【別視点】 覚悟
ゴールデンウィークは5日間連続投稿!ヾ(≧▽≦)ノ
お暇があったら是非読んでみてくださいね!( *´艸`)
【マッシュ】
信じられないような少女だった。いや、もう成人しているとは聞いたが、少女としか見えないような、華奢で若々しい見ための女だった。
アオイ・コーノミナト。噂では十分に聞いていた。フィディック学院に突如として現れた一流の魔術師で、最初から上級教員という破格の待遇で迎え入れられた存在。世界屈指の実力と言われるグレンや、特殊な魔術で一目置かれるエルフの王国からも認められる天才だという。
そんな天才と戦えると思い、心から楽しみだった。
だが、まさか剣で戦うことになるとは思わなかった。なにせ、魔術学院の魔術師だ。それもグレン学長に次ぐ実力を持つはずの上級教員である。
しかし、実際に剣で戦ってみてその印象は覆された。
魔術師とは思えないどころではない。生粋の剣士が何十年と実践を積んできたような見事な剣術だった。身のこなし、剣の振り方だけではない。虚実を合わせ持つ多彩な攻撃と相手の動きの先を読む力。そのどれもが一流だ。
はっきり言って、身体強化無しで戦えば負けてしまっていただろう。それほどの強敵だった。
だが、一瞬。ほんの僅かな隙を見つけて、手首を返す形で斬撃を曲げる。それだけだ。剣先は拳二つ分ほど上がっただろうか。その僅かな変化で、アオイの左手の肘から先が空中へと飛んだ。
剣を振っていたアオイの目が大きく見開かれ、視線がこちらの剣に向く。この機を逃すわけにはいかない。
「もらった……!」
油断せず、最速の剣技で攻める。変則的な切り上げをした後だった為、僅かに遅れるが、それでも十分な速度で振り下ろす。脳天から真っ二つにする勢いでの振り下ろしだ。
しかし、我が剣は届かなかった。
絶好の機会。最高、最速の剣技だったはずだ。だが、その剣は空を切った。何故か。
アオイが、一歩前に出てきたからだ。単純なことだが、信じられない選択だった。迫る剣先を下がって避けるならまだ分かる。勿論、移動するよりも剣の方が速い。加速した剣先からは逃げられないはずだ。
その絶体絶命の状態で、アオイは前傾姿勢になって前に出てきた。予想外の行動であり、今さら手を戻すことはできない。
そして、踏み込んできたアオイは右手一本で剣を突き出してきた。回避などできるわけがない。剣は右肩の内側に突き刺さった。鎧を着ているはずなのに、まるで布を貫通するように剣が肩を抉る。激しい衝撃と痺れ。まだ火傷のような熱さしか感じないが、すぐに激痛へと変化するだろう。
肩の内側、関節部分を刺されたせいで、振り下ろしていた剣も勢いを失う。
「……ぐ」
呻き、アオイを見下ろした。
「私の勝ち、ですね」
「……うむ。負けを認めよう」
そう答えると、アオイは剣を引いた。そこへ、グレン達が走ってくる。
「腕! 腕が!」
「治療できるか!?」
慌てた様子で切断された腕を運んできたのを見て、アオイが頷く。
「ありがとうございます」
それだけ言って、アオイは自らの腕を水の魔術で洗浄し、切断面同士をくっつけた。まさかと思っていたら、淡い光を放って腕がくっ付いた。冗談のような光景だ。くっ付いたばかりの腕を軽く動かしてみて、アオイが頷く。
「……問題ありませんね。予定通りではありましたが、初めて腕を失って少し不安になりました。治って良かったです」
アオイがホッとしたようにそう口にして、思わず目を見開く。
「なに? 腕を失うことを計算していたのか?」
驚いてそう尋ねると、アオイは何でもないことのような顔で振り返った。
「はい。アウォードさんは隙が少なかったので、苦肉の策でした。腕を失う恐怖はありましたが、集中していたので何とか動揺せずに攻撃に移ることができましたね」
と、アオイは語る。癒しの魔術があるとはいえ、驚くべき決断だ。
「……まさに、戦場の技だな。それだけ何度も死地を抜けてきたということか」
そう答えて、反省する。武闘場で戦う時は死を覚悟してきたはずだが、自らの腕を捨てて勝つという選択肢は頭に浮かばなかった。
それだけ、アオイとの覚悟に差があったということだ。
しかし、アオイは首を左右に振って苦笑する。
「いえ、戦場の経験などありませんよ。ただ、必ず勝とうと思っただけです」
「……頭がおかしいとは言われないか?」
「それは失礼ではありませんか?」
そんなやり取りをして、思わず噴き出す。天才は変わっている者が多いと聞くが、まさにその通りだった。
そんなことを思いつつ、片手を挙げて口を開く。
「……最後の戦い。勝者はアオイ・コーノミナト! 余の負けである!」




