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後編

こうして私は城に連れ戻され、地下牢に放り込まれました。

元々ここに放り込まれていた人たちは恩赦を受けたらしく、当初ここには私と旦那様しかいませんでした。

しかし数日後には遠征に出ていたお父様とお兄様も連れてこられました。

お母様は連れてこられないので無事に逃げたのか?と思っていました。

しかし共産党から派遣された看守が嘲りながらお母様の最期を教えられました。

曰く、街中を逃亡中に別の民衆に囲まれ、護衛騎士を殺された後、乱暴された上で四肢を切り落とされて放置されたそうです。

共産党の幹部が見つけた時には既に亡くなっていたそうです。遺体はこのまま私たちの処刑の時に一緒に捨てる、そう看守は言って高笑いしました。

お父様とお兄様はキレて牢の隙間から手を伸ばしましたが届くわけもなく…看守に高笑いされる結果になりました。

私は…ここに来てから毎晩、婚約破棄の時の夢を見ます。あの時あのままの夢、婚約破棄を撤回してお父様とお兄様をぶん殴る夢、フィリップ殿下と駆け落ちして逃げる夢…

どうやら私はあの時、婚約破棄したことを後悔しているようです。いや、今こうなっているから後悔しているだけなのでしょう…

後悔してももう遅い、過去に戻ることはできません。私はもう運命を受け入れることしかできないのです…



「出ろ」


ここに入れられて数日、看守がいきなり牢の鍵を開けてそう言いました。しかしそれは自由にするためではありません。目の前には今までの服装とは違う雑多な恰好をした兵士達が武器を持ってこちらを睨んでいます。

看守はお兄様とお父様の牢にも行きました。しかし二人は出ることを拒否しているようです。言い争う声がここまで聞こえてきます。最早抵抗は無意味なのに…

数分言い合っていたでしょうか。苛ついた兵士が数人ずつ牢に入っていきます。

少し経って、引きずられながら二人は出てきました。聞こえてきた音と顔が腫れあがっている顔を見るに殴られたようです。


「少しでも歩みを止めるとお前もこうだからな」


ぞっとする笑みで兵士の一人が言います。どうやら私を殴る口実が欲しいようです…


城から出された私たちは縄で繋がれ、市中を引き回されました。石やら花瓶やら投げられ、水を桶からかけられ…

ただでさえ数日入浴もできなかった私たちは更に薄汚れてしまいました。

私たちを傷つける人たちの目は皆憎悪に満ちていて、今にも暴力を振りかざしてきそうな雰囲気を醸し出しています。本格的な暴力をふるわれないのは統制がきちんとしているからでしょうか。

そして私たちはかつて火葬をしていた広場に連れていかれました。

そこにはかつてあった大規模な焼き場が無くなり、代わりに中央の大きな台の上にギロチンが置かれています。

そしてギロチンの隣には首吊り台が設置されていて、そこには……お母様が吊るされています。

捨てる、と看守は言ってましたが、その前に見世物にされるなんて…

お父様とお兄様もお母様に気づき、キレてお母様の方に向かおうとします。それに引っ張られて縄で一緒に繋がれている私は転んでしまいました。かなり強く引っ張られてて痛いです。

そのまま二人は私を引きずって行こうとしましたがそうはならず、即座に駆け付けた兵士が二人を取り押さえ、縄で二人の足を拘束しました、ついでに私の足も縄で縛りにきます。

王族たるもの、足を他人に晒すのはご法度です。抵抗するためにもがきますが、私も殴られ、足を縛られてしまいました。

そのままズルズルギロチンの近くまで三人とも引きずられました。地面の小石やら何やらが当たって痛いです…いつまでこんな痛みに苦しまなくてはならないのでしょうか。

そしてギロチンの近くで放り投げられ、そのまましばらく放置されていると馬の蹄の音と馬車の動く音が聞こえてきました。

やがて私たちの後ろの方で馬車が止まった気配がして、さらに人の歩く音が聞こえてきました。そして私たちの横を通り過ぎてからこちらに振り返ってきました。


「やあやあ、かつての王族の皆様。特別ステージへとよくお越しくださいました」


前回会った時と変わらない胡散臭い笑みを浮かべてこちらに語りかけてくるウラジーミルに対し、お父様が食ってかかります


「無礼者!国王たる私をこのように扱ったこと、後悔するぞ!!いずれアーク王国が我が国を奪還した暁には貴様らなぞ…」


「残念ですが、アーク王国もまもなく陥落しますよ。いやぁ、ここ以上の圧政を続けてくれたおかげで同志の勧誘が簡単でしたね。既に国土の4割を解放していると情報が入ってます」


お父様の言葉を遮りこう語ったウラジーミルは、今までのとは違った嘲りの笑みを浮かべ、小声で私たちに語りかけてきました。


「感謝していますよ。転生してからというもの、貴族派を何とか抑え込んで善政を敷いてきたブルポン王家の方々を処刑して、圧政を敷いてくれて。おかげで楽しく革命を行えました。ここからは私の私による同志の為の理想の国を作っていけます。混乱を作ってくれて、ありがとうございました」


