第36話 全員集合
「ようやく、雨があがったね!」
雲が晴れて眩い光が落ちてくる。小動物の鳴き声が響く。
あれから洞窟内で二日ほど過ごして、太陽を拝む事ができた。
体調もある程度回復していて、身体を動かす分には支障をきたさない。
「……ますた」
「トロンも久しぶりだね。見た目もちょっと変わった?」
「……へん?」
「全然。似合ってると思うよ」
青と白の光沢がある衣服の腰辺りに新しいパーツがくっついてる。
レアリティが上がったからかな。それとも補助パーツを付けたからか。
擬人化した方にも変化が生まれて、魔導銃はやっぱり他と比べて特殊だ。
熱も下がった頃合いに、僕の腕にくっついてトロンは戻ってきていた。
今日も朝から三人分の食事を平らげて、アイギスに叱られていたばかり。
僕の前にはライブラさん、エル、アイギス、トロン、そしてコクエンが。
「ようやく王の臣下が勢揃いしましたか。こうして並ぶと――アイちゃんが一番大きいですね」
「はひっ、私めも数に入れてもらえるなんて光栄です!」
「……おなかすいた」
「あるじさま、片付けも終わりました! 出発の準備もできてます!」
「はいはい。コクエンはもっと自分に自信を持ちなさい。トロンはさっき食べたところでしょ? エルは相変わらずいい子ね。ライブラは……お仕置きよ」
「あいたたた、ちょっとした冗談ですよ!? 大きな指でつねらないでくださいっ! 妖精虐待!」
「天候が荒れる前に急いで進まないとね。【情報板】では数時間後にはまた降り出すみたいだし」
三十一階から三十五階にかけてまで雨とは逃れられない環境みたいだ。
合間にある晴天も僅かしか持たない。この機会に一気に進んでおきたい。
「ほら全員駆け足! 私は殿を務めるから、コクエンには斥候を頼むわね。エルとトロンは中衛でロロアを守りなさい。足場が濡れているから急ぎだけど気を付けて。転んで怪我なんて恥ずかしいわよ?」
「アイちゃん、指示を出すのは私様の仕事ですよっ!」
「ライブラはロロアの上着の中でお喋りでもしてなさい」
「ふがあっ」
「あはは。この感じも久しぶりだ」
病み上がりだけど元気が出てきた。やっぱりアイギスは頼りになるよ。
「怪我をしてもエルが治します!」
「……ますた、まもる」
「不肖コクエンめが先陣を切らせていただきます! ご主人様がお元気になられてよかったよぉ……」
僕たちは早足で三十二階を駆け抜けていく。
既に道程の半分は超えていたので、次のゲートまですぐに辿り着いた。
三十三階、三十四階も勢いを止めずに強行突破していく。
再び天候が荒れても、僕も二度も同じ過ちは繰り返さない。
「コクエンの消えない炎は便利だね。初めからこうしてもらえば良かったよ」
僕の手元には闇の炎が揺らめいている。
雨でも消えない熱が身体を温めてくれる。
「エルの身体も温かいですよ~!」
「……ますた、ぎゅ」
左右からはエルとトロンがくっついてくれて。
頭にはコクエンが被っていたフードを借りている。
「私めが着ていた頭巾をご主人様が……ぶふっ、興奮して鼻血が止まりません」
「癒しの水! こくえんさん前を向いてください!」
「ごめんなさい、失礼しました。……はっ、敵の気配を察知です」
鼻を擦りながら姿勢を低く構えると、
コクエンが木々を蹴って空中を跳び回る。
潜伏していた半魚人のサハギンを背後から斬り付けた。
奇襲に驚いて飛び出てきた集団を、トロンが撃ち抜いていく。
「ばん、ばん、ばん」
全弾が頭を貫いている。補助パーツが効いているのかな。
元から優れた射撃術が更に向上している。流石は魔導銃本人だ。
こうして魔物に対する攻撃面での憂いは一欠片もなく。
背後にはアイギスが居てくれる。何も考えず先に進める。
「もう少しで三十五階に到着しますが、ここで一つみなさんに朗報です」
「どうしたのライブラさん。もしかしてゲートの手前にフロアボスでも現れた?」
「……簡単に言い当てられてしまうと、面白味がありません」
ライブラさんが拗ねた様子でポケットに隠れてしまった。
フロアボスの待ち伏せか。珍しいけどあり得ない状況でもない。
人間が出入りするゲートを、魔物が興味を持つ事は往々にしてあるから。
「ロロア、どうする? フロアボスが移動するまでゲート前で待機しておく?」
いちいちわかりきった質問をアイギスが投げ掛けてくる。
僕の周りには頼りになる仲間たちが揃ってる。勝てない相手はいない。
「――もちろん。時間がもったいないから、このまま全員の力で押し通るよ!」




