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第15話 マスター

「そこの金髪の姉ちゃん強いな! どこの出身だ? ランクは? 今はフリー?」


 荒くれ者を瞬殺したアイギスさんの元に、人だかりができる。

 どれも好意的な視線ばかり。冒険者は強い人には憧れを抱くから。


「是非、俺たちのパーティに加わってくれ! いや寧ろ、俺たちを入れてくれ!」


「おいおい、抜け駆けはズルいぞ! うちなら厚待遇を約束する!」


「私たちとご一緒してくださいませんか? お姉様!」


 ギルド内では、アイギスさんへの熱烈な勧誘合戦が始まっていた。

 彼女も褒められるのは悪い気がしないのか、話を聞いてあげている。


 アイギスさんは面倒見がいいよね。冷たいようで、本当は優しいんだ。

 

「あいぎすさん人気です……本当にここでお別れなんですね」


 僕たちは隣にある酒場の席に座って、賑やかな様子を眺める。

 気になるけど、気にしたら別れが辛くなるから。見ていられない。


「トロン、いっぱい食べてね」


「……うまうま」


 魔石の報酬金を使って、たくさんの料理を注文した。

 匂いに誘われて人間態に戻ったトロンのお世話に集中する。


(アイちゃんがチラチラ見ていますよ! ロロアさんに引き留めて欲しいんです。めんどくさっ)


 ライブラさんがまたくすぐってくる。上着の中で話されても聞こえないよ。


「でも、私に相応しい人がこの中に存在するかしら?」


「俺は街一番の剣術スキルの使い手だ。【星渡りの塔】は四十階まで踏破した」


「私は元王宮勤めの魔法士。仲間は将来性を込みして選ばれた方が賢明です」


 主に男の人たちの食いつきが凄い。自分こそが相応しいのだと主張し合う。

 みんな僕より実績があって優秀な冒険者ばかりだ。誰を選んでも間違いない。


「えーと、できれば私より小さくて守り甲斐があって、機転が利いて、足が速くて、道具を愛し愛される、やる時はやれる子だと嬉しいけど。そんな条件に当てはまる子がいるかしら……?」


「具体的すぎない!? そんなよくわからない条件を満たす人物はこの街にいませんよ」


「というか姉さんは身体大きいから、大抵の男は小さい事になりますよ」


「まぁまぁ後から好みが変わる事だってあるし、まずは一回! 一回だけ、組みましょう!」


 誰を選んでも間違いはない……けど。

 彼らはちゃんとアイギスさんを見ているんだろうか。

 強いから、美人だから。表面ばかりを見ていて内面の方は?

 

 だって今も、彼女はどこか困った表情をしている。

 

「あるじさま……このままだと、あいぎすさんを盗られちゃいますよ?」


「本人がそれを望んでいるのに、僕が引き留めてもきっと迷惑で……」


(逆ですよ! アイちゃんの望みは……もう、こうなっては仕方ありません。私様が誘導を――)


 ――違う、表面ばかりを見ているのは僕も同じなんだ。

 最初から断られると思っている。本人にまだ聞いてもいないのに。


 気付いた瞬間、僕は立ち上がる。頭で考えるより先に身体が動いていた。


「あ、あの。僕じゃダメでしょうか? 僕じゃ相応しくありませんか!?」


「あるじさま!」


(おおっ!)


「…………っ!」


 一瞬にして騒ぎが静まった。酒場に集う冒険者全員の視線を集める。

 名乗り出るくらいなら。あくまで最後に選択するのはアイギスさんだ。

 

「はっ、誰かと思えば嘘吐きロロアか。身の程を弁え――――ぐぼっ」


「あら、顎に蟲が付いていたわよ?」


 そう言ってアイギスさんが、街一番の剣士の顎を貫いていた。

 気のせいじゃなければ、彼女の口元が緩んでいる気がする。


「ロロア、今さら名乗り出てどういうつもり?」


「え、えっと……その……」


「私は何度も、貴方をマスターとして相応しくないと言った。それでもどうして、名乗り出てくれたの?」


 まさかここで質問を受けるとは思わず、何も言葉がでない。

 後ろで見ている冒険者たちも「邪魔するな」と圧力を掛けてくる。


(泣きたいほど嬉しい癖に強情なんですから……優しい言葉だけではアイちゃんは動きませんよ。ここは私がフォローしましょう)


『――ごちゃごちゃうるさいんだよ! アイギス、言い訳を並べてないで黙って僕の元に戻って来い! お前を使いこなせるのは僕だけだろうが! ……あと後ろの奴らはお呼びじゃねぇからさっさと失せやがれ』


 あれ、僕の声で僕じゃない誰かが話しているぞ。周囲を見渡す。

 エルとトロンは席に座っているし。もしかして――ライブラさん?


「あぁ……ロロア……! うん……貴方の元に戻るわ。私のマスターは貴方だけよ……!」


 よくわからないけど、アイギスさんがとても喜んでいる。

 目に涙を浮かべて、そこまで歓喜されるともう撤回できないよ。


「おい……ロロア。自分が何を言っているのかわかってるのか? この場の全員を侮辱しているんだぞ」


 わからないです。発言しているのは僕じゃないので。


(ええい、これでトドメです!)


『不満があるなら、まとめてかかって来いよ。僕が相応しい事を実力で証明してやる』

お読みいただきありがとうございます

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