て、転生…時として現れるとされる異世界の記憶を持った特別な存在。

ブルポン王家では保護をし丁重に扱ってましたが、私たちに政権が移ってからは片っ端から処分していたと聞いています。

お父様曰く


「あの連中、頭でっかちかつ私たちに節約しておけ、とほざくのだ。そんな連中はいらん。いう可能性のあるというだけで不要な存在だ」


とのことでしたが、まさか隠れて存在している人もいたなんて…

独白を聞いたお父様もお兄様も呆然としています。かくいう私も呆然とした顔をしていたはずです。

まさかブルポン王家が彼らを厚遇していたのは、こういった可能性を封じ込めるためだったのでしょうか?今となっては確かめようもありませんが…

私たちの顔を見て満足したのか、ウラジーミルはいつもの胡散臭い笑みに戻して、ギロチンの前に向かいます。ここからは見えませんが、歓声が上がるのが聞こえてきます。


「同志諸君、遂にこの日が来ました!悪しき王家を処刑し、新たなる時代の幕開けとなる日が!!」


…私たちは悪だったのでしょうか。いいえ、悪だったのでしょう。私はあくまでも貴族が民を導き、国を豊かにする方が合理的であり、国が発展すると思っていました。

しかし実態は貴族が好き勝手に私腹を肥やす結果に終わりました。私もそれに気づいてましたが、何も手を出せなかった…

どこで間違えたのでしょうか。どうすればよかったのでしょうか。逃がしたあの子はどうなるのでしょうか。あの日に戻ったら私はどうするのでしょうか。

もう私には何もできません。ただあの子の将来に幸があることを願うばかり…


「さあ、同志諸君。誰の首から刎ねましょうか?」


どうやら演説が終わったようです。いよいよ死ぬ時が近づいてきたようです。

こちらへ顔を向けたウラジーミルに対し、お父様とお兄様が慌て始めます


「た、頼む、命だけは助けてくれ。民から搾取してたのは王太子だけなのだ」


「ふざけるな!父上は民なぞ家畜と言っていたではありませんか!!民のための政策を行えるのは私だけだ!!!」


少しでも生きる時間を増やそうとする様は無様で醜いものなのですね…

民が呆れた空気を出しているのが見えなくても伝わってきます。ただ私もここにいる時点で

五十歩百歩なのでしょうけどね


「そうだ、ジャンヌは民から奪った金で大量の宝石を買い漁っていたぞ!ジャンヌこそ民の敵だ!!」


「そ、そうだ!父上の言うとおりだ!!ジャンヌこそお前たちの敵だぞ!!即刻首を刎ねるべきだ!!!」


なんとなく予想してましたが、私に批判の矛先が回ってきたようです。


「宝石を買い漁っていた記憶はありません。ですが民からの税金で外交用の宝石を買っていたのは事実です。最初に私の首を刎ねてそれで気持ちが収まるならそうしなさい」


私はできるだけ堂々とした言い方をしてウラジーミルに向けて言いました。


「ふむ、いいでしょう。貴方から最初に地獄に送り込んであげましょう。兵士よ、彼女をギロチンに固定しなさい」


言うが早いか、兵士が私の元にやってきて、ギロチンまで引きずろうとしてきます。


「一人で歩けます。縄を解きなさい」


私の発言に兵士は困惑してウラジーミルの方を見ます


「どうせ逃げられません。認めます。どうぞ、一人で処刑台まで歩きなさい」


そう言われ、渋々といった様子で私の足と手の縄を解きました。

それを見てホッとしている二人を見て、ウラジーミルは


「ふん、王なのに威厳も意地もないとはね。革命が楽だったわけだ」


と呟くのを私の耳は聞き届けました。

しかし熱気に浮かれている民衆には届いていそうにありません。

この国の行く先は大丈夫なのでしょうか…どうか幸多からんことを願います。

ゆっくり、断頭台の上に上がります。多くの民衆の目が私だけに集まります。その目に映るのは憎悪だけ、恐らくウラジーミルが感情を扇動しているのでしょう。

これは…あまりいい未来が待ってないかもしれません。

そんなことを思いながら私はギロチンに拘束されました。

いよいよ死ぬことになりそうです。人生の最後はあっけないものですね


「王女ジャンヌ、最後に言い残すことはありますか?」


おとぎ話でよく聞くセリフをウラジーミルは言いました。

少し考えてから私は答えました


「特に何も」


ええ、ここで子供の幸せを願う、とか民の平穏を祈る、とか言っても誰にも見向きもされないでしょう。ここはキッパリ何も言わない。これが正解のはずです。


「ふ、殊勝ですね。まあいい、執行人!ギロチンを落としなさい!」


民衆が固唾を飲んで見守っているのが伝わります。当然でしょう、恨んてきた相手がいよいよ死に向かうのですから。

中には私の子と同じくらいの赤ん坊を抱っこした瘦せこけた母親も多数います。


子供…私の子供…


…いやだ、死にたくない!まだ子供の安全も確保できてないのに!!

ここまで強がってた感情が全て消え去り拘束から抜け出そうとした瞬間、私の目線が空を見ていることに気づきました。

ああ、首を斬られたんだ、歓声が上がる中、客観的に感じつつ、私の意識は闇の中に沈んでいきました

これにて完結です!

3話という短い連載でしたがありがとうございました!!

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