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それでも尚、神に媚びる  作者: 羽曳オトカ・A
9/58

気分爽快



(ガチャガチャ…)



「はー、ただいまーっと。疲れたー。」


「本当ですよねー。お邪魔しまーす。おー綺麗!広い!」


「まぁねー。リビングでとりあえずゆっくりしてー。」


「了解でーs…」


「ってなんであんたがあたしの家に来てんのよ!!!!!」


「おぉ、ノリツッコミ!」


「なんで自然にあたしに着いてきてんのよ!!!?昨日寝てたとこで寝なさいよ!!!」


「いやぁ、やっぱり外で寝るのって心細いっていうかー。…というか、そんなこと言います?勝手にあんな契約してさー。」


「はぁ?」


「だって、おれは知らない間に三億円の負債抱えましたからね?この世界に来てまだ二日目なんすよ?まじで訳分からんすぎるし。」


「だからー!じゃぁ断ったらあのギターはどうするつもりだったのよ!!!」


「三億円でメンテナンス頼む奴がおるかい!それなら山ほど他のギター買えるわ!見ました?!あのジジイの店のギターの値段!一本大体1カーズ!10万円程度なんすよ!?高くても3カーズ!さっきのストリートライブで借りたギター弾いたけど、あれが10万円なんて安すぎるくらい良い音してましたよ?!あんな良いギターなかなか無いんすよ!たぶん日本なら50万円以上しますよ!?それが10万円!あの訳分からんレスポールのメンテナンス代だけで、それが三千本買えるんすよ??!意味わからないって!」


「……なら踏み倒せば良いじゃない!」


「へ?」


「だから、払うの嫌なら取りに行かなければ良いだけでしょ!??」


「そんな考え方、神がして良いの…?コープランドでそんな悪行働く人なんていないと思うけど…。」


「知るかい!君が払えないならそうすれば良いのよ!」


「…でも、あれ大事なギターでしょ?なんかそんな会話してたじゃないですか。」


「私は知らん!どうでも良いの!分かったら家から出てけ!シッシッ!」


「…そんなこと言いながら、さっき激安スーパーでつまみとお酒買ったじゃないですかー?へへ♪」


「………あー!!!もう!!!君といるとなんか調子が狂うんだ!!君に騙された女の子達もこんな気分?!ってことは、私もいつかこの男に…??!」


「変なことしないって!!普通に寝るだけですし、それにおれは…。」


「…なによ?」


「…いや、いいっす。」


「……っ!?あんた!今私の胸見てたでしょ??!!!この変態!!どーせ私は胸ないわ!!!!あんたが巨乳好きなのくらい知っとるわ!!最っ低っ!!!…指一本でも私に触れてみなさい!!すぐに何としてでもスリップノート以下に堕とすからね!!!」


