2.全ての始まりのお茶会(2)
美しく着飾り、そのままアッシュ達と一緒に
馬車に乗り城へ向かった。
道中にルナティアが「楽しみです!」と言ってクレアが「そうですね。王太子様に会えますもんね。」と楽しそうな会話をしているがリリアーナはただひたすらと馬車の窓を伺っていた。そんなリリアーナにアッシュが
「大丈夫か?リリアーナ。今日お前の様子おかしいぞ?」
と言われるもただリリアーナは笑顔で「大丈夫です。」
と返した。大丈夫ではないが。
そうこうしている内に城につき
通された会場は、自分とルナティアと同じくらいの年代の令嬢や公子達がいた。
皆、着飾って各公爵家に挨拶をしている様子だった。
無論ギーベンラート侯爵家も。
そして、国王と王妃、王太子達が会場に姿を現した。
お茶会という名の王太子の婚約者を決める行事が始まった。
王太子の前には、大勢の令嬢達が集まっていく。
もちろんルナティアも「レディス様ー!」と言って
他の令嬢達をかき分けるように王太子の前に近づいていこうとしており、抜け駆けしようとするルナティアを見て令嬢達は不愉快な視線を向けていた。
王太子を一目見た瞬間、
前世の記憶が脳内で再生される。
自分ががルナティアを怒鳴りつける度に向けてくる冷めた瞳と
最後に自分をルナティアを殺そうとしたと決めつけてきた時のことを思い出してしまい気分が悪くなってしまう。
そして反射的に体が動いてそのまま会場の隅っこで
うずくまっていた。
彼らに前世の記憶はない。
だからこそ自分の気持ちが分からない。
分かっている。けれど過去に戻ってきたからといって
裏切られ捨てられた結果
あの結末になったことを消すことなど永遠にできない。
気持ちを落ち着かせるようにドレスの裾を力強く
握っていると
ふと冷たいものが頬に当たったのを感じ顔を上げる。
そこにいたのは、濃い赤紫色系統の髪と瞳をしたリリアーナと近い年代の青年が立っていた。
その青年は、コップ一杯に入った冷たいフルーツティーをリリアーナに押し付けては、首を傾けながら
「大丈夫か?」と口にした。
「具合でも悪いのか?」
「え、えっと…」
相手の勢いに圧倒されて、たじろいでしまうリリアーナ。
それを見たのか青年はリリアーナに、持っていたコップ一杯に入ったフルーツティーを「ほら。」と言って渡してからどこかへ行く。
渡されたフルーツティーをじっと見つめる。
自分を心配してくれて渡してくれたのだろうか。
せっかく貰ったので、フルーツティーを飲んでみるとする。甘い風味と香りが広がり制御するのに必死だった
心も少しずつ落ち着いていった。
お礼を言おうとしたけれど、彼がどこにもいない。
仕方がないコップを置きにいこうかな。と思い
立ち上がると先の方で「おーい!」と言いながらこちらへ向かってくる人がいた。フルーツティーを渡してくれた青年で片方の手に取り皿らしき物を持っている。
「あ、あの…!これくださってありがとうございます。」
そう言うと、青年は「ん?」と言って彼女の持つフルーツティーを見てそれのことか。という顔をし
「ああ。いいよいいよ。それよりもほら。」
と言って取り皿の方に視線を向ける。
リリアーナも見てみると取り皿には小さなアップルパイと、イチゴのタルトやマカロン、チョコレートなどが沢山のせてあった。
それを見て、リリアーナは
(全部食べるのかしら?)と思っていたが
「これ、食べようぜ。俺と。」
「え?」
何か言おうとしたけれどそれを遮るように
「ほら。」と言って手のひらに渡されたのは
イチゴ味のマカロン。自分の好物でもあった。
「それ食べて、元気出せ。」
そう言って青年はリリアーナの隣に来て座り込み
リリアーナも同じく座り込む。
座り込み初めてすぐに彼が手を伸ばしたのは小さなアップルパイ。1口で食べられるサイズなためすぐに彼は口に入れる。サクッと咀嚼音が聞こえた後
「うめぇ…!」と言ってはじけるような笑顔を見せる。
それを呆然と眺めるリリアーナに青年は
「お前も食いな。」と言い
リリアーナは、貰ったイチゴ味のマカロンを口に入れる
甘酸っぱさと甘さが口の中で広がり、美味しくて
