六十四話 観光するようです
「へ?……観光?」
「そうじゃ!我と観光するのじゃ!そしたらきっと楽しいのじゃ!」
「私のお婿さんに手を出すなー」
「私と行くよね?セラフィム君!」
ツンデレ魔王とロリ魔王、活発系魔王が顔をグイッと顔を近づけてそう言った。
「じゃあ……全員で」
「ひどいのじゃー!横暴なのじゃー!」
「むむ……これはゆゆしきじたい」
「セラフィム君は女の子の気持ちわからないんだね……ふふ」
「だって……1人を選んだら2人に殺されるし選ぶ時点でルミリアに殺されるし……デッドオアデッドだよ……ルミリア早まらないで!その右手の火を消して!今すぐに!」
ルミリアの方へ振り返ると片手をワナワナさせながら逆の手から炎が立ち上がっていた。
「先が思いやられる……」
セラフィムはポツリとそう零したのだった。
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「結局全員来てるじゃん……ま!いいけどね!」
一行が訪れたのは、魔王城を出てすぐにある町。
ここは魔王城があるという事もあり色々なものが豊富に取り揃えられているという。
「どうする?観光って言ったって俺分かんないよ?修行ばっかりやってたし」
「安心するのじゃ我が案内するのじゃ!」
「魔王様出てきたらビビるんじゃねぇの?そんな簡単にホイホイ歩いちゃダメなんじゃ……」
「昨日もお散歩に来たのじゃ」
「…………」
そんな簡単に出歩いていいのかね……一応、魔王様なんだから引きこもって「フハハハ」みたいな笑い方するんじゃ……しないか。
「じゃ!案内頼むぞユス」
「任せるのじゃ!」
こうして、いつものメンバーに魔王が加わった謎の10人組はユスを先頭に観光を始めた。
「あれ、レティスがいないぞ?」
「レティスならあそこに」
クラークの指差す方向を見るとレティスは、
買い食いしていた。
あーね。お腹すいたのね。
こちらに気づいたのかレティスはトコトコとこちらに戻ってきた。
「はい……あげる」
「へ?俺に?」
「おいしいからセラフィムにも」
「おっ!じゃあお言葉に甘えて」
もぐもぐ……うまぁ〜。なんで魔界の食べ物ってこんなに美味しいのかね。不思議だよ。
「セラフィ!これ美味しいよ!」
「むぐっ!…………もぐもぐ。あっ美味しい」
「でしょ!もぐもぐ」
「むむ……中々のやり手……セラフィムに食べさせた後に食べて関節キスを狙うなんて」
「…………‼︎」
「狙ってたの?いや別に嬉しいんだけどさ」
「…………狙った」
関節キスなんて考えるんだな……やばっ、なんか興奮してきた。普段そんな事しないからギャップ萌えしたのかね。
「セ・ラ・フ・ィ・ム君!これ美味しいから一口あげるー!」
「ありがと……もぐもぐ……これも美味しい」
「ご褒美にホッペにキスしてね!」
「はいはい……っておい!何騙そうとしてるんだよ!危うく流れでやっちゃう所だったじゃないか!」
「気づいちゃったかー」
「気づくわ!」
サナの小悪魔な性格なんなの?惚れるわ!
「「ふふふふふ」」
「……⁉︎」
「セラフィムには一度痛い目を合わせる必要があるようじゃ」
「そうだね。セラフィは1回懲らしめないと」
「まてまてまて!今の俺被害しゃぁ!」
ユスとルミリアの魔法が直撃し後方へと吹っ飛んだ。
いてててて……あっ痛くないわ。
「危ないよ!いきなり魔法ぶち込んでこな……」
「「ふふふふ」」
「ちょまっ……」
この後俺がユスとルミリアにこってり絞られたのは言うまでもない。
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「もう無理……お腹いっぱい」
「少食だねぇセラフィム君。どれもういっちょ」
「クラーク助け……」
「セラフィムがかわいそうだぞ?やめてあげな」
「嘘だって!嘘嘘」
「うぷっ……出来ればその脂たっぷりのお肉を俺の視界から消してくれると……見てるだけで吐きそう」
「じゃあ私がもらうーパクッ」
サナが食べようとした瞬間、レティスが口を大きく開けてパクリと食べてしまった。
「セラフィム様大丈夫ですか?」
「大丈夫か?ハルバート」
「アンネロッタにファミスタじゃん……そういえば気になったんだけどさ?ずっと2人でいたけどなんの話ししてたの?」
「私が剣術以外にも武術を嗜んでいまして、ファミスタ様にも武術の心得がおありでしたのでそのお話を」
「この嬢ちゃん中々の出来よ。俺とまではいかないが育てれば俺ぐらいにはなるだろうな」
「ファミスタがそこまで言うってすげぇな」
ファミスタに体術のみで戦うなら相棒じゃないと勝てないもん。相棒今何してんだろ……
『呼んだか?』
『焦ったぁ……いきなり出てきたな』
『お前さんが呼んだんだろ』
『まぁ……そうだ!アレ上手くいきそうか?
アレ使いこなせる様になったらむっちゃ強くなれると思うんだけど』
『お前さんと俺の意識の同調が課題だな……
それ以外はほぼ大丈夫だ』
『さっすが相棒!』
『ふっ……そろそろ切るぞ』
『はいよ』
相棒との会話が終了する。
セラフィムは魔界での修行中に相棒と色々あり意識を手放さず念話で話すことが出来るようになっていた。
アレが完成すればなぁ……
「セラフィー!こっちこっち!ボーッとしてたら置いてっちゃうよ?」
「何をしておるのじゃ!早くくるのじゃ」
「セラフィムそろそろスリスリ」
「セラフィム君置いてっちゃうぞ?」
魔王達が呼んでいる。
まぁ……アレの事は気長に待つか。
「いまいくー」
セラフィムは少し早歩きでみんなの方へと向かった。