「わかりましたわかりました!だから、とりあえず今日は泊めてくださいよー。」


「…うーん〜……もう!!入りなさい!」


「お邪魔しまーす♪」


やっぱりおれは神に媚びるのが上手かった。


女神の家は、広くて綺麗で、少しお金を持った管理職のような家だった。マンションの最上階に部屋はあって、軽く見たところ3LDKはあった。



「いい?リビングのソファから1メートル以上離れないこと!私はシャワーを浴びてくるから…覗いたら◯す…!」


「天界で死ぬとかないんでしょ!?覗くこともないですって!その代わり、ギターだけ置いて行ってください!」


「……ふん!」


彼女は空間バッグからギターを取り出してシャワールームへ向かった。






「はぁー♪やっぱり入らなくて良くてもシャワーは浴びるべきよね!気持ち良かったー♪」


女神がタオルで頭を拭きながら出てきた。シャワーのおかげで機嫌は持ち直したようだ。


「君も入るかい?シャワー。」


「え?あー、もし、女神様が許してくれるなら…。」


「んー、まぁ……いいわよ?君も疲れを飛ばしてきなさい!久しぶりのシャワーはきっと格別だよ?」


「…!はい!!」




久しぶりのシャワーは言葉にならないくらい気持ち良かった。

シャンプーやボディソープは、なんとなく気兼ねして、使うのをやめた。その分時間をかけて身体中を洗った。




「はー♪気持ち良かったですー。…ん?それはなに?」


あまり見たことのない饅頭みたいな白いふわふわの生物が女神と戯れていた。


「んー?これは私のペット♪」


「ペットって概念もここにはあるのかー。」


「そうねー。トレースした生物だから魂はないけどね。癒しのためよー。可愛いでしょ?」


「確かに可愛い…なんか、ハムスターサイズのウサギみたいな、モフモフですね!」


「あー、君はモフモフのもの好きだったよねー。おっさんのクセに。」


「はは……名前は?」


「……なんでもいいでしょ。」


「いや!良くないでしょ!」


「……イブキ。」


「へー!イブキかー!よろしくなーイブキ!おれはシュンタロウもといヒビキだぞー♪」


(キューウン…?)


イブキは不思議そうな顔でこちらを見つめていた。


「もういいでしょ!!さっさと呑むわよ!」




おれ達はそれぞれに買ってきた缶チューハイを手に取った。

女神が立ち上がって腰に手を当てた。



「それでは!ヒビキのストリートデビュー初日を祝しまして!カンパーイ!!!」


「かんぱーい!」


(キューゥン♪)



「「……プハーッ!!!!」」


二人揃えて一口目後の声を出した。


「それにしても、割と上手くいきましたね!今日のストリートライブだけで1カーズ稼げるとは思いませんでしたよ!」


「そうねー、この世界でストリートなんて珍しいし、周りのみなはお金持て余しるからねー。それくらいは当然よ。」


「……でも、この調子だと後三千日か…。」


「ん?君はあのギターを取り戻す気はあるんだ?」


「そりゃそうですよ!あれはやっぱりもっと弾いてみたい、かな。。。」


「…へー♪ならもっと音楽しないとね♪カバーよりもオリジナル曲の方が周りは見てくれるわよ?」


「んー、そうですよねー。それが難しい。」


「そう?numb(ナム)の曲をやれば良いじゃない?あれは君にとってはオリジナルでしょ?」


「……あの曲達は、おれが歌うべきじゃないかな…。」


「…そっか。、そうかもね。、あんな良い声君には出さないもんねー!!あはは♪」


「…そうっすね…。」


「….ま、とりあえずコツコツのんびり音楽することね!君の好きな音楽をして、君が楽しめるように♪」


「…んー、そうですね。当たり前だけど、女神様はこの世界に断然詳しいから、これからも人が集まりそうなところとかを教えてくれるとありがたいですね。同じ場所でやってるだけだと飽きられるかもしれないし。」


「わ、私が?!」


「それはそうですよ。知ってるのは女神様なんだから。」


「へ、へー!少しは役に立ててるみたいでよかったわ…。」


「…?当たり前ですよ、それは。あなたがいないとおれは何も分からないですから、ちゃんと導いてくれないと。」


「……ふーん。ま、まぁ仕方ないなー♪それなら私が力になってあげましょう!何でも言ってきなさい!なはは♪」


「??なんでそんな嬉しそうに…」


「嬉しくなんかないわよ!君のために仕方なくやってるだけなんだから!」




そうやって二人+一匹の楽しい宴会は進んだ。




「……って感じで、あのギターのフレーズは……あれ?聞いてます?」


「………こら。」


「ん?女神さん?」


「……もっと酒持ってこいやこらー!!お前に説教しなきゃいけないことがいっぱいあるんじゃ!タコこら!!」


「え?…あー、ひょっとして酒癖悪い?」


「ヒック…っ!きみはねー、、っく、、ほんと!しょーっもない人間なんだよ!どーしようもない!ひっく!」


「あ…はいー…。」


「っクソみたいな生き方しやがってさー!何の魅力があるのか分からないけど!ひっく!色んな人たぶらかして、ふざけんなって感じ!…っく!」


「まぁまぁーあははー…ちょっと呑みすぎたかなー?そろそろ寝ますか?」


「…ヒック!寝るかいぼけ!夜はこれからじゃい!!…さっさと酒買ってこい…!」


「いやー、せっかく今日手に入れたお金がどんどん減るのはどうかと……」


(ドサっ…)


