二十話 命がけの冒険者達、治療院にて
「ふぁぁぁぁぁ」
影秋は朝起きた。
「ふぁあふぃー」
あくびをかみ殺す影秋。
「今日もいい天気~」
カーテンを開け外を見てつぶやいた。
「眠気が取れないな・・・シャワー浴びるか!」
そして脱衣所までいく、着替えを用意し下着を脱ぐ。
「おぉお、寒い。」
手早くシャワーを出す。
もう手順は間違えない。
「俺だって学習するんだぜ!」
そしてシャワーを浴びる。
「つ、つつめてえええええええ、めっちゃつめてええええええええええええ」
まだ暖かい湯が出てきてなかったのである。
「ちべたい・・・早くあったかくなれぇ・・・なってくれ・・・」
手でシャワーの温度を確認する影秋。
風呂場で全裸でしゃがみこみ、震えながらシャワーの温度を確認する少女・・・。
影秋である。
「お、あったかくなってきた!!やったぜ♪」
そしてシャワーを浴びる、
「あっつ!冷たいの水浴びたせいであっつ!!」
どこまでもお風呂でうまくいかない影秋であった。
「あーさっぱりしたわー」
影秋はシャワーを終えて脱衣所に居る。
髪をふき、体をふく。
そして下着を穿いた。
「それにしてもこの髪ちょっとうっとおしーなぁ」
影秋の艶のある髪は肩まで伸びており黙っていれば清楚な感じの美少女であった。
「おっしゃ縛るか。」
お風呂場に何個か置いてある備品の中で髪留めのゴムがあったのを思い出し、それを使うことにした影秋。
「むむむ、髪まとめんの思ったより難しいな」
そして髪をまとめてゴムで縛る。
「完成!これで邪魔じゃない!完璧だぜ!!」
そこにはポニーテールにした影秋がいた。
とても綺麗な黒い髪を後ろで束ね動くたびにフルフル揺れる、そんなポニーテールである。
「ぽーにいーてぇーるー♪」
某アイドルグループの歌を口ずさみながら服を着ていく影秋。
「準備OK!いくぜ!!」
己に気合を入れて、影秋は歩き出す。
食堂へーーーー
「うまーーーーーい、いふふぉおいふぃいひょくひぃ(いつもおいしい食事)・・・んん、ゴクゴク(水を飲む音)ありがとうございます!!」
「お嬢ちゃん、うれしいけどゆっくり食べようね!」
影秋はいつも通りである。
影秋は、宿を出て工商会へ向かう道中で、
「どけー急患だー魔法治療院まで道をあけろー!!」
という声が聞こえてきた。
「な、なんだぁ?」
影秋はその声のする方向へ視線を向けた。
そこには多数のけが人がいた。
中には重傷者もいた。
「な、なにがあったんだよ!これ!」
影秋は混乱する。
「あ!アキちゃん丁度よかったわ!手伝ってくれない?」
「べ、ベリルさん!!何があったんですか?」
「レッドドラゴン討伐隊よ!!何とか討伐できたんだけどね、軍の討伐隊が働いてくれなくて冒険者達にかなりの死傷者がでたわ」
「そ、そんな・・・」
「お願いアキちゃん手伝って!!」
「わ、わかりました!!何をすればいいですか?」
「けが人を魔法治療院に運ぶのよ!」
「わかりました!」
影秋は手伝うことにした、足を怪我しあるけない男を背負った。
「うう・・・俺の足が・・・足がもえちまったよおおおお」
「しっかりしろ!!今治療院まで運んでやるからな!」
先行しているけが人達の後を追い治療院まで運ぶ。
治療院についた影秋は、
「まるで映画の野戦病院だぜ・・・」
そこは戦場であった。医療と魔法医療の戦場であった。
重傷者には魔法医療を、比較的軽傷な者は簡単な治療を受けていた。
「あの!この人はどこに運べばいいですか?」
「きみ!奥の広場に運んでくれ!!」
奥の広場に行く。
ベッドが多数並び、けが人がひしめき合っていた。
「あの、この人足を怪我してるみたいなんですけど、どこに連れて行けば・・・?」
「足を怪我?見た感じ比較的軽症じゃないか!その辺においておけ!!」
