<第33話>パパになるのは無理だけど
「パパになるのなんか無理だって!」
拓途は、呆れたように笑う。
「それより、俺らが今朝やったみたいな、ああいうハグみたいなの、毎日したい。あれをやるときに、はるちゃんが一緒にいてもいいだろ?」
拓途は、私だけじゃなくて、娘のはるにも愛情をこめて、毎日ギュッとハグしてくれるつもりなの?
そうか! 大事なのは、『パパ』っていう立場になることじゃなくて、はるをかわいがってくれるかどうかだよね! 拓途ってば、はるのことも、ちゃんと愛してくれていたんだ。
嬉しいよ。
胸がじーんと熱くなって、涙があふれる。
「拓途が……そんな風に思っていたなんて」
私は、彼を見上げた。
拓途は照れているのかな? 困ったような表情をしている。
「いやっ、あの……どうしよ? 俺、何かまずいこと言った?」
拓途は、あわてているみたい。
「はるちゃんとイチャイチャするんだったら、俺も混ぜて欲しいなって思っただけで」
まるで言い訳でもするように、ボソボソと小さくなる彼の声。
「嫌?」
拓途が、不安そうに私の顔を覗き込む。
私は首を横に振る。
「違う。嬉しいの。胸がじーんとしちゃって」
そう言ったら、また涙があふれた。
拓途はさっき、はるが描いた絵にはぜんぜん興味なさそうだったからね。高校生の彼に、父親らしいことを期待するのは無理だなって、がっかりしちゃったの。
でも、愛情のかけかたは、人それぞれ違うんだってことに、今、気がついた。
拓途が、そのことに気づかせてくれたんだよ。
結婚なんて形式にこだわらなくてもいい。拓途と私とはる、3人のやり方を上手く混ぜこぜにしちゃって、じっくりとパズルの絵を仕上げるみたいに、家族のかたちを作っていけばいいんだ。
また拓途に、感動させられちゃった。
彼はいつも、私のちっちゃな思い込みをぶっ壊して、大事なことに気づかせてくれるの。いつか壁にぶつかっても、拓途と一緒にいれば、壁を乗り越えるどころか、壁なんかぶっ壊せちゃうような気がする!
私には、拓途がいなくちゃダメなんだ。




