第20話:ループの力を軽視した代償
文化祭まであと二日に迫り、積み重なった疲労と緊張感が学校の空気に漂っていた。
コンセプトカフェの準備はほぼ整っていたが、僕と朱莉のやり取りは前日の午後に起きた出来事のせいで、奇妙なほど慎重なものになっていた。二人とも触れようとしない、部屋の中の巨大な象のような問題が横たわっていた。
さらに悪いことに、午後になると空模様は急速に陰鬱さを増していった。
空は重く垂れこめる黒雲に覆われ、教室で最後の看板の修正を終える頃には、雷鳴を伴う猛烈な土砂降りが窓を激しく叩きつけ始めていた。
「今日は駅まで歩いて帰るのは無理そうね」上着を羽織りながら、外を見つめて朱莉が言った。
「ああ、昇降口で少し雨脚が弱まるのを待つしかなさそうだな」荷物をまとめながら答えた。
メインロビーへ向かって階段を降りていると、隣のクラスの男子生徒二人が僕たちの前に立ちふさがった。そのうちの一人、バスケ部の背の高い男子が、余裕たっぷりの大きな笑みを浮かべて朱莉に近づいてきた。
「よお、白川!」その男子は僕のことを完全に無視して挨拶した。「部活の何人かで準備終わりのお祝いに駅の近くで飯食いに行くんだけどさ。一緒に行かない? 大きい傘貸してあげるよ」
僕の足は二、三段手前で止まった。
かつての僕なら、ただ黙って先に歩き出し、彼らに道を譲っていただろう。しかしその瞬間、その男子が彼女に向ける笑みや慣々しい話し方を目にした時、胸の奥を突き刺すような、冷たくて不快な痛みを覚えた。
嫉妬。自分にはおよそ無縁だと思っていた、浅ましく独占欲に満ちた感情だったが、それは確かに、鋭くそこに存在していた。
朱莉はその男子を見つめ、それから僕の方へと首を向けた。一瞬、彼女の瞳は僕の顔に何らかの反応を探していたが、僕の防衛本能が咄嗟に視線を逸らさせ、自分の感情をひた隠すために表情を硬くさせてしまった。
彼女が躊躇するのを見た。
「あ……すごく嬉しいんだけど、でも……」朱莉は言葉を探し始めた。
「いいじゃん白川、そんなこと言わずにさ。政司は一人で帰りたければ帰ればいいんだし」男子は彼女へともう一歩踏み出した。
「結構です、って言ってるでしょ」
朱莉が答えた。今度はあからさまに冷たく、距離を置いたトーンで、即座に境界線を引いていた。
男子はその拒絶に面食らった様子で、ぎこちなく謝ると友人とともに立ち去っていった。
昇降口に着いた時の二人の間の静寂は、息が詰まるほどだった。目の前では雨が土砂降りで降り注ぎ、僕たちの前進を阻む水の壁を作り出していた。
「政司くん……」静寂を破り、朱莉が低い声で言った。「さっき、なんであんな顔したの?」
「どんな顔だよ? べつに何の顔もしてない」濡れた通りを見つめ、腕を組みながら嘘をついた。
「してたよ」彼女は強く主張し、僕の真向かいに立つために一歩踏み出し、無理やり目を合わせさせてきた。「また冷たくなった。急に。まるで私が彼らと一緒に行ってほしいみたいだった」
「友達と一緒に行きたかったんなら、行けばよかっただろ」言葉を抑えきれずに吐き捨てた。自分でも意図していた以上に声が荒くなってしまった。
朱莉は凍りついた。彼女の灰色の瞳が驚きで見開かれ、直後、怒りと痛みの火花がその顔を駆け抜けた。
「本気でそう思ってるの? この一週間ずっと一緒にいて……本気で私があなた以外の誰かと行く方を優先すると思ってるの?」
「分からないよ、朱莉」乱れた髪を手で掻き揚げながら、挫折感とともに認めた。「君は目立つ女の子だし、学校でもみんなに知られてる。いつだって何十人もの男子が君を追いかけてるんだ。そんな君がなんで僕と時間を無駄にしてるのか、それともただの暇つぶしのおもちゃ扱いなのか、僕には分からないんだよ」
口から言葉が出た瞬間、僕は猛烈に後悔した。
朱莉は物理的な衝撃でも受けたかのように一歩後退した。彼女の唇は薄い線となって引き結ばれ、瞳の輝きがあっという間に溜まった涙で滲んでいくのが見えた。
「バカ……政司くんのバカ……」溢れ出る感情で声を震わせながら、彼女は呟いた。「大バカ者」
僕が反応する間もなく、朱莉は身を翻すと、全身が濡れるのも構わずに豪雨の校庭を突き抜け、校門へ向かって一直線に走り出した。
「朱莉、待てよ!」僕は叫んだ。
後悔の念が稲妻のような衝撃で僕を打ちのめした。二度考える余裕などなかった。ロビーの床にリュックを放り投げ、嵐の中へと彼女の後を追って走り出した。
