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始まり

 目を開けると、青い空が広がっていた。

 車の音も、人の気配も感じない。

 身体を起こし、周りを見ると、ゲームの序盤で出てくる定番のモンスター、スライムがいた。

 俺はそれを見て、ここが異世界なのではないかと思った。


 ステータスオープン


 期待を込めて唱えても反応がない。そう思った瞬間、ポケットのスマホが震えだした。

 慌てて取り出してみると、圏外だったはずの画面に通知が一件。


 ステータス


 名前 田中賢一 

 Lv 1


 筋力 5

 体力 5

 敏捷 5

 魔力 5


 戦闘力 20


 本当に出てきた。

 ...まじで異世界なのか?


 さらに下へスクロールする


 異世界でやりたい100のこと

 達成数 0 / 100

 最終報酬 ???


 俺は画面を見て固まった。

 この題名には見覚えがあったからだ。


 中学の頃。

 俺はラノべにハマり、毎日のように一冊のノートを書き続けていた。

 題名は『異世界でやりたい100のこと』


 『魔法を使う』

 『ドラゴンの背中に乗る』

 『モンスターを倒す』

 『エルフと友達になる』

 『世界を救って英雄になる』


 今思うと幼稚な内容ばかりだった。

 でも、楽しかった。


 現実では、やりたいことがあっても、失敗するのが怖くて挑戦できないから。

 少し偏差値の高い学校を受けようとしても、練習したイラストを投稿しようとしても、喧嘩した友達と仲直りしたいと思っても、好きな子に告白しようとしても、いつも言い訳して逃げてばかりだった。

 ずっとそんな自分が嫌いだった。


 ノートは今、本棚の奥底に眠っている。

 時間が経ち、完全に忘れていた。

 

 でも今、俺は異世界にいる。

 スマホに表示された文字を見て、俺は息を呑んだ。


 異世界でやりたい100のこと

 達成数 0 / 100


 俺は今まで逃げ続けていた。

 でも、ここでなら俺はやりたいことに挑戦できるかもしれない。

 多分ここで逃げたら、俺は一生変われない。


 俺は拳を握り締めた。


 スマホの画面が切り替わる。


 モンスターを倒す

 報酬:戦闘力上昇


 モンスターを捜索

 対象 スライム


 スライム Lv2


 戦闘力 15

 推定勝率 60%


 どうやら相手はあのスライムのようだ。


 俺は近くの木の枝を拾う。


 「ぷるん」


 スライムがこちらに向かってくる。


 俺の異世界生活は、ここから始まる。

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