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異世界転移して教師になったが、魔女と恐れられている件 〜王族も貴族も関係ないから真面目に授業を聞け〜  作者: 井上みつる/乳酸菌/赤池宗


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第三戦

 魔術を発動した瞬間、フェルターの動きが変わった。そもそも、体格に恵まれている上に身体能力が高く、いつも特訓している為に戦闘に関する知識や技術もずば抜けている。そんなフェルターが、最上級の身体能力強化を行えばどうなるか。


 対して、ニニックも十分過ぎるほどの強者である筈だ。ラムゼイも参加する大会に毎回参加しているなら、それだけで一流の戦士だと推測された。


 しかし、それでも大きな差があった。フェルターが横に向かって走り出すだけで、ニニックは追いかけることも出来ずに必死に体の正面を向けようと動く必要があった。後方に跳んで視野を広げ、どうにかフェルターの姿を見失わないようにするのが精いっぱいである。


 ニニックは全力を出している筈だが、フェルターの動きが速すぎて完全に翻弄されてしまっているのだ。


「くっ……! 氷霧(アイスブラインド)!」


 スピードで負けているニニックは、苦肉の策として武闘場の壁まで退避し、そこから広範囲に向かって氷の魔術を行使する。その様は、まさに遠距離に頼る魔術師の行動そのものだったのだが、必死になったニニックは気が付けずにいた。


 ありったけの魔力を込めたのだろう。ニニックの発動させた氷の霧は周囲を真っ白に染めるほどだった。武闘場の三分の一が白で塗りつぶされる。そんな中、フェルターは迫りくる霧を睨んで詠唱を始めた。


 簡単な魔術だ。中等部のほとんどの生徒が使える魔術だろう。そんな簡単な風の魔術で、真っ白な霧は真っ二つに切り裂かれた。


 白い霧が壁のように左右に残り、中心に伸びる即席の道をフェルターがゆっくり歩いていく。その正面には、壁を背にして立つニニックの姿があった。風の魔術は初歩的なものだった為に、フェルターの身体強化の魔術は効果を失っていない。


 それはニニックも理解しているのだろう。ニニックに残った選択は、特攻のみだ。それを示すように、拳を握り込んでいる。


「……俺の勝ちだ」


 その時、フェルターが一言告げた。それを聞き、ニニックは目を見開いて固まる。一秒も経っただろうか。やがて、ニニックはフッと息を漏らすように笑い、両手を挙げて全ての魔術を解除する。


「……参りました。フェルター様、本当に強くなられましたね」


 ニニックがそう呟き、フェルターは短く息を吐いてマッシュに顔を向けた。そして、マッシュは決着を宣言する。


「……勝者、フェルター・ケアン!」


 マッシュが大きな声でそう宣言すると、武闘場は歓声に包まれた。拍手喝采の雨の殆どは、フェルターに向けられている。ラムゼイの子が、父を超えるような資質を見せつけた。その結果だろう。


 大歓声の中、フェルターはニニックに対して口を開く。


「……ブッシュミルズは身体強化の魔術に傾倒し過ぎていた。今後は、他の魔術を学ぶ必要がある」


「……騎士団でも、必ず周知いたします」


 それだけのやり取りをして、フェルターはこちらへと戻ってきた。


「お疲れ様です。これで、ブッシュミルズ皇国は更に強くなる、ということですね」


 苦笑しながら声を掛ける。それにフェルターは軽く顎を引き、右肩を一、二度回した。


「……慣れないことをして疲れた」


 珍しく弱音を吐き、フェルターはストラスとは反対側の壁の方へと移動し、その場にあぐらをかいて座る。その様子を尻目に見つつ、武闘場の中心へと振り返った。


 マッシュはこちらの視線に気が付き、腕を組んで不敵な笑みを浮かべる。二連敗して多少は焦っているかと思ったが、どうやら意に介していないらしい。


 いや、そもそも勝敗には興味がないのかもしれない。


 そんなことを思っていると、マッシュが腕組みを解いて口を開く。


「我が国の戦士がまさかの連敗だ……だが! ここからは負けないだろう! こちらからはマーティンが出る! そちらは誰だ!」


 マッシュが吠えるように叫び、私はグレンに目を向けた。すると、グレンが溜め息交じりに足を踏み出した。


「フィディック学院の学長である、グレン・モルトじゃ。まぁ、お手柔らかに頼むぞい」


 そう言って、少し腰を曲げてゆっくりと武闘場の中心に向かって歩いていくグレン。何故かいつも以上に高齢者っぽい動きである。そんなグレンの姿に、観衆からは微かに戸惑いの声なども聞こえてきた。


 対して、対戦相手となるマーティンは二メートル近い身長の大男だ。最も分厚い体をしており、プロレスラーでも裸足で逃げ出しそうな体躯をしている。そして、その手には大きな両手持ちの斧が握られていた。


 魔術を抜きに考えたら、誰でも残酷なショーが始まるのかと不安になる対比だ。だが、マーティンとグレンは足を止めずに中心まで歩き、向かい合う。見下ろすマーティンに、見上げるグレン。対格差は大人と子供以上である。


「……くれぐれも、お手柔らかに、の?」


「いえ、世界最強の魔術師の一人に数えられるグレン殿ですからな。全力で戦いたいと思っておりますぞ!」


 二人がそんなやり取りをしたのを見て、マッシュは試合開始を宣言した。

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― 新着の感想 ―
アオイと会う前からずっと世界最強と呼ばれてた人が、アオイから狂喜乱舞しながら学んだ結果どうなったのかやっと見られるんだなあ さすがにアオイやオーフェンやエルフのとこの王様ほどじゃなくてもビックリ人間な…
>そう言って、少し腰を曲げてゆっくりと武闘場の中心に向かって歩いていくグレン。何故かいつも以上に高齢者っぽい動きである。 じいちゃん、少しでも楽できるように相手に油断して貰おうとしてる? 一応相手も …
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