大戦②
今回の主要人物
【宗教都市ゼロ】
さくら(人間)異世界へ転生者した女の子。宗教都市ゼロ代表兼さくら神社神主。もふもふ同盟。
エスター(人間)孤児院出身の宗教都市ゼロ大将。もふもふ同盟。
さー(コロボックル)兄妹の妹。最近はエスターに懐いている。
シゲ(ぬらりひょん)さくら神社の参謀。
ナビ(AI)3D化に成功した神社システムのヘルプ担当。
ちー(マインドラゴン)元ピーナッツ火山の主。さくらの眷属。普段は人代、犬化をしている。リス獣人達に崇められている存在。ユニコーン隊のリーダー。
【バジ王国】
ザマ(人間)バジ王国軍大将
鬼神の表情で駆け出し、雄叫びを上げて鳥居からザマに一直線に駆け出したエスターさん。
次の瞬間、足を何かに触られた感触を感じた瞬間、「宗教都市ゼロ 大戦作戦本部」前に居た。
足元には、さーちゃんが居る。
「エスター! 顔が怖い」と言って、さーちゃんが怯える。
「ここは!? なぜ?」エスターさんは思考が追いついていないようだ。
そこに、「宗教都市ゼロ 大戦作戦本部」から、罰が悪そうな表情をしたさくらが出てきた。
「先ずは敵を騙すには味方からって言う言葉が、前の世界であるの。エスターさんだまっていてごめんね。でも、取り乱すなんてエスターさんらしく無いよ。血も出ていなかったでしょ、私」
「そういえば……血も出ていなかったし、いつもとさくら殿に違和感があった気がする……」
「私のために感情的になってくれてありがとう。そして、騙してごめんね」さくらは、ようやく落ち着いてきたエスターさんに謝る。
「さくら!持ってきたよ!」さーちゃんが、鳥居の内側に置いてきたスマホを回収してきてくれた。
一ヶ月ほど前の夜……
さくらはちーちゃんを寝かせると、スマホを触り始めた。
「さくらさん、またお買い物ですか?」スマホの画面の中からナビさんが話しかけてくる。
「うん、私もナビさんみたいになろうかなーってね」
「私みたい……ですか?」
「そうだよ! 私もリアルドールで影武者作るの、エスターさんがタケルに憑依出来るなら、私もリアルドールに憑依できるでしょ」
「出来ます……さくらさん、悪いこと考えてる顔になってますよ」
「えへへ。何に使うかは、ナイショ!私の身長はこのくらいで……」
「さくらさん、おっぱいのサイズ間違ってますよ! EじゃなくBですよ」
「むぅ……影武者ぐらい夢見る体型にしてもいいじゃん!」
「それでは、影武者じゃないです」ナビさんの言う通りだ。
「顔は……目をぱっちりタイプにして……鼻はすらりと高く……」
「さくらさん、そんな理想な顔じゃ別人で影武者にならないです。もっと地味な顔に戻して下さい」
「むぅ……ナビさんが私の心削っていく……」さくらは、顔については自撮り写真を添付してオーダーメイドでリアルドールの発注をした。
無事、大戦前に完成品が届いた。ちーちゃんとナビさんを前して、さくらは夜な夜な憑依の練習と動きのぎこちなさを無くすよう動きの練習をした。
「ご主人様、アタイは偽物ってわかるのだ!ご主人様の匂いしない人形さんなのだ!」
「それは、実際人形だから仕方ないよ。それより動きや仕草はどう?」
「ほとんど一緒なのだ!」ちーちゃんが言うのだから、大丈夫だろう。
「さくらさん、完璧です」リアルドール憑依の先輩であるナビさんからも太鼓判をもらった。
「宗教都市ゼロ 大戦作戦本部」に場面は戻り……
シゲさんは、状況を【緑】アプリのチャットで状況報告をしていた
『さくら(影武者の人形)がバジ王国大将ザマに切られて大戦開幕』
『エスター、「宗教都市ゼロ 大戦作戦本部」に帰還』
『バジ王国軍、鳥居をくぐり街道を進軍中』
鳥居をくぐり、一気に雪崩れ込むバジ王国軍は、細い道と両側に白い煙で視界が見えない谷らしきものに気がつくが、勢いを止められず、突然立ち止まり後続に押されるかたちになって、先頭はほとんどドライアイスの煙の中に落ちて行った。
どこまで落ちるのか、どこが床なのかわからない状態で落下し受け身を取れず、足をくじいたり、頭から落ちたり、その上からまた次の兵が落ちてきたりしてダメージを負い、ヌルヌルする傾斜に滑っていく。
「うわぁぁぁ」
「ドゴっ」
「痛てぇよぉ……」
「助けてくれぇぇ!流されていく……」
落ちた兵の悲痛な声が段々遠くになっていく。この白い煙の下はどうなっているのか、踏みとどまった兵は恐怖で足がすくむ。しかし進軍しなければいけない。細い道を慎重に一列になり進む。普通に歩ける幅はあるのだが、恐怖があり……勝手にバランスを崩して、白い煙の中に消えていく者もいた。
段々と細い道に慣れて歩けるようにはなってくるが、左右の白い煙の谷の底からは、次々に落ちていく兵の悲痛な声が常に聞こえて恐怖を感じる。
先頭を慎重に歩いている兵の足に、音もなく【狛犬(空気砲)】がクリーンヒットし、足払いをされたように転ばされ、白い谷に落下していく。細い一本道、戻ることなど出来ない。次に先頭になった者の恐怖と言ったら……
先頭から数名通り過ぎた辺りで、【狛犬(空気砲)】が次に狙いを定めた兵の肩を背後から弱い威力で当てる。
「おい!押すんじゃねぇよ!」
「押してねぇよ!」
兵同士で疑心暗鬼にさせ、落下の恐怖もあり、パニック状態となる。何も知らない背後からは、「早く進めよ!」などと怒号が飛んでいる。
なかなか進軍していかない兵にザマはいらだっていた。しかし宗教都市ゼロの代表の首は取った。手柄は手に入れた。そう思い、さくらの生首を見て気がつく。
(血が出ていない……)
横たわるさくらの体を剣で何回突いても、雪が赤く染まることはなかった。
(どこで変わり身と切り替わった? 怒りに身を任せて向かってきたエスター大将は、一瞬で何処に消えた?)
今になって、ザマは相手にしている者達が不思議な現象を操っていることに気が付き、先走ってしまった事を後悔した。しかしもう遅い。多くのバジ軍兵は白い煙で底が見えない谷に姿を消しているのだから。そして落下し、流れ着いた先にいるのはピーナッツ火山の主が待っているのだから。
初めての作品「さくら神社の防衛戦争」を読んでいただき、ありがとうございます。
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ついに大戦が始まりました!
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次話は大戦の続きです。