11.疑惑-前編-
前回のあらすじ
安森先生の彼女に会った
「と、言うわけでこの間の女性はなんとうちの先生の彼女だったんだよ!凄くないか!?」
「へ〜凄い偶然だね。……イッチ、残念だったんじゃないの〜あの人が彼氏持ちで!」
香穂ちゃんが不貞腐れたように言う。俺は別にかおりさんとどうこうなろうとは思ってないから!
「いやいや、俺の入る隙なんてなさそうだったよ!でも、かおりさんとはちょっとお近づきになれてるんだよね!」
「え!?どういうことー?」
香穂ちゃんが目を丸くして聞いてきた。
「はは。まあ最近スウがハマってる「キュアキュア」ってアニメがあるんだけどそれの本をかおりさんから借りてるんだよ。かおりさんそういう児童向けの作品に詳しいらしくて……」
スウがハマっているアニメ「キュアキュア」は日曜の朝にやっている女児向けアニメだ。俺はスウの話についていくために日々勉強しているがいまいち覚えられずにいた。
この間も
「イチくん!きょうはキュアキュアごっこやろー!」
「よしわかった。俺が怪人役だな」
「ちがうよー!プリンスペペローンさまだよー」
誰だ!?新キャラか!?
後で聞いた話ではプリンスペペローン様はキュアキュア達を影からこっそり助けるペペロン星の王子様で先週までは呪いでスパゲッティの妖精に変えられていたが今週元のイケメン、プリンスペペローン様に戻ったらしい。
自分で説明していて訳が分からなくなってきたが、スウに着いていくために俺は必死だった。
「え、ペペローン様って何すればいいんだ?」
「えーっとねー!まずスウがのろいをとくのね、それで、さいしょようせいさんだからイチくんまるくなってて!それで、スウがシャラーっていったらたって!それで、ありがとペローンっていうの!」
ありがたいことに流れが決まっていた。
「じゃあいくよ」と言ってスウが広告用紙を棒状にしたステッキを持って回りだした。俺は急いで丸くなった。
「シャラ〜」
俺は勢いよく立ち上がって
「ありがとペローン!!」
と、大声で言った。
「ちがう!!!ペペローンさまはもっとカッコよくいうの!!」
と速攻で怒られた。俺に「キュアキュア」は早すぎたのかもしれない……。
そのことを文芸部の面々に話していると安森先生が
「うちのかおりはそういう子供向けの得意だよ!かおりも勉強熱心だからいろいろ本買っててさ。貸してくれるよう頼んでみようか?」
と言ってくれたのでお言葉に甘えることにしたのだ。俺とかおりさんは安森先生を介して「キュアキュア」の本を貸し借りする間柄になっていた。
「キュアキュアってなんか意外だね。」
「うん。そういうところが安森先生もグッと来るのかな〜」
何気なく安森先生の名前を出す。
「……ちょっと気になってたんだけどさ〜。その先生の下の名前ってどんな?」
「えーっと、たしか隆幸だったかな」
香穂ちゃんは少しだけまつ毛がバサバサの目を見開いた。
「隆幸、隆幸ね。……メガネしてる?」
「あはは。当たり前だよ。かおりさんのメガネの動きが先生に似てるって話から始まったんだから!」
そのあとの香穂ちゃんはどこか上の空だった。
次の日、俺はとんでもないものを見てしまった。
教員の駐車スペースで香穂ちゃんと安森先生が一緒に居たのだ。俺は思わず物陰に身を潜めた。
香穂ちゃんは苛立ったように先生に詰め寄る。
「ねえ、隆幸くんさ〜自分が何したかわかってる?彼女と同棲ってどう言うことよ!」
「か、香穂ちゃん落ち着いて!別のとこで話そう!ここだと人来ちゃうから!」
安森先生は慌てたように香穂ちゃんの手を引いて車に押し込むと辺りをキョロキョロと見回した後、車を発進させた。
俺はかおりさんに返して貰おうと思っていた「キュアキュア」の本を持ったまま立ち尽くした。
安森先生……かおりさんという人がありながら……女子高生に手を出している……?
そんなばかな……でも、もしかしたらかおりさんがプロポーズを断ったのはこういう要因があったから……とか。
というか、これって援交?




