10.何もない日に訪れた再会。(2)
公爵の爵位を持つ家紋であるフィルア公爵家。
遠国のアストレス帝国の王女を妻にしており
アストレスの王族とも親交がある。
そんなフィルア公爵家にて
遠征からフィルア公爵が帰ってきた。
「帰ったぞ。」
「あら、いつもより早く帰ってきましたのね。」
緑色の瞳を持ち、金色の長い髪を白色カトレアの花の髪飾りで一纏めにして緑を基調とした、同じく白色カトレアの花の刺繍がされたドレスを身にまとい召使い達を連れた女性、ミリナ・フィルア公爵夫人が出迎える。
「ああ。いつもより仕事が早く終わってな。
私はいいがな。」
そう言いながら、ミリナの頬に優しく触れ
「早く帰って、君に会いたかったから。」
「ユラン…。」
甘い言葉をかければ、ミリナは頬を赤らめる。
頬から手を離し、上に着ていたジャケットを召使いに渡してからユランは「そうだ!」とまたミリナの方に視線を向ける。
「もう決めたのか?
ネオをイリアスの元で魔法の勉強をさせるのを。」
そう言えばミリナは首を傾げる。
「ええ。あの子は、幼き騎士と呼ばれるほど剣術の才能があるけれど…あの子は少しヤンチャで無茶をしてしまうことが多いわ。」
そう言いながらも顔に手を当ててため息を溢すミリナ。
ユランとミリナの間には2人の子供がいる。
長男である、ラシェルは次期フィルア公爵でありながらも頭脳、剣の実力も優秀。
そして次男である、ネオは幼きながらも剣の才能があり
幼き騎士という異名を持っているが
ユランや、ミリナも手を焼いてしまうほどに
ネオは、血気盛んかつ少々ヤンチャなのである。
それに、こうと決まれば突っ走ってしまうというものもある。
それを見た、ミリナはいずれ最悪の事態を招くのではないかと非常に心配し剣術以外にも何か身につけておいた方がいいかと考え怪我を治癒させることができる治癒魔法を身につければとユランの知り合いでもある魔道士、イリアスの元で教えさせようと考えた。
「治癒魔法を習得させれば、あの子に最悪な事態を完全ではないけれど免れることはできるわ。
だから、イリアス様の元で治癒魔法を習得させるよう頼んでおきましたの。」
「だが、嫌がるんじゃないか?」
「分かっているわ。けれどそうしないと2度と剣がふるえなくなってしまったらあの子は耐えられないでしょう?だからこそよ。」
「それはそうだな。
…で、その本人はどこに行ったんだ?」
「来週には、イリアス様の元へ行かせるから
色々準備をするよう市内へ買い出しへ向かわせたわ。」
そう言えば、ユランは苦笑を浮かべながら
「きっと、場所の中では不機嫌だろうな。」と呟いた。
どうやら、ユランの言っていた言葉は予想通りのようで
(ちぇっ…なんで俺が魔道士のもとへいかなきゃならないんだ。)
と馬車の中で不機嫌になっている深い赤紫色系統の
髪と瞳を持つ少年、ネオ・ルト・フィルア。
今、従者と一緒に市内にある店へと向かおうとしていた。
数日前、母であるミリナにあることを告げられた。
「ネオ、来週から週に2回ほど
魔道士イリアス様の元で治癒魔法を習得してきてもらいます。」
それを聞いた時、ネオはなんで?と思わず言ってしまった。なんで、治癒魔法なんぞを学ばなければならないのか。ミリナはあなたは幼きながらも剣術が一流だけれど
ヤンチャすぎるのとこうと決まれば突っ走っていくという大きな欠点があるからだと言われた。
「それでなんで、治癒魔法を学ばないといけないの?」
と言い返せば、ミリナは顔に手を当てながら深いため息をこぼした後
「下手すれば、最悪な事態を招く可能性があるからよ。
例えば、手の施しようもない怪我を負ったり…
下手すれば死んでしまったりするとか。
そうならないようにあなたには治癒魔法を習得させて
少しでも最悪な事態から免れることができるわ。」
そう言われれば、ますます意味がわからないネオ。
最悪な事態を招くのか。
自分は幼き騎士と呼ばれる程の実力を持っている。手の施しようのない怪我や死んだりするものか。だから、治癒魔法なんて必要ない。
反論しようとしたけれど、ミリナが邪魔するように口を開く。
「とにかく。あなたには来週からイリアス様の元へ行かせますから。あなたが嫌がろうが行かせますから。
ヒューゴ!」
ミリナがそう呼べば、ネオの専属召使いであるヒューゴがやってきた。
「奥様、何か御用ですか?」
「ネオと一緒に、魔法道具店へ行って治癒魔法に関するものを買ってきて頂戴。」
「かしこまりました!」
ヒューゴがそう言えば、ネオに近づいては
腕を掴む。使いといえど、ヒューゴの方が力が強いため振り払おうとしてもできない。
そのまま半ば強引にヒューゴによって馬車に乗せられた。
そして今に至り、
馬車から下ろされてついた先は人があまり通らないであろう場所にポツンと建っていた廃墟を連想させるような洋館のような店。
ここがミリナが行けと言われた場所である魔法道具店。
本当にここで合っているのかと疑いながらも入ってみれば中へ入れば、ダークアンティークを連想させる内装だった。
カウンターらしき場所には1人のローブを羽織った女性がいた。ネオ達が入ってくるのを見れば「…いらっしゃい。」と静かな声で言った。その後は何も喋らずにどこかを黒い猫を撫で続けていた。
1つの本棚を見てみる。何語で書いてあるか分からない本らしきものがズラリと並んでいる。
そして、不思議な色をした液体を入れてある瓶に
宝石と似ているがどこか違う石などが置いてある。
何を買えばいいか分からくて困ってしまうネオ。
ヒューゴの様子を見れば、ヒューゴも魔導書を見て何語か分からずおろおろとしていた。
カウンターにいる人に聞こうとしても雰囲気で話しかけにくくどうしようかと思っていた時
店の扉の鈴が鳴る音がした。
読んでいただきありがとうございます。