「…ほれ、私のお金をやるから買ってこい…。」


「あ、あははー。…はい。」


「お釣りちゃんと返しなよ…?」


「わ、わかってますっ!子どものおつかいじゃないんだから!」


「100秒以内に戻って来なかったら、モノマネ100連発させるからね?……はい、いーち、にーい…」


「わかったって!行きますよ!!!」




おれは急いで買い出しに出かけた。もちろん100秒は遠に過ぎていた。



「ただいまー。…あれ?女神さん?」


(キュンキューウン♪)


イブキが彼女をあやしているようだった。女神はそのままソファで寝ていた。


「あらら…。女神様ー!ペットに行きますよー?寝室どこですかー?」


「んーわかんにゃい…そこかも…。」


部屋の扉を開くと、何もない広い部屋にベッドだけが置いてあった。少しだけ、良い香りがした。ベッドに女神を投げ込み、部屋を立ち去ろうとしたその時、彼女は寝言を言うようにおれに話しかけた。


「…んー、んにゃ…ひびきはねー、がんばらなくて良いから……がんばらないで。」


「……頑張らないと、三億円なんか貯められないっすよ。」


おれはリビングに転がっている缶やゴミを片付けて、そのままソファで寝た。




翌日、起きると女神はケロッとした顔でトーストを食べていた。


「お、起きたね。おはよー。君の分もあるよー。」


「ふぁ〜…おはようございます…。」


立ち上がってテーブルに向かうとサラダと焼けたパンにバターが塗られていて、横にコーヒーが添えてあった。


「おー、the 朝食!……神の朝食ってこんな素朴?」


「私がこういうの好きなだけよ。食べない神もいれば、朝から焼肉の神もいるわよ。」


「へー…やきにく…元気すぎる。」


「ほら、さっさと顔洗ってきなよ。」


「はーい…。」


なぜか昔からずっと一緒に住んでるみたいに自然な流れだった。


朝食はすごく平凡で、それがすごく安心した。現世に戻ったような気分だった。

女神は食器を自らの手で洗いながら、話し始めた。


「ヒビキ、今日はどうするの?午前中からストリートなんてしても人は集まりにくいし、君も疲れるでしょ?」


「んー、そうですね。昨日寝ながら少し考えていたんですけど、夕方までは作曲とかのんびりしようかなと。」


パンを頬張りながら答えた。


「ふーん、良いんじゃない?どこか行きたい場所があったら言ってくれて良いよ。日本にあるものは大体こっちにもあるわ。映画館とか、水族館、遊園地もあるわよ♪」


「はは、そんなものまで…映画館ならともかく遊園地はもう遊ぶ気満々じゃないですか…。」


「ち、違うわよっ!どこに“いんすぴれーしょん”が転がってるかわからないでしょ?!」


「はいはい、そうですね…あはは…それで、行きたい場所がひとつあるんですけど、、こっちにあるのかな…?」


「ん?どこよ?」


女神が水道の水を止めた。




「……幼稚園。」





お読みいただきありがとうございます。

今タイトルは森高千里さんの楽曲から拝借致しました。

この物語が気に入ってくれた方は、ブックマーク、評価に星をつけていただけると幸いです。

とはいえ、私自身そういうことをしてこなかった者なので、しなくても全く問題ありません。

これからも『それでも尚、神に媚びる』をよろしくお願い致します。

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