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第29話 芽生え

 夢中になって魔物を追いかけていたエルを、森の岩場近くで見つける。

 昆虫種の亡骸がたくさんひっくり返っていた。虫が苦手じゃなくても鳥肌が。


「エル、落ち着いた?」


「あるじさま……無駄遣いしてしまいました。ごめんなさい」


 聞けば、貰った魔力回復薬(マナポーション)が半分に減ってしまったらしい。

 五十発近い弾を撃っていた割には消費量が少ないが。

 トロンの成長したスキル、魔力吸収改が効いているのかな。


「慣れる為の練習だからね。その甲斐あって使い方は覚えられたでしょ?」


「はい! とろんさんはエルの望んだ通りの活躍をしてくれました!」


 その望みが結構な殺戮だったのがびっくりだけど。

 優しい天使さまだって時には悪魔になったりするよね。


「魔導銃は誰でも簡単に扱えるのが長所ですから。ロロアさんの方はどうでしょう?」


 エルを追いかける合間にも、僕も数体のロックアントを倒している。

 ちゃんと頭も働かせて。敵を倒すだけじゃなく、有効な使い方を模索した。


「ある程度射程範囲、闇と炎の扱い方は感覚で掴めたよ。強いんだけど、魔力の炎の残留時間が長いから一度相手を燃やすと二撃目が入れ辛くなるのが課題かな? 燃え移られるのは困るし。あとは魔法武器だからこそ威力は控えめだね。敵を倒すのに手数はどうしてもかかる感じ。それは魔力の炎も同様に」


 魔力伝導率の高い金属を使った剣は、切れ味が鈍い傾向にあるから。

 かといって同じ魔力量を消費したとしても、トロンの方が威力は出る。

 

 敵を倒すのに重きを置くのではなくて、負傷させて行動を抑制する。

 炎も広範囲に放出すれば足止めになるし、軽いから負担なく扱いやすい。


 やれることは多くて器用だけど一つに特化していない。

 一部分に突出していた僕たちの中では珍しいタイプの子だ。


 少しずつこの子の特性がわかってきたぞ。もっと活躍させてあげられる。


「それこそ役割分担の出番でしょう。ロロアさんがけん制して、エルエルがトドメを刺す。この流れをしっかりとこなしていけば、効率はグンと上がります。――王に盾役を任せるのは臣下としてどうなのかといったご意見もありそうですが、細かい話は抜きにしましょう!」


 そして重要なのは僕たちが息を合わせる事。

 命中補正があっても、油断すれば同士討ちもあり得る。

 背中には盾を向けられないから。射線には入らないようにしないと。


「エル、僕にとって一番の相棒は君だよ。いつだって隣に立って欲しいよ」


「はい、エルも同じ気持ちです! 他の方にも負けたくありません!」


「王に忠実なライブラ様もお忘れなく。エルエルと共に両翼を担いますよ」


 二人は僕にとって最初の仲間で。ずっと一緒だったから特別だ。


「でもライブラさんは意地悪な時もあるからなぁ。途中で片翼が折れたりして?」


「そんなっ! 私様の空より高い忠誠心を疑われるのですか!? 悲しみのあまり舌を噛みますよ!」


「あはは、冗談だよ。もう最近だとポケットに重みがないと落ち着かないんだ」


「それはそれで働いていない子のようで、微妙な評価ですね……」


 妖精の肉体で、エル以上に戦いに向いていないから。

 今ではもう一つの【情報板(ライブラボード)】をヘラさんから貰っているし。

 あれ、もしや一番レアリティが上がりにくいのは、ライブラさんなのでは?


 というか二つ目も【擬人化】したらどうなるんだろう。


 ◇

 

 自分たちの戦い方を明確に決めてから、立ち位置を意識して魔物を倒していく。

 

 ライブラさん曰く、僕もエルも飲み込みがとても早いらしい。

 実際、目に見えて討伐速度が上がっていた。幾つか戦略も取り入れる。


「普通は後衛は近付かれないよう前衛の後ろに立つものですが。エルエルが無敵なので、そこに囚われないで済むのが強みですね。守りを固めて遠距離で攻めるのもよし。攻守を入れ替えたり、同時に接近して火力を一点に高める戦略も取れます」


「自由度が高い分、覚える動きも多かったはずだけど。エルは普通にこなせているよね?」


 いちいち指示を出さなくても、僕が下がる時は前に出て援護してくれるし。

 複雑な動きに対しても無理なく対応して。一回の練習だけで覚えてしまった。


「エルはずっとあるじさまを見ていましたから。言葉でなくて心で伝わるんです!」


 その言葉を裏付けるように、前回ロックアントの攻撃から僕を救ってくれている。


「不思議な事に、エルエルはロロアさんに関しては感覚が鋭いというデータが出ています。エリクシルの空瓶の性質からはかけ離れていますし、スキルとは別種の謎の能力ですが。これも可能性の一つですかね」


「えへへ。エルにもお役に立てる力が芽生えていたんですね」


 俯き頬を赤らめて、エルはトロンをにぎにぎしている。

 そんな彼女の頭を撫でながら。僕たちは安全な寝床を探す。


 二十一階から駆け抜けて、もう二十四階層だ。

 僕たちが出会った二十五階まではあともう少し。


「アクアドラゴンはもう復活しているかな? ライブラさん、フロアボス情報を教えて欲しいな」


 フロアボスの復活周期はムラがあるけど。

 前回の討伐から二ヵ月以上は経っているから可能性はある。


「そうですね――原板(オリジナル)に確かめたところ。復活しているようですよ」


「それなら水龍の魔力水を手に入れるチャンスだね!」


 エルとトロンの相性の良さに魔力水も加えたら。

 【星渡りの塔】最上層まで攻撃面での不安が一切なくなる。


 ドラゴン相手は恐怖心もあるけど。一度は倒した相手。


「ロロアさんはついに自ら積極的にボス討伐に挑戦するまで成長なされましたか。感傷深いですね」


 振り返ると、アクアドラゴン戦は本当にギリギリの戦いだった。

 アイギスと出会わなければ、トロンの力がなければ。勝ち目がなかった。

 最後はエルの機転に救われて、もちろんライブラさんの応援も力になった。


 あれから僕自身どれだけ成長したのか。確かめるいい機会が訪れたと思う。


「エルも、あの時はやられる一方でしたから。今度はエルからも反撃します!」


「うん。過去の自分を超えて、また一歩成長しよう!」

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