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第44話 推薦状

「お帰りなさいロロアさん。よくご無事で戻ってくださいました!」


「ありがとうございます。ヘラさんも、お久しぶりですね!」


「あぁ、また更に男らしくなりましたね。大きな怪我もなさそうでよかった……!」


 ヘラさんがカウンターを回って僕を強く抱きしめてくれた。

 人前でちょっと恥ずかしいけど。それだけ心配してくれたんだ。


 両親のいない僕にとってヘラさんは母親に近い存在で……。

 こんな事を本人に伝えるのは失礼なので、心に秘めておくけど。


「無事に最上層に辿り着けましたよ! 誰一人欠けもいません!」


「こんな短期間で【星渡りの塔】を踏破してしまうだなんて。本当、ロロアさんは規格外です。流石は不倒無血の盾使いさんですね」


「その呼び名も懐かしいなぁ」


 さっそく魔神石を渡して、指輪加工の手続きをしてもらう。

 その間に僕は周囲を見渡すと、冒険者たちがこちらを注目していた。


 以前のような怯えた様子はなく。興味津々といった感じだ。

 四ヵ月以上も地上を離れていたから、噂も完全に廃れたみたい。


 魔塔都市は人の出入りも多いから。流行り廃りも早いんだ。


 地上に戻ってから、僕は一人で冒険者ギルドを訪れていた。

 砂で汚れた身体を綺麗にしたいのだと、女性陣は全員入浴中で。

 僕は男なのですぐ手持ち無沙汰になって、用事を片付けようと思った。


「あっ、忘れるところだった。この魔石の換金もお願いします」


 ヘラさんにキングオーガ、フォルネウス、サラマンダーの魔石を差し出す。

 ちなみにサラマンダーはライブラさんがカナンを倒した時に拾ってきた物で。


 振り返ると、そういえばいつの間にか倒されていた気がする。

 

「なっ、フロアボスの魔石が三つ――しかも【星渡りの塔】最強のフォルネウスまで!? え、えっと五十年もの間討伐者が現れなかった怪物ですよね……私の記憶が確かであれば」


 ヘラさんが頭を押さえて気絶しそうになっている。


「大丈夫ですか……?」


「その、まさか普通に提出されるとは思っていなかったもので……。フロアボスは最上層を目指すついでに倒す相手ではないのですが。討伐隊を組んで、それから念入りに準備を整えて――――あぁ、私の知る常識がことごとく崩されて、熱が出てきそう」


「僕には頼れる仲間がついていますから。大変だったけど。いい経験になりました」


「即座にそれが言えるロロアさんは間違いなく大物ですよ。私がこれまで出会った冒険者の中でも群を抜いています。どうして今まで正当な評価を受けていなかったのか不思議なくらいです」


 魔石三つ分の報酬をギルドもすぐには用意できないらしい。

 フォルネウスの魔石は五十年間誰も手に入れられなかったので。

 改めて魔石の価値を再考、報酬を決定しないといけないのだとか。


 後ろでいつものヘラさんの上司さんが頭を下げて伝えてくれた。

 

「そういえばロロアさんは、冒険者ランクはGでしたよね」


 一通り用事を済ませて拠点に帰ろうとすると、ヘラさんに呼び止められる。


「あ、はい。試験にはギリギリで合格しました。足の速さで評価されたみたいです」


 多分、ユニークスキルも評価の内に入っていそうだけど。


 冒険者には年齢制限のようなものはなく、完全な実力社会。

 何事も結果を重視され、試験結果のランクなんて最たる指標だ。


 酒場でGランクを語れば新参者として扱われるし。

 高ランクなら尊敬の眼差しで見られる。わかりやすい。


 【星渡りの塔】ではこれといって入場制限はなかったけど。

 高難度の魔塔だと、ランク次第で登れる階数が固定されたりもする。


「魔石を三つも提出するGランクですか、逆に詐称しているみたいですね……。もしよかったら私がギルドに推薦しますので、次の昇格試験を受けてみませんか?」


「いいんですか!?」


「ええ、もちろんです。寧ろ、ここで何もしなければ私が優秀な子を手放すのかと上司に怒られてしまいます」


 昇格試験を受けるには、ギルド関係者の推薦が必須となっていた。

 昔は条件がなかったみたいだけど。粗悪な冒険者が増えてしまったとかで。


 推薦状を書くというのは、その人を信頼して将来性を見込んでいる証だ。


 普通は冒険者の方で、自分を売り込んで納得してもらうところを。

 ヘラさんの方から提案してくれた。何だかとても嬉しい気持ちになる。


 僕の実力は当然、エルたちみんなの力があってこそだけど。

 それでも僕個人の事も見てくれる人がいる。感謝でいっぱいだ。 


「ありがとうございます! 必ずヘラさんの期待に応えてみせますね!」


 僕はヘラさんの右手を両手で持って何度もお礼を伝える。


「はぁ……可愛い。若くて、カッコよくて、可愛いって反則……この子の担当になれてよかった」


「はい?」


 ヘラさんはぼんやりと僕の方を見つめていた。

 エルフの純白の肌がほんのりと朱に染まっていて。

 もしこの場にライブラさんが居たら、ポケットで暴れていそうだ。


「いえいえ、何でもありません。では報酬と推薦の件は後日追って連絡いたしますね」


 逃げるように去っていくヘラさんを見送りながら。

 僕は一人の間に訪れてよかったと思った。急いで拠点に帰ろう。

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