拓途視点【その12】 エロい危険人物扱いか!
【お知らせ】
男性目線のエロ表現が出てきます。嫌いな方はすみません。
「よっ! あれから彼女とうまくいった?」
頭の上から、女の声がした。
俺は自分の家の前で、ちょうど自転車降りたとこ。
2階のベランダから手振ってんの、カナちゃんだ。家へ先週も来てた、俺の親戚のオバさん。あんときは――なつが連絡くれないんで俺はめっちゃ悩んでて、カナちゃんに最強のアドバイスもらったんだよな。
あれからいろいろあったけど、今日は一応、なつとは仲直りできた。
「うん。まあな」
なつに避けられたのは、俺が何かをやらかしたせいじゃないってわかった。なつは、俺の前につきあってた男とヤッてたことを気にしてたっぽい。男が初めてじゃないって、俺にバレたら、態度コロッと変わるんじゃないか? 即フラれるって思ってたらしい。
そりゃ、嬉しくはないし、相当ダメージは受けてるよ。
『ハダカで、股を……』
って、なつの口から聞いて、想像したさ! 悪いか! でも、俺、女のハダカまともに見たことないし、大事なとこには思いっ切りモザイクかかってたけどな! そっから先は、自主規制したぞ! なつが他の男とどーゆーことしたとか、今は考えたくもない。
「早く入っておいで! ホーラクの肉まん、買ってきたよ」
カナちゃんが、ちょいちょいっと手招きする。うおっ、555の蓬楽! あの肉まんは、土産の定番だもんな。俺のめっちゃ好きなやつ。カナちゃん、わかってんな!
まあ、悩んでもしょーがないことだってある。
俺は、家の前へ自転車停めて、中に入った。
☆
「ぎゃはは」
女ふたりが、ゲラゲラ笑ってる。ひとりは、カナちゃん。その隣は、サツキ。俺の姉だ。
台所にあるテーブルで、ふたりは俺の向かいに座ってる。
今日はふたりとも仕事休みで、一緒にアウトレットとか、スーパー銭湯とか行ったらしい。サツキが明日でハタチになる祝いだって言って、ランチに、くそ高いパスタ食ってきたんだと。
俺の誕生日、4月だけど、そーゆーイベント何もなかったぞ。まあ、高校の入学祝いもらったし、その金で、スマホ買ったんだけどな。
それでいっか。蓬楽の肉まん、ウマイし。
「ウソだ! あんたの胸、そんなに大っきくないじゃん! これの一回りは小さかったでしょ」
カナちゃんはキャッキャ笑いつつ、肉まんふたつ持って胸に当てた。そして、肉まんをプニュッと寄せたり上げたり、貧乳対策についてアツく語る。女子トーク全開。俺がいるのは無視か!
なつのおっぱい、たぶんあれよりデカいかも。だけど、俺コーフンしすぎて、記憶ぜんぶ飛んじゃったし。なつを後ろからギュッと抱いたあと、自分がどこをどう触ったのか覚えてない。
でも、肉まんと触り心地ぜんぜん違うってことはわかるな。どっちもふわっと柔らかいけど、なつの感触は何つーか……もっと……押し返してくる感じが……。
「キャー、コイツ手つきエロい! 肉まん揉んでるよ!」
サツキが、俺の手元を見て、叫んでる。
やばっ。俺、無意識に、親指と人差し指で、出っ張りのとこつまんでた。
☆
女ふたりにヘンタイ認定されたんで、俺は2階へ走って逃げた。
自分の部屋で、ベッドのわきにカバン放って、寝転ぼうと思ったら、布団の上に見たことないものが置いてある。分厚い……本? 白黒の写真が載ってる。アルバムか? ずらっと何十人も並んでる集合写真。こりゃ、卒アルだわ。
だけど、全員女ばっかり。誰のやつ? 姉のサツキは、俺と同じ高校出たもんな。うちの学校、こんな制服じゃない。タータンチェックのスカートに、濃い色のベスト。あれ? この制服、なつの着てるのとめっちゃ似てないか? 白黒写真だから、何色かわかんないけど。
このアルバム、カラーページはあるのか? 俺がページめくろうかと思ったそのとき、デカいノックの音がした。
「ちょっと! あんた今、ちゃんとパンツ履いてる? ひとりでエロいことしてないよね?」
カナちゃんの声だ。
「してねえわ! つーか、制服着たまま!」
俺は叫んで返す。
「じゃあ入るよ」
バーンとすごい勢いでドアが開いて、カナちゃんとサツキが入ってくる。サツキは、腰めっちゃ引けてるな。カナちゃんの腕にしがみついてる。俺、どんだけエロい危険人物扱いなんだ!
「あのね、それ、ベッドの上にあるやつ。卒業アルバム取りに来たのよ。あんたの部屋の押し入れから引っ張り出したまま、忘れちゃって」
カナちゃんも、えらいびびってんな。つま先立ちになってるぞ。
「この卒アル、カナちゃんの?」
俺は、渡してやろうと思って、アルバムつかんで差し出す。
「ギャー! 触んないで」
カナちゃんは、手引っ込めた。
卒アルは、裏返しになってバサッと床に落ちる。表紙に、『KEIAI 1997』って書いてあるのが見えた。
「何してんだ」
俺は、あきれつつ、卒アル拾う。雑に扱うから、ページの端、折れただろ。折れたのは、個人写真のページだ。生徒手帳に貼る写真みたいなのが、いっぱい載ってる。
神崎奈津
なつと同じ名前が見えた。
「え?」
写真も、めっちゃなつに似てる。おい。えらいそっくりだな。本人か? 似すぎだ。この人。
だけど、この卒アル、1997年ってことは、20年くらい前だよな? もしかして、なつの親とか? でもな。親子で名前一緒って、ヘンだよな。
「……この人、知ってる?」
俺は、カナちゃんに、その写真見せた。
「え、何? かんざきなつさん? うーん、わかんないな。クラス違うし」
カナちゃんは、首かしげてる。
「神崎……奈津さん?」
サツキが、卒アルを覗いてくる。
「あっ、たぶん知ってるわ。別人かもしんないけど、うちの店に、同じ名前の人がいるよ。生まれはこの町だって言ってた。顔も、わりと似てる」
サツキは、町内のスーパーで働いてる。
「30代のシングルママさんでね。そういえば、年齢もカナちゃんと同じくらいだわ」
30代ってことは……やっぱり、なつの親か?
「神崎さん、知ってるの?」
サツキが、訊いてきた。
「本人じゃないけど、もしかしたら、知ってる子の親かも」
俺は答える。
「あんた何言ってんの? キモッ! ロリコン? 神崎さんの子どもって、2才ぐらいの女の子だよ?」
サツキは、めっちゃ高速で、後ずさりした。




