13.何もない日に訪れた再会(5)
店を出てから、リリアーナはゆっくりと肩の力を抜く。
あの店の独特な雰囲気と、ネオとのやり取りにより
思った以上に神経を使っていたよう。
「待たせてしまってごめんねロロナ。」
「いえ、とんでもございません。
ですが、少し不思議なお店でしたね。」
ロロナの言葉にリリアーナは頷く。
けれど、リリアーナは来て良かったと感じていた。
手に持つ青い魔導書へと視線を向ける。
時空巻き戻し魔法。
それは自分が今求めているもの。
分からないけれど、もしかしたら
何かを得られるかもしれない。
希望と、疑念で混じる中
気持ちを切り替えるように、顔を上げる。
「次はロロナの番ね。
ケーキ屋さんに行こう。」
「はい。」
しばらく歩いていると、人通りの多い通りを出る。
先程の静けさと異なり、賑やかな声と香ばしい匂いや甘い匂いが漂っていた。
そして目的地であるケーキ屋に着く。
ガラスのショーケースの中にある
沢山のケーキが並んでいた。
ふわふわのスポンジと生クリーム、季節の果実が乗ったタルト、艶のあるチョコレートケーキ。
「すごい…!」
目を輝かせながら、呟くロロナを見て
リリアーナは微笑む。
「好きなものを頼んでいいわよ。
付き合ってくれたお礼に。」
「そんな…」
遠慮しつつも、ショーケースから目を離さないロロナに
リリアーナはくすりと笑う。
「遠慮しないで。ほら。」
ロロナは意を決したように1つ指さした。
「…では、このいちごがのったショートケーキを。」
「じゃあ私は…」
少し、悩んだ後、
焼き菓子の並ぶ棚に目を向ける。
「ガトーショコラにしようかな。」
注文をした後、席へと案内される2人。
運ばれてきたケーキを前に、ロロナは嬉しそうな
顔をする。
「いただきます。」
1口食べた瞬間、ロロナは微笑む。
「美味しいです…!」
その姿を見て、リリアーナもガトーショコラを口に運ぶ
強く濃厚なチョコレートの味としっとりとした食感。
「美味しいわね。」
自然と零した言葉に驚く。
前世では、こんな穏やかに過ごすことなんて
出来なかった。こうして誰かとスイーツを堪能することすらも…。
本当に過去に戻ってきたんだ。
静かにそう思いながら紅茶を1口飲む。
ケーキを食べている
一方で頭の片隅に魔導書のことがあった。
時を戻す魔法が使えることができるのなら…。
そう考えかけて動かしいていた手をふと止める。
けれど、すぐに首を横に振った。
(いいえ。
まだ、分からないわ…。)
まずは、知ること、次に理解すること。
そして身につけるんだ。
「ロロナ。」
「はい?」
「侯爵邸へ帰ったら、少し勉強するわ。」
その言葉にロロナ反対せずにただ微笑んだ。
「はい。リリアーナ様がそうしたいのであるのなら
私もお供します。」
穏やかな時間の中でリリアーナの瞳の中には
決意が宿っていた。
未来を変えるための静かな1歩が少しずつ
進み始めていた。
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