拓途視点【その25】 なぜ、母ちゃんから電話が?
俺はティッシュを鼻に詰めて、ボーッと上を見てる。
ここは、学校の保健室。授業中にぶわっと鼻血吹いて、なかなか止まんないもんだから、先生に連れてこられて、休んでろって言われた。
もう血は止まったけど、もうちょっと授業サボるか。保健の先生、職員室に呼ばれてて、今はいないし。
それか、早退しちゃう?
なつは、今日、仕事が休みって言ってたし。なつがヒマなんだったら、今朝のやつ、またやりたい。時間のある限り、ずっとやりまくりたい!
なつをギューッて力込めて抱いて、そのあと腕の力をゆるめたときに、反発で胸がぽよんってなる。あの瞬間がたまらん。ギュッと抱いて――放して、抱いて――放して。あれは、何回やってもいいよ。一生やってても、たぶん飽きないと思う。
RINEで、なつに、ヒマなのか訊いてみるか!
俺はポケットからスマホを出す。
そしたら、急に着信音が鳴った。
「うおっ!」
びっくりするじゃん! いきなり電話かかってきたぞ。画面に、知らない番号が出てる。誰から?
出ないで無視しても、ずっと鳴ってて切れない。着信音を鳴らしっぱなしだと、まずいな。うちの高校、ホントはスマホ持ってくるの禁止なんだ。先生に見つかると、めっちゃやばい。これが鳴ってる間に、もし保健の先生が職員室から帰ってきたら、最悪の場合、スマホ取り上げられるかも。
俺さ、授業中にスマホ見てて、担任に取り上げられたことあるんだ。あのとき、反省文とか書かされて、帰りめっちゃ遅くなったし。
今日は、絶対に早く帰りたい。
どうしよ? 相手が誰だかわかんないし、もう切っちゃおうか。そんなこと思いつつ、スマホを見てたら、画面の上へティッシュが落ちた。俺が鼻に詰めてたやつだ。うわっ、画面に血ついた!
「あっ、やべっ」
俺はあせって、手でスマホの画面をこする。
「もしもし、なつ?」
スマホから、女の人の声がした。
しまった! 画面を触ったせいで、電話つながっちゃった。
「なつ、聞こえているの? お母さんだけど」
なつって言った? まさか、俺の知ってるなつ?
電話かけてきたのは、なつの母ちゃんか?
もしそうだとしても、俺の番号を知ってるはずない。なつの母ちゃんに会ったことないし、1回も電話でしゃべったりしてないのに。
それとよくわかんないんだけど、なつに連絡取りたいのに、なぜ、俺のスマホへ電話かけた?
「あの……」
俺は、しゃべってみた。




