拓途視点【その11】 まさかのカミングアウト
「わたし、拓途に言わなきゃいけないよね」
なつの声が、ふるえてる。
ついに、このときが来た。俺となつがつきあいだしてから、まだ2週間経ってないこのタイミングで、俺、フラれるんだな。
ここ1週間ぐらい、なつの反応おかしい。避けられてる感じがした。なつが俺を避けるようになったのは――先週の、あの日からだ。ここの公園で、なつと妹のはるちゃんに会ったとき。
避けるっていうか、帰るときに、なつは俺から逃げてたっぽい。妹を抱いたまま、信じらんないくらいの速さでダーッと走って行って、一瞬でいなくなっちゃうし。
それと、あの日の夜から、RINEで話すときも、なつは、反応めっちゃ薄くなったと思う。
なつの方から、話ぜんぜん振ってこないんだよ。妹のことをちょっと話した。でもそのあとは、ほとんどしゃべんない。
< うん
< へー
RINEしてる間、なつからの返事、そんなんばっかり。
俺の話がつまんないのかと思って、なつの学校のこととか、いろいろ訊いてみたけど。
< 明日の朝 寝坊しちゃうと 大変だから
< ごめんね! おやすみ!!
いつも、話ぶった切られて終わり。
俺はあきらめたくなくて、なつが妹を保育園に迎えに行くタイミング狙って、学校ある日には、毎日、なつに会いに行ってた。自分でも思ったよ。ストーカーか? やばい奴だなって。
今日もさっきから、なつは俺の前で、めっちゃあせった感じで、オドオドしてて。俺、好きな女のこと困らせてる自分がホント嫌んなった。
それで俺、なつにきっかけ振った。俺をフってくれるように。
なつは俺に、『来んな』って言えなくて困ってると思ったんだ。なつって、ちょっと天然っぽいとこもあるけど、じつは中身しっかりしてて大人だから。
『なつは、中身が大人だもんな。わかってるよ。俺を傷つけたくなくて、言えないんだろ?』
そしたら、なつは、ポロって泣いた。
『ごめんなさい』
――そのあと、なつが落ち着くまで、俺らは公園のベンチで、黙って座ってた。
そして今、なつがふるえる声で、別れ話をし始めたんだ。
「いいよ。俺、覚悟できてる」
俺は大ウソついて強がってみる。でも、めっちゃ声ふるえてた。
「じゃあ、正直に言うね」
なつは、思いつめた顔してる。
「わたしは、大人なの。それを知ってても、これまで通りに、仲良くしてくれる?」
なつが言った。あれ? 別れ話じゃないのか?
これまで通り、仲良くって……なつが、そう言ったよな? 俺まさか、現実を認めたくなくて、幻聴が聞こえた?
「ちょい待って。それ、もう1回、聞かして」
俺はあせって訊き直す。
「あのね」
なつはゆっくりと、俺を見上げた。
「わたし、大人の女なの」
「拓途が思ってるような、純粋な女の子じゃないの」
なつの目に、ぶわっと涙が溜まってく。
「ごめんね。見た目と違って、わたし、中身は大人で……女だけど」
大人で……女? なつの言ってることが、俺よくわかんないぞ。
「高校生だって、ほぼ大人だろ? たいして変わんないし、別に泣かなくても」
俺はどう反応していいか困った。
なつは、何がしたい?
「わたし、しょ……じょ……じゃない」
なつが、しゃくりあげた。
あれ? なつは今、泣きながら何か言ったよな?
しょ……じょじゃない。
しょじょ、じゃない。
処女じゃない?
え? え? えっ? 処女じゃない?




