮かび上がっている。その文字列を謙治は、一つ一つ詠んでいく。そして、数時間後、ケンジは四神の名と、|地龍(ノームの名を見つけて印をつけた。
『試練の通過を確認した。これより我は、そなたとともにある。我の主となった汝の名と、我に名をつけよ。』
謙治の前に現れたのは、デフォルメされた、2足歩行をする白いウサギだった。
「僕は、中条謙治。君に付ける名前は、…ハクでいい?」
『ハクか、よい名をありがとう、謙治。亜ち、これは『地の神子』の証じゃ。受け取るがよい。』
白が手を翳すと、謙治の右手の薬指に、2匹の龍が浮彫にレリーフされた金色の指輪が現れた。2匹の龍が咥えるように、黄水晶が輝いている指輪だ。
「じゃあ、ハク。ここの巫女様に挨拶をして、僕の仲間のところに行こうか。」
そういうと謙治は、ハクを抱いて、ベルルンを旅だった。
話の矛盾点を修正しつつ、加筆しています。