思わず、笑顔になり「美味しい…!」と青年と同じ言葉を呟く。そう言うと、青年は口を開く。
「だろ!?このデザートは、皇宮仕えのパティシエが作った物なんだ!」
彼がそう言うと、
ふと脳裏で前世の記憶が再生される。
前世、ルナティアがやるべき仕事を終わらせ作業机で突っ伏していた時にふと、執務室からノックの音がして
『入って。』と言って入ってきたのは1人の侍女が取り皿を持ってきたそこには沢山のスイーツが乗っていた。
『皇宮仕えのパティシエがリリアーナ様にと、用意してくれましたよ。』と言ってイチゴ味のマカロンを口に入れて広がる甘さと甘酸っぱさで美味しくて仕方がなくて
思わず涙を零した記憶。その時は涙を零しそうなくらい精神がすり減っていたから甘い物を食べたことで癒してくれたっけ。
辛かった前世でも、少し良かった記憶も少なからずあったんだなと思っていた時に
現実世界に引き戻されるかのように
「どうした?」と不意に耳元で声がして我に返る。
青年は眉を下げて
「お前、本当に大丈夫か?」
そう言われ、アワアワとしながらも
「大丈夫です…!」と言うリリアーナ。
「ふうん。」と言って
「ほら美味しいならあげるよチョコレート。」
そう言われまた手のひらにチョコレートを渡され
「ありがとうございます。」と言ってチョコレートを口に入れればさっきと同じような表情をして青年も取り皿からイチゴのタルトを手に取り口に入れればまた「うめぇ…!」と言ってまたはじけるような笑顔を見せた。
どうなるのかと思った2度目のお茶会。
彼のおかげで肩の力を抜いて過ごすことができて良かったと思うリリアーナ。
リリアーナが青年と仲慎ましくしている間に
ルナティアはどうなっているのか知らずに。
「ぐえっ!」
皇太子や、沢山の令嬢の前で転ぶルナティア。
ルナティアが誤って転んだのではなかった。
おそらく、沢山の令嬢の中で誰かが悪意を持ってルナティアを転ばせたのだろう。
そうでなければ、転んだ時にルナティアに対して
ニヒルな笑いが起きない。
誰かに転ばされ、更には心の底から慕っている
王太子の前で恥をかいたことにより
ルナティアは、震えやがて大粒の涙が流れた。
「うわあああああんっ!」
同時に泣き声が会場全体に響き渡った。
ルナティアの泣き声はあまりにも大きく
令嬢の中には耳を塞ぐ者が数人いて
ルナティアの近くにいる王太子もルナティアの泣き声を聞いてあまり顔に出さないようにしていたが思わず顔をひきつる。
そんなルナティアの泣き声を聞いて、駆けつけてきた人がいた。
「ルナティア!どうしたの?!」
母親であるクレアであった。
壮大な泣き声をあげるルナティアの前にすぐ駆け寄ってきて、ルナティアはすぐにクレアに泣きついた。
「こんな所で泣くなんて
礼儀がなってないわね。」
「ギーベンラート侯爵家ではどんな教育を受けているのかしら。」
「姉のリリアーナ様とは全く違いますわね。」
様々な言葉でルナティアをいやしめる令嬢達を見て
クレアは思わずその令嬢達を睨みつけそうになったけれど、ここは公の場であり目の前には王太子がいる。
無作法な人だとレッテルを貼られ、ギーベンラート侯爵家やルナティアの名誉に泥を塗ることになってしまう。そうしないように堪えろ堪えろと言い聞かせ
理性を取り戻しては
「…ごめんなさい。ルナティアはこれで失礼させてもらいますわ。」と王太子や令嬢達に会釈してから
ルナティアの手を引いて、彼らの前から離れた。
離れようとした時にルナティアは1人の方に
視線を向けた。
呑気に他の人とお菓子を食べている自分の姉であるリリアーナだった。
ルナティアは理不尽な怒りを募らせた。
(私が酷い目に遭ったのに、呑気にお菓子なんか食べて…!酷いわ!お姉様!)
リリアーナを心の中で非難しリリアーナには絶対に気づかれない怒りの視線を向けた。
その後、母親であるクレアから「これを飲んで落ち着きなさい。」とストロベリーソーダを渡された。
甘くて爽やかな味がして美味しいはずなのに
今日はどうしてこんなにも苦く感じてしまうの?
読んでいただきありがとうございます。




