八十話 爆殺馬鹿野郎、だそうです
とほほ、大変長い期間空いてしまい申し訳ありせん。
ゲフッ( ゜∀゜)
「なぁ相棒、ルミリアのことどう思う?」
『エグい』
とある魔界の森の中に二つの人影あり。
片方は森の中を異様なスピードで駆け抜けていく。
もう一方はその異様なスピードに負けず劣らずのスピードで木々をなぎ倒しながら追いかける。
森の生物は地面に深く潜ったり大空へ飛び立ったり物陰に身を潜めて《災害》が通り過ぎるのを待つ。
正直、ルミリアにここまでの力があるとは。
いくら病気とはいえやり過ぎなのでは?と思えるほどの被害を受ける森。
オレオモウ、モリカワイソウ。
『それにしてもおかしいな、病気は普通弱るはずなんだけどな』
「言われてみればそうかもな〜、でもなんで俺と同等のスピードで木々をなぎ倒しながら迫りくる化け物になってしまったのかご高説願いたいね!」
一瞬でも気を緩めてしまえば木のように木っ端微塵にされるに違いない、本当に怖い。
「なぁ相棒、逃げ回るだけじゃらちがあかないしどうにかして止めないと愛しのルミリアがかわいそうじゃないかい?」
『じゃあ止めてみろよ今すぐに、無力化出来るならそもそも逃げてないだろ』
「そうでしたそうでした」
そんな事を言っても解決にはならないので行動だ。
転移魔法を使ってルミリアのすぐ後ろへ転移する。
心は痛むが強く背中を押し体制が崩れたところですかさず抑えにかかる。
どうやら成功したらしく地面に押さえつけることができた。
まぁ全力で押さえつけてギリギリなんだが。
そしてこの時間を使って何かしらの解決法が無いかを模索する。
病気なのだからワクチンやら薬を投与すれば大丈夫だとは思うが肝心の薬がない。
だがいくら病気で正気じゃないからってルミリアに怪我をさせるのは気が引ける。
でも……あっ、大分使ってなかったあの魔法を使えばゆっくり考えられるじゃないかっ!
「ワールド オブ イスプリット」
今までにないくらいゴッソリと魔力を使ったようで若干の倦怠感はあるがまぁ大丈夫。
そっと目を閉じ俺とルミリアは二人だけの精神世界へと移動した。
▼▼
「よしっと、これでじっく……へがぼごっ!」
じっくり考えられると口にしようとしたところでルミリアの強烈な右フック。
顎が砕かれ頭蓋骨の半分が壊滅状態に……まぁ精神世界だしすぐ治るんだけどね。
「気を取り直しがぼげごっ!」
気を取り直させてはくれないようだ。
ルミリアに目をやると光悦した表情で頬を赤く染め見たことのない笑顔を浮かべていた。
いつからそんなドSにっ、とこのままじゃ殴られ続けてしまうのでっと。
「ラオム イスプリット」
俺のイメージによりルミリアが鎖で雁字搦めに拘束される。
普通なら破られて終わりだろうがそこは俺の精神世界、術さえかけてしまえば俺の思う通り。
もちろん痛みは消しておりますとも!
