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異世界転移して教師になったが、魔女と恐れられている件 〜王族も貴族も関係ないから真面目に授業を聞け〜  作者: 井上みつる/乳酸菌/赤池宗


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ケアン侯爵家1

 モアとチーフを連れて一路、ケアン侯爵家の居城を目指した。だが、その旅も予想以上に早く終わりを告げる。


 なにせ、空を飛んで高速で移動すること一時間ほどだ。モアとチーフが飛翔魔術に驚いている間に、目的の城塞都市が見えてきた。


「もう着いたんですか!?」


 窓から身を乗り出したモアが驚き過ぎて絶叫する。同様にチーフも驚きに目を丸くしていたが、声までは出していなかった。


「ここが、フェルター君の生まれ故郷ですか」


 空中から見下ろしたからだろうか。広大な城塞都市は見事な威容を誇っていた。赤レンガっぽい石造りの建物を同様の色合いの城壁が取り囲み、綺麗に整備された道がある種の美を感じさせる。街の中には街路樹や花壇などが多くみられ、緑の多い街並みに見えた。そして、その街の中心には黒い大きな城の姿がある。


 綺麗で統一感ある街並みの中に、異質な黒い城。城壁や尖塔に囲まれた城は威圧感が強い。こう言っては何だが、まるで魔王城のような見た目だった。だが、ラムゼイが住んでいると思うと、不思議と調和してみえた。


「あ、あの! お手数ですが、街の入り口で受付をする必要が!」


 不意にモアが手続きについて教えてくれた。それに頷いて降りようとすると、黒い馬車を飛ばすオーウェンが不満そうに溜息を吐く。


「面倒だ」


 それだけ呟いて、なんとそのままラムゼイの居城を目指して飛んでいってしまった。


「……魔法陣が近くにあると思って我慢できなくなってますね」


「えぇ!?」


 オーウェンの心情を予想して話すと、モアが焦りと驚きの入り混じった声を上げる。モアの顔を潰してしまう可能性もあるかもしれない。


「急いで止めましょう」


「お、お願いしますぅ……!」


 涙目で懇願するモア。その声を背に急いでオーウェンの後を追ったが、もう遅かった。城を守るように設置された城壁や塔の上部には城を守る騎士が大挙しており、オーウェンや私に向かって警告の言葉を発する。


「何者だ!」


「ここをどこだと思っている!?」


「お、おい! あれはエルフだぞ……!?」


 一気に騒然となる城の様子を見て、モアが「ひぇええっ!?」と悲鳴を上げた。すると、オーウェンが真顔で振り返ってモアを見る。


「謁見を取り付けてくれるか」


「む、無理ですよぉおおっ!?」


 オーウェンのとんでもない言葉に、モアが絶叫する。わざとやっているのかと疑いたくなるオーウェンの行動に、深い溜め息を吐く。


 すると、黒い馬車の窓からチーフが顔を出した。


「……隊長。どちらにしても、我々が前に出るしかありません。このままだと攻撃を受ける可能性があります」


 チーフが真面目な顔でそう言うと、モアは馬車の窓枠にしがみ付くような格好で小刻みに体を震わせる。


「うぅ……わ、わわわ、分かりました……」


 ぷるぷる震えるモアを見て、チーフが頷いて馬車の扉を開けた。そして、軽く身を乗り出して声を上げる。


「国境警備隊の隊長、モア・ボアと副隊長、チーフ・ハンガー! 謁見の為参りました!」


 モアの様子をみて、チーフが先にそう伝えた。それにモアが慌てて顔を上げる。


「も、モモモ、モアです! すみません! き、緊急の用件の為、空から参りましたぁ!」


 混乱したモアはそう言ってすぐに馬車の中に隠れた。怪しいことこの上ないが、大丈夫だろうか。


 そんなことを思っていると、予想通り白いマントを着けた騎士が手に槍を持って怒鳴った。


「嘘を吐け! 国境警備隊にこのような馬車は存在せん!」


 騎士の男がそう言うと、他の騎士達も武器を手に警戒心を増した。殺気立つ騎士達を見て、チーフも眉根を寄せて口を閉じる。


「……我々が偽物だと思われていますね。どうにか地上に降りることが出来たら……」


 チーフがそう口にすると、その後ろからフェルターが出てきた。そして、開かれた扉から顔を出して地上を見下ろす。


「俺がいく」


 それだけ言って、フェルターが低い声で名乗った。


「……フェルター・ケアンだ。武器を放せ」


 フェルターがそれだけ告げるが、その声は興奮した様子の騎士達には届かない。城壁や塔の上で威嚇するような声を上げる者が何人もいるからだ。


 それを見て、フェルターは軽く息を吐いて片手を自らの首に当てた。そして、首を左右に二度三度と曲げて関節部分から音を鳴らした。


「……仕方ない。実力行使だ」


 フェルターはそう小さく呟くと、躊躇いもなく馬車の扉から飛び降りる。馬車は百メートル以上の高度で静止しており、フェルターは飛翔の魔術は使えない。思わず助けにいこうかと思ったが、フェルターが魔術を行使したので様子を見ることにした。


 空中で魔術を行使したフェルターは拳を振り上げ、魔力をオーラのようにまといながら拳を突き出した。フェルターの落下を見て、慌てて左右に避ける騎士達。その誰もいなくなった城壁を、フェルターは思い切り殴りつける。


 空中にいても激しい衝撃と地響きが伝わってくるほどの一撃だ。その一撃で、城壁の上部が半壊してしまった。それを見て、モアが顔面蒼白で絶叫する。


「フェ、フェルター様ぁああっ!?」


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― 新着の感想 ―
1時間ほど…直線距離で空からで…国境から60~80km位だろうか。 国土がどれくらいか分からんけど割りと遠くね?
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