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30.また会える日を願っているわ。

百合の花ビラと香りに誘われ走った先

大きな崖があり近づいてみる。

そこから王都全体を一望できた。

「わあ…!ネオも見て!

とても綺麗よ!」

「…そうだな。」

公爵家や前世王宮から見える景色とは違い

全く別世界にいるような感じがする。

景色が綺麗なあまり目を輝かせるリリアーナ。

「こんなにも綺麗に王都を一望できるなんて…!

ここ気に入ったわ!」

「…そうか。」

先程から一言二言しか喋らないネオを見て戸惑ってしまう。

先程のことを気に病んでいるのだろうか。

罪悪感を抱いてしまう。

(私も少しムキになってしまったわね…。)

先程自分も素直になっていれば、こんなにもギスギスとした雰囲気になっていなかったかもしれない。

けれど、このままギスギスとした雰囲気のまま

ネオとお別れになることは嫌。

と不思議とそう感じてしまった。

そして、素直に伝えようという思いが出てきて…。

「ねぇ、ネオ。」と口を開く。

「なんだ?」

「さっきはごめんなさい。ムキにってしまって。」

「…!」

「ネオ、言っていたよね?

寂しいかって。」

「あ、ああ…。」

「正直に言うと…」

「少し寂しいの。」

淡々と思いをネオに伝える。

「あなたも分かっているけれど、私の母は妹贔屓だし

父は母に強く出れない。そして妹は私を下に見ている。」

「…。」

「そんな人達のいる侯爵にいるのはとても辛かった。」

「けどね、そんな辛い思いを一時的に遮断してくれる人がいたの。」

「それって…。」

「そう。ネオ、あなたよ。」

リリアーナがそういえば、風が吹くのと同時に

夕陽がリリアーナの髪を染めた。

まるでアメジストのように輝いていた。

ネオはそんなリリアーナに見惚れる。

「あなたと過ごす中であなたが自分の感情に素直な人だと知ってそれから楽しい時間を過ごすことができて、初めて声を上げて笑うことができて…」

「いつしかあなたは私にとって光のような存在になっていたの。」

「だからこそ、あなたとここでお別れになるのは

少し寂しい。」

と自分の思いをネオに吐露した。

嘘などなく紛れもない本当の言葉。

ネオは呆然とした様子でリリアーナを見つめた。

感じるのは、戸惑い。

(思ったことをはっきりと言ってしまったかしら…?)

どうしようと考えていると…。

「リリアーナ。」

と口にしてリリアーナの方に近づく。

そういえば、ネオはリリアーナと初めて呼んだ気がする。

「…?」

「そうかそうか!」

といつものようなネオに瞬時に戻っては馬車に乗る前のように髪をわしゃわしゃとしながら撫でてきた。

「えっ…!?ちょ…っ」

「寂しいんだな!そんなにも俺、お前にとっていい存在だったんだな!そうかそうか!」

「…っ」

「けどさ離れていても俺達は繋がってるじゃん!」

「え…?」

「たった数ヶ月しかいなかっただけでも俺らは十分に絆は繋がっているだろ?」

「…!」

「例え、長い間離れ離れになったとしても

俺達の絆はそんな簡単に切れることはない。」

そういう彼の言葉はとても優しさで溢れていた。

縁のなかった優しさ。

その優しさがリリアーナの心に染み渡る。

優しい、嬉しい、と様々な前世の時に尽きたはずの

感情が溢れてでくる。

「だから、そんな寂しそうな顔をするな。」

とても先程とは異なりポンと頭に手を置いて優しく

撫でてくれた。

優しさのある言葉と仕草に自然と笑みが零れた。

「そうね…!おかしいよね。

強い絆があるというのに私ったらこんな…。」


「リリアーナ様、ネオ様!

出発する準備ができました!!」

とネオの後ろの方から御者の声がした。

そうこうしている内に馬車の出発する準備ができていたようだった。

「分かりました。

じゃあ、ネオ…」と途中で喋るのをやめた。

なぜならネオが何か言いたげな感じだったからだった。

「どうしたの?ネオ。」

そう問いかければ

「あのさ…リリアーナ。」

何かを言おうとしていたがネオは途中で止め

「やっぱりなんでもない。

行こう。」と言ってリリアーナよりも先に馬車の方へ

歩み始めた。

(何を言いたかったのかしら…?)

聞いてみたかったがおそらくネオ個人の何かがあるのだろうとあまり深入りしない方がいいと思い何も問いただそうとしなかった。


御者が馬車を走らせ、着いた先はフィルア公爵家。

駐車すればネオは馬車から降りた。

「じゃ、短い間だったけど。ありがとな。」

「こちらこそ。」

「どうか気をつけて。

立派な姿になってまた会える日を願っているわ。」

と微笑みながら告げると。

ネオはまたあの時のように見惚れているような顔をしていた。

「ネオ?」

名前を呼んでみれば我に返って焦った様子だったが

「なんでもない。」と言っていつものように笑っていた。

「じゃあ、またな。リリアーナ。」

「うん。またねネオ。」

と別れを告げてから御者は再び馬車を走らせた。

リリアーナは馬車の窓から

公爵家を見続けた。見えなくなるまで。


読んでいただきありがとうございます。

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