「というわけで……ぇえええええ!」
「ん?どうした相棒、俺の方見て」
「なんで実体化してんの⁉︎」
「うわっ、精神世界だからじゃねぇのか?まぁこうやって会うのは初めてだから違和感しかねぇな」
「激しく同意!」
改めて思うけど自分で自分を見るのってなんてホラーだよ。
髪の色とか違うけどほぼほぼ俺だからな。
そのうちドッペルゲンガー、お前は死ぬとか言われないかな。くわばらくわばら。
「じーー…………」
「ルミリアが急に落ち着いたんだが」
「お前さん、なんかしたか?」
「いや、なんもやってないけど……それよりすごいジト目で見つめてくるんだけど」
じーー、じとーー。
お互いに無言の静寂が精神世界を包み込む。
先に口を開いたのはなんとルミリアの方だった。
「なによあんた、私の顔になんかついてるわけ?」
「ルミリアこそ俺の顔に……あんた?え?」
「あんたはあんたよ、目を覚ましたかと思えば目の前に顔面があるし粉砕したはずなのにすぐに治るし。あんた一体何者よ」
「ルミリアじゃ……ない」
完全に忘れられている相棒はため息をつきながらあぐらをかく。
いやまて、誰だよ。ルミリアじゃないのは確かだ、ルミリアは俺のことを《あんた》なんて呼ばないし。
姿は完全にルミリア、だが中身はルミリア以外の何者か。
なにがどうなってこうなった。
「ルミ……君は誰だ?」
「最初に聞いたのはこっちなんだから先にあんたが答えなさいよ、それが礼儀ってもんでしょ」
「俺はセラフィムという」
「私はノルフェ セルリアス 聞いたことくらいあるでしょ?」
「「え?」」
俺と相棒の声が二重に重なった。
ノルフェ セルリアス?誰、全くもってこれっぽっちも微塵も知らないんだが。
相棒は聞いたことがあるのか驚いた表情のまま固まってしまった。
「なんというか、知らないんですけど」
「知らない⁉︎始まりの魔王ノルフェを⁉︎ゼロイービルの二つ名を持つ私を知らない⁉︎」
「魔王⁉︎知らねぇよ!始まりの魔王さんがなんでこんなとこいるんだよ!」
「知らないわよ!目が覚めたらここにいたんだから!」
魔王がルミリアに?じゃあルミリアは一体どこにいったんだ?本人は目が覚めたとか言ってるし故意があって出てきたとは考えにくいな。
しかし……分からない。
惨状に頭を悩ませていると相棒がトントンと俺の肩を叩いた。
「これはあくまで推測だが、最初からルミリアの中にこの爆殺馬鹿野郎が宿っててそのルミリアが病気で精神に大きく乱れが生じて薄かった馬鹿野郎が表に出てきたと考えてる」
「ば、爆殺馬鹿野郎?」
「な、なななんでその名前知ってるのよ!その名前知ってるの数えるくらいしかいないんだけど⁉︎しかも野郎じゃないわよ!立派なレディよ!」
爆殺馬鹿野郎て、魔王なのに馬鹿野郎とか呼ばれてるのか。そうかそうか可哀想な子なんだな。
とはいえ相棒は何かしら知ってるみたいだし相棒の考えもあり得るかもしれない、俺に相棒がいるようにルミリアに爆殺野郎がいたという話。
推測の域を出ないけどそれ以外に思いつかないのも事実。
「爆殺馬鹿野郎はどうでもいいがルミリアがな……と言うわけでお前さんよ、ルミリアに少し試したいことがあるんだがいいか?」
「痛みは感じないようにしてるし全然いいけど……なにすんの?」
「まぁ見てなって」
相棒は拘束されたままの爆殺さんの腹に目掛けてパンチ。次の瞬間口に手を突っ込んで何かを引っ張り出した。そう、魂的な何かを。
どっせーい!なんてことしてんの!魂出ちゃってるじゃん!ん?精神世界だからいいのか?
ーーヒュルヒュルヒュル、ポンッ!
次の瞬間、拘束されたままで痛くないはずの腹をさする爆殺さんと別に全く同じ姿をしたルミリアがいた。
んんん?
「ん、あっセラフィーおはよー」
「「「…………」」」
呑気な挨拶、どうやら本物というとなにかおかしい気もするがルミリアが戻ってきたようだ。
「えっとセラフィーが2人……あっ、相棒さんかっ。どうも」
「おおうこちらこそ?」
「えっと一応聞くけどこの縛られてるの私、だよね?」
「「「うん」」」
流石に分かりますよねー、逆に分からなかったらそれはそれで怖いけど。
事情くらいは説明しないとな、分からないことだらけだけど。
「えっとこの人は爆殺……ノルフェ セルリアスさんです」
「えっとこんにちは」
「こんにちはノルフェさん、私はルミリア セルリアスって言います。あれ?同じ家名だ」
何気ないルミリアの一言にルミリア以外は全員凍りついた。




