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葬儀屋の二人  作者: 渋音符
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葬儀屋の二人⑤

久しぶりなので短め。




 地面が切断され、砕かれ、その場にいたキアと神父を纏めて地下に叩き落とす。地下から這い上がって来た屍人達を十本近い刃で貫き、切り裂き、淀んだ血を撒き散らす。


「あ、ゥぁアぁあア!!」

「ぎャァアぁぁあァあアぁ!?」

「ぐぅえェえぇえェ!!?」


 屍人の悲鳴が地下に響き渡る中、キアは空中で体勢を変え、両手を地面につき、腕を曲げて前転の要領で衝撃を逃がし、着地しようとして背中を打ち付ける。


「ぁ………痛ぇ…………」


 肺から空気が押し出され、びりびりとした痛みが全身に走る。体を持ち上げながら、キアは悪態を吐いた。燃えるような熱さが左の手首にあることに気付き、舌を打つ。

 木片による切り傷もいくつかあり、じわりと血液が滲む。


(くそ………治療系の魔術は使えねぇしな。処置しないと………)


 鞄から包帯を取り出そうとして、キアの手が止まる。


「ウウゥ………ウゥ………………」


 呻き声が近くで聞こえたと思うと、地面に寝ていた死体が起き上がり、キアに向かって腕を伸ばし近づいて来る。


「ふぅ………『幽体の剃刀(ぶったぎれ)』」


 生み出していた刃に意識を飛ばし、反射的に近づいてくる屍人を、近場に浮遊していた刃で切り刻む。濁った血液が辺りに飛び散り、地面に切り傷がいくつか生まれる。

 立ち上がり、生み出していた刃に意識を割く。十本近くあったはずの刃の内、半数が維持できずに失われているのを確認すると、キアは残っているものを自分の近くに引き寄せ、待機させた。

 

(叩き落とした時に屍人はほとんど殺せたが………まだ神父は生きてるか)


 手持ちの包帯で手首を固定したり、切り傷を止血をする。緊急時のために雑な処置にはなるが、それでもないよりはマシだろう。

 処置を終えて、神父を探そうと辺りを見回していると壁に棺が幾つも納められているのに気付いた。ここが、中年に聞いていた件の地下墓地(カタコンベ)かと思いながら進もうとしたところで、急に目の前の木片の山ががらがらとひっくり返った。

 そこにいたのは、神父だった。


「がっ、あぁ、くそッ! あの男………」


 木片で体が傷付き、血を流しているようだが、神父が何やらぼそぼそと呟くとその傷がみるみる内に塞がっていく。それにキアは自分の刃と似たようなものを感じた。

 厄介な魔術を修めているようだ、と相手の戦力を計算し直し、挑発するように声を掛けた。


「よぉ、神父様。神父と言うには相応しくない(おぞま)しい表情じゃないか」

「お前は………!!」

「口悪いな。本当に神父様なのか?」

「黙れッ! 『屍人起こし(したがえ)』! あいつを殺してしまえ!!」


 がたり、がたり、と棺の蓋が開き、屍人が続々と這い出して来る。呻き声が地下を満たし、屍人がこちらに向かって腕を振り上げて襲い掛かろうとする。


「―――屍人に遅れなんて取るかよ」


 近くに待機させた刃を振り回し、首を撥ね、心臓を貫き、殺し直す。同時に地面を蹴り、神父に向かって走り出す。


「まだまだ屍人は尽きていないぞ?」

「チッ」


 気配を察知して、その場で転がる。シッ、と空気を鋭いものが裂くような音を聞き、キアは後ろに向かって咄嗟に刃を飛ばす。刃は確実に腕を撥ね飛ばし、二撃目で肩口から脇腹までを袈裟斬りにする。

 ばちばちと手のひらから刃を生み出しながら、神父に向かって駆け出して腕を振るうが、それは易々と躱されてしまう。


「なっ………!?」

「私が戦闘出来ないと思ったのか」


 ゴッ、と鈍い痛みが走る。キアの体が浮き、間を置かずに顔面を殴り飛ばされる。壁にぶつかり、鼻からぽたりと血が落ちる。

 息がし辛い。腹を蹴られたせいで不安定になっているのだろう。なんとか体を動かそうとして、不意に眼前に爪先が迫って来た。

 腕で顔を庇うことも出来ず、どうにか蹴りが目元に当たらないように顔を逸らすと、衝撃が頭蓋に走った。


「ぐっ………くそっ」


 生み出していた刃を射出すると、神父は身を翻しそれを躱す。

 それを見て、目を見開き、思わずキアは口走る。


「なんで、躱せるんだ」

「お前は透明な刃を放っているんだろう? なら、軌道を読むことなんて容易い」

「チッ………」

「………それより、お前の連れはどうしたのだ。私の屍人をお前と殺していた少女だ」

「………………なんのことだ?」

「私は見ていたんだぞ。お前と少女がこの町で屍人を次々と殺していた所をな。………上手く使ってやろうと思ってたんだがな。まあいい。まだ町にいるだろう。これから探しに行けば………」

「―――逃がすかよ………ッ!」


 ふらふらと起き上がると、赤いものが左目を覆った。それに手を当てるとぬるりと嫌な感触を覚えた。どうやら頭から血が流れているようだ。

 神父に向かって手のひらを振り上げ、刃を生み出そうとして―――ズドンッ、と。


「いっ―――!?」


 右手首が熱を持つ。赤い鮮血が散り、鋭い痛みに集中力が乱され、形成されている途中だった刃がその形を失う。

 硝煙の香りが、微かに匂う。

 神父の手に拳銃が握られているのに、キアは気付く。六連装弾式の物だ。


「なんで、そんなものを」

「ここで死ぬお前は、知る必要などない」


 続けて銃弾が放たれる。太腿を撃ち抜かれ、声にならない悲鳴をキアは上げた。血が地面を更に濡らす。


「これ以上銃弾を消費するのは無駄だな。屍人ども、やっておけ」

「くそ、待ちやがれ―――ぐッ!?」


 追い掛けようとして、太腿の激痛がそれを邪魔した。刃を作ろうとしても、痛みが集中力を掻き乱す。神父は早足で地下の奥へと消えたが、それを気にしている暇はなかった。


「う、ぅアぅあァぁぃア!!!」


 近くで起き上がった屍人が肩を掴み、鋭い爪が肉に食い込む。屍人は口を開き、噛みつこうとしてくるが、撃たれていない方の足で屍人を蹴り飛ばす。


「がぁぁあァあアぁ!!!!」


 他にもいる屍人が叫びながらこちらへ近づいてくる。この数を捌くのは少し無茶かもしれないとキアは直感した。大きく息を吸い、急場凌ぎで痛みを和らげ、なけなしの力で刃をありったけ生成する。


(これは、死ぬかもしれないな)


 そんなことを考えながら、キアは近づいてきた屍人に向かって刃を放った。



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