第58話 独走
「初日の前半から既に何人かやられたらしい。誰だか知らんが好戦的な馬鹿が紛れ込んでいるようだ」
「そういう考え知らずは最終日に息切れするだけだ。俺たちは高みの見物といこう」
前方に二人組の冒険者の姿が。岩陰に身を潜めて様子を窺う。
どうも協力関係を結んでいるみたい。ルール上は問題なかったはず。
初めから一位を望まなければ、ポイントを分け合えば昇格は狙いやすい。
無駄な戦闘は避けて宝箱の回収に専念する。目的に、守りに徹した動き方だ。
「……倒すとしたら盾を持つ左の人かな」
僕にとってはこういう人たちこそ狙い目だけど。
宝箱から取れるポイントは序盤の内に確保しておきたい。
彼らのような消極的な人たちは後半は隠れて出て来なくなるはず。
一位を狙い激戦となる最終日では相手を探す余裕はなさそうだし。
「あーあ。早く試験終わらないかな。洞窟は湿っぽくて嫌いだ」
「二人だからって油断はするなよ。好戦的な馬鹿が狙って来るかもよ」
馬鹿呼ばわりされてしまったけど。予想は的中している。
向こうは人数で有利を取っているからか、周囲の索敵が甘い。
魔導銃を握り、短剣と盾を脇に用意する。
中距離なので照準器を覗かず命中補正のみで。
相手の息を吸い込む瞬間に、雷光弾を撃ち込んだ。
「ぐぼああああっ」
「えっ、どうし――」
盾を持っていた男の人が壁に強く身体を打ち付ける。
もう一人の視線が仲間に向いた隙に【黒炎龍の短剣】を振るう。
「隙ありだよ」
「ぐあっ、熱っ!」
足元のブーツを斬り付けて火を付ける。
反撃の拳が飛んでくるも体勢が悪く当たらない。
そのまま【アイギスの神盾】を構えて体当たり。
相手を岩壁に押し付けて頭を揺らす。トドメに瓶を用意。
「ぐっ……まさか、お前は……思い出した、暴虐……王か……!」
「かなり痛いと思うけど、我慢してね」
頭に【エリクシルの空瓶】を叩きつけて意識を奪う。
倒れた冒険者は、恐怖に引き攣った顔をして血を流している。
やりすぎたかな。傷口に癒しの水をちょっと塗っておこう。
「よいしょ。鞄の中身を確認させてもらうね」
食料と水はもう必要ないから無視して。
白い札を幾つか見つけた。二人分のポイントだ。
「22ポイント。これで合計が71になった」
冒険者二人を端に置いて。事前に探しておいた安全地帯を目指す。
その道中で宝箱を二つ発見して78ポイントに。目標の100までもう少し。
「ん、あれは……魔導ゴーレム? そういえば途中から起動されるって書いてあった」
煙を放ちながら移動する岩石人形の姿が。
魔塔のフロアボスを参考に造られた魔導生物だ。
地上世界の最先端技術が凝縮されていて。
冒険者の昇格試験などで試験運用が為されている。
下位ランク帯だと小型から中型までしかいないけど。
上位ランクの試験になると、超大型も使われるみたいだ。
「小型が4ポイント。中型が10ポイントだったはず」
魔導ゴーレムの所持ポイントは固定らしい。
小型が二体、中型が一体だ。合計で18ポイントも貰える。
「シューシュー」
「あっ、こっちに気が付いた」
人間と比べても優秀な索敵能力で、僕を視界に捉える。
小型が高速で突っ込んできた。魔導銃は間に合いそうにない。
「早いけど、地形が狭いから誘い込めば……!」
狭い通路に入るとゴーレムの足が遅くなる。
自慢の怪力も壁が邪魔して全力では振るえない。
こういう所では短剣が非常に有効だ。ゴーレムの関節を狙う。
弱点部位に火を付ければ、地上世界の精密な魔導生物は終わりだ。
全身から黒い煙を出して仲間とぶつかり倒れた。
ゴーレムの身体には収納棚があり白い札が入っていた。
「よし、あとは中型だけだね」
「シューシュー」
通路から出ると、中型魔導ゴーレムの目から光が射出される。
炎属性の魔法だ。飛び込んで避けると、壁に黒い跡が直線に刻まれる。
「攻撃力は高いけど、こっちには自慢の盾があるよ!」
炎の光線をアイギスで防ぎながら接近する。
中型のゴーレムは後衛の魔法タイプだったようで。
魔法障壁で防いでしまえばあとは消化試合だった。
関節部に短剣を差し込んで、背中から白い札を回収する。
「ポイントは98だけど。今日はこのくらいで明日に備えよう」
魔導ゴーレムも投入されて。これ以上動くと明日に支障がきたしそう。
狭い窪みの中に入って、簡易的な宿を作る。乾燥パンを口に咥える。
しばらく時間を潰していると【情報板】に反応が。
赤い文字で試験の初日の結果が羅列されていく。
一位98ポイント。二位45ポイント。3位38ポイント。
それぞれの人相と名前もセットで。僕が一位を取っていた。
「やった。二位と43ポイント差の独走状態だ。これで安心して眠れそう」