「おいいいい、俺は足を焼かれたんだぞ!!!」
後ろの男が泣き始めた。
「ふむ、空いてるベッドがないんだ。我慢しろ」
「ちくしょう・・・ちくしょう・・・」
「すまん、ここにおろすぞ。絶対に治療してもらえるから諦めんなよ!な?」
そういい、ながら周りを見渡す、けが人はこの部屋だけで40人はいるだろうか・・・
(ドラゴンってそんなに強いのか?あの時は護衛11人で乗り切ったはずだが・・・)
影秋はわかっていなかった。
ドラゴンの強さ、確かに空を飛ぶのは脅威だ、火を吹くのも脅威だ、とても攻撃力があり、真正面から直撃すると致命傷だ黒こげになってしまう。
だが、ドラゴンの厄介なところはそこではない、その再生力つまり死ににくいのだ、とてつもなく。
本来なら軍の魔術師達と連携し、動きを止めながら囲んで倒すのが常識だった。
しかし今回は軍が働かなかった。
「アキちゃん!ありがとう!!」
けが人の収容が終わったのかベリルが話しかけてきた。
「ベリルさん!傭兵団の人たちは大丈夫なんですか!?」
「ええ、大丈夫よ。」
「ドラゴン・・・退治ですよね?あの時のドラゴンですか?」
「そうよ、あの時のドラゴンよ、私達は案内役として討伐隊に参加したの」
「案内役・・・ですか?」
「そう、案内役、魔の森付近とはいえ街道沿いにドラゴンが出現したんだもの国に報告したわ。そしたら討伐隊組むからそこまで案内しろって・・・」
「大変・・・でしたね・・・」
「今回は特に大変だったわ、ランクAの4人PTでレッドドラゴンを倒す人たちだっているのに今回の討伐隊はBランクの人たちばかり、軍の魔術師達も動かなかったし・・・かなりの被害がでたわ。」
影秋は驚いた。
「4人PTで倒す人たちがいるんですか!!?」
「そうね・・・基本的にギルドランクはAまでギルド貢献ポイントであがるとされているけど、本当は違うわ」
「違う?」
「AとBの間には壁があるのよ。実力を認められなければAにはなれないってこと。」
「そ、そうなんですか・・・。」
「それもかなりの実力がなければ認められないわ、Aランクで受けられる依頼はそれだけ過酷なのよ。」
ギルドの誰もが知っているような裏話であった。
「それにしてもアキちゃん?随分可愛らしい格好してるじゃない?あら、その小剣いい出来ね」
「可愛いって・・・///ベリルさんのほうが可愛い・・・いや、美人ですよ!!」
「アキちゃんはやっぱり冒険者になるのね・・・この光景をみて思いとどまってほしいのだけれども・・・」
「俺もうすでに冒険者なんですよ!ランクFですけどね!もう一個クエスト達成したんですよ!!」
会話が噛み合わない二人であった。
「俺そろそろ行きますね。どこの宿に泊まっているんですか?後でお伺いしますよ。」
「ああ、ごめんなさいね。用事の途中で引き止めてしまって、私達はいつもこの町にくると『朝日と共に』という宿に泊まっているわ。今回は討伐隊に参加してたから今から部屋を取りに行くのよ。」
「ええ!お、俺も朝日と共ににとまってますよ!!」
「えっ!?そうなの?アキちゃんあそこ高いでしょう?お金は大丈夫なの?」
「あ、おかげさまで大丈夫です!あの時はありがとうございました!!」
あの時と言うのは護衛達成の報酬といって護衛していないのに金貨1枚もらったときのことだ。
「いいのよ、もう冒険者なんだからしっかりね!」
「はい!ではまた後で話しましょう!!」
ベリルさんとの会話を切り上げて治療院をあとにする影秋、
「しまった・・・道がわからん。」
くるときは先行している人たちについていったので大丈夫だった影秋、しかし戻りは・・・。
「べ、べりるさーん!!」
別れたばかりのベリルに道を聞きに行く影秋であった。