氷のような水滴が数秒で僕を濡らし尽くしたが、どうでもよかった。学校に隣接する公園の小さな木造の東屋に向かって、彼女が足早に進んでいくのが見えた。彼女はその屋根の下へ避難し、小さく震えながら自分を抱きしめていた。
息を切らし、シャツを体に張り付かせ、髪から水を滴らせながら、僕は東屋にたどり着いた。
「朱莉……」避難所の中に一歩足を踏み入れながら言った。
「近寄らないで!」僕を見ようともせず、背中を向けたまま彼女は叫んだ。「もう冷たくしないって言ったじゃない。離れないって約束したじゃない……それなのに、ちょっと疑っただけで、私たちが過ごしてきたこと全部を私が遊んでるみたいに扱うなんて」
彼女にそう言われ、胸の中が粉々に砕け散るのを感じた。前日の午後に彼女が開いてくれた無防備な扉は本物だったのに、僕の拒絶への恐れがそれを踏みにじってしまったのだ。
僕はゆっくりと彼女に近づいた。今度は迷わなかった。言い訳を探すことも、冷たいプライドに邪魔をさせることもなかった。
「すまない」彼女の背中から一歩もない距離に立ち、絶対的な確信と真摯さをもって言った。「君の言う通りだ。僕は卑怯者だった」
朱莉は沈黙を守っていたが、その肩はまだ震えていた。
「君が僕をおもちゃにしていると思ったからじゃないんだ」喉の奥で心臓が狂ったように跳ね上がるのを感じながら続けた。「怖かったんだ。他の男子が君と楽しそうに話してるのを見て、誰か他の奴が君の隣のこの場所を奪うんじゃないかって、嫉妬したんだ。君のことがこんなにも大切なんだって気づいて、恐ろしくなったんだよ」
朱莉はゆっくりと僕の方へ振り返った。
彼女の顔は雨と涙で濡れていたが、その瞳は僕の息を呑ませるほどの強熱で見つめてきた。
「他の誰かなんていないよ、政司くん」
感情を込めた囁き声で告白し、彼女は僕の方へ一歩踏み出し、濡れたシャツの胸元を両手で強く掴み込んできた。「最初から他の誰かなんていなかった。私が見たいのはあなただけ。一緒にいたいのはあなただけなの」
嵐の咆哮が響き渡る中、僕たちは見つめ合った。恐怖によって築き上げていた防衛的な距離感は、その木造の避難所の中で完全に霧散していた。
僕の胸の上にある彼女の冷たい手を優しく包み込み、自分の吐息の近くで彼女の体温を感じた。
「分かってる……今はもう分かってる」
指の腹で彼女の頬から雨の雫を拭いながら、柔らかく答えた。「もう二度と疑わない。約束する」
朱莉は安堵の長い溜息とともに僕の胸に額を預け、僕がどこかへ消えてしまわないか恐れるようにシャツを強く握りしめた。
外では嵐が依然として猛威を振るっていたが、小さな東屋の中には完全な平穏が戻り、避けられない結末へと向かう道がクリアに開かれていた。
雨の中で全身濡れてしまった代償はすぐにやってきたが、その約束の温もりは、翌日一日中僕たちを包み込んでいた。
文化祭の最後の準備をずっと穏やかな雰囲気の中で終えた後、帰宅する前に、朱莉は静かに僕を屋上へと誘った。
屋上の午後の風は冷たく、絶え間なく吹き抜けていた。夕暮れの光が遠くの雲を金色と紫色のグラデーションに染め上げていた。
朱莉は金属の手すりに背をもたれかけ、風になびく髪を揺らしていた。彼女は僕の脈拍を即座に跳ね上がらせるほど、純粋な無防備さで僕を見つめていた。
「政司くんのことが好きになっちゃった」風が空中で押し留めたかのような、甘い囁きで彼女は告白した。「素っ気なくしようとしてた政司くんじゃなくて、本当の政司くん……陰でみんなを気遣ってくれて、バカなぬいぐるみを取ってくれて、雨の中で私を探しに来てくれた政司くんが」
彼女の言葉を聞いて、全身の皮膚に鳥肌が立った。胸の奥を巨大な温もりの波が駆け抜けていく……しかし、僕が彼女に向かって一歩踏み出そうとしたまさにその時、現実が氷水のバケツのように僕を殴りつけた。
乾燥した悪寒が僕の体を麻痺させた。
ループだ。
この一週間の幸せ、笑い声、プロジェクト、そして彼女の存在に浮かれすぎて、時間がいつでも巻き戻り得るのだということを完全に忘れていた。
もし明日、一日がリセットされたらどうなる? 彼女の気持ちを受け入れ、約束を交わしたのに、目を覚ました時、彼女がこの出来事を何一つ覚えていなかったら? 未来が絶対的な不確定要素である僕に、誰かを縛り付ける権利などあるのだろうか?
疑念が僕の心を苛んだ。さっきまで感情を映し出していた僕の顔は、青ざめていった。
「朱莉……僕は……」僕は後ずさりしