八十一話 甘い物が食べたいそうです
あの……その……なんていうか……お久しぶりです！（開き直り）
「……一体全体どういうことだってばよ」
「お前さんなんか語尾がおかしいってばよ」
「相棒もな⁉︎」
いかんいかん、驚きすぎて語尾が変な事になってしまった。
いやいやそれよりも、この爆殺馬鹿野郎さんがルミリアと同じ名字ってどういうことだよ！誰か説明してくれ！プレーズ説明！アイドントノー！
「くっくっくっ、低脳なあんた達に私が直々に教えてあげてもいいわよ？ほら土下座って言って頭を地面に擦り付けるだけで説明してあげるわよ？」
「うーん、パスで。そういうことなんで相棒、説明よろすく」
「恐らくだが爆殺馬鹿野郎の子孫だぞルミリア、おーい爆殺馬鹿野郎、お前竜人族だったよな？」
相棒の問いかけを聞くとプルプルと震え出し大声でこう言った。
「無視するんじゃないわよ！それより早く拘束ときなさいよ！私の力を持ってして破れないなんておかしすぎるでしょこの鎖！」
「竜人族だよな？」
「そうよ！産まれも育ちも竜人族よ！誇り高き竜人族なんだから！答えたから拘束ときなさいよ！」
「暴れたら殴り飛ばすからな」
「わ、わわ、わかってるわよ！」
相棒のアイコンタクトで察した俺は魔法を解除する。
相棒はやれやれといった感じでため息をついていた。
「あの……話についていけない」
「大丈夫だルミリア、俺もよくわからない」
「「ははは」」
俺とルミリアは相棒と爆殺さんを眺めがら遠い目をして乾いた笑い声をあげた。
「死になさーふがっ！」
「暴れたら殴り飛ばす、そう言ったよな？」
「なんでよ！なんで私の多重結界が発動しないのよ！」
「あ、それ俺のせいかも」
みんな忘れてるかもしれないけどここ俺の魔法で作った世界だからそら魔法とか使えないわけよ。
流石に、ほら暴れられても困るし魔法は……ね？
「あぁこの精神世界とやらのせいね！えいっ！」
「おい爆殺馬鹿野郎なにしてる」
「この精神世界を乗っ取るわ！ちなみにもう半分は掌握したわ！」
「でたらめだな始まりの魔王！」
精神世界で魔法使えないようにしてる筈なのに魔法使ってるししかも乗っ取ろうとしてるし。
いやまぁ阻止するけどさ。
「よーしあと少しで……えっ⁉︎なんでよ！私の魔法が塗り替えられたんですけど！」
「いやぁでたらめすぎるでしょ、まぁもう無理そうですけど」
「あんたの方がでたらめよ！ゼロイービルの名を持つ私の魔法を塗り替えるなんて！」
そのゼロイービル？気に入ってるの？完全に厨二……おっと何故か凄く睨まれてしまった。
相棒が耳元で「あいつうざいからもう一回拘束してくれ」と言われたので拘束します。
足元から無数の鎖が現れ爆殺さんを拘束しようと動き出す。
「そう来ると思っていたわ！そう簡単にゼロイービルの名を持つ私のひやぁ！」
足元から現れた鎖を見事ジャンプで避けた爆殺さんは天井から出てきた鎖に捕まり再び拘束されましたとさ。
この人、力はデタラメなのに天然というかおっちょこちょいっていうか……その、残念魔王？
「残念魔王？……そんな……そんな」
「やば、怒らせたかな」
「そんな酷いこと言わないでもいいじゃない！うぅ」
泣き始めた。
わんわん大声で泣き始めた。
いやまてよ、鎖で雁字搦めにされて泣いてる……やばい鎖が触手に見えてきた。
「そろそろ教えてもらってもいいかな」
「ご、ごめんルミリア。そういうことなので教えてください相棒」
「相変わらずあいつはうるさいけどまぁいいか」
相棒は横目で爆殺さんを見ながら話し始めた。
「率直に言ってルミリアはあそこのバカの子孫だと思われる。確かあいつの魔法に根元転生というのがあってな、肉体が朽ち果てても血の繋がる者にのみ精神体で繋がることが出来るとかそんな感じの魔法でな。多分あいつはルミリアが気に入ったんだろうよ、ルミリアが強くなったのもあいつが力を与えてるからだと思う」
「ルミリアのご先祖様？になるのか？」
「あぁ」
破天荒すぎるだろ、ん？いやまてよ、何か見落として……ルミリア魔王の子孫じゃねーか！
「ルミリアは魔王の血を受け継いでる、そういうことか？」
「殆ど血は薄れてるだろうがまぁそうだな」
「それってルミリアが狙われる理由と関係ありそうじゃないか？」
「あ……おまえさん冴えてるな」
ポン、と手を叩いた相棒は鎖で雁字搦めになっている涙目爆殺さんの方へと歩いていく。
「うぅ、なによ」
「賢者についてなにか知ってることあるか？」
「賢者？あぁあのいけ好かない頑固な老害共ね、あいつらなら昔我々と共に世界を征服とか君の力は素晴らしいとかめんどくさかったから国ごと滅ぼしたわ」
「おぉ、そうか」
相棒は頭を抱えながらこちらへと戻って来る。
「なんか征服とか聞こえたけど……」
「凄く高い確率で……あいつのせいだ。あいつがやらかしたことでルミリアが狙われてる可能性がある」
「えぇ……ル、ルミリアはどう思う？」
「私？」
ルミリアは「うーん、うーん」と数秒悩んだ後頭を斜めに傾けこう言った。
「今日のご飯はなんだろうね！セラフィ！」
話についていけていないようだった。
「ルミリアは何が食べたい？」
「甘い物食べたい！」
「じゃあ今日はユスティシーに頼んで甘味を用意してもらおうか！」
「やったー！」
「それじゃ戻ろうか」
「うん！」
俺は魔法を解除した。
森の中とは言い難い程視界が開けていた。
流石に森がかわいそうなので元に戻しておいた。
既に相棒の姿はなく俺の中に戻ったようだ。
「よし、帰ろうか」
俺は転移魔法を使い魔王城へ転移した。
「私の事置いていくなんてどういうことよー！」
精神世界で今にも泣きそうな声が木霊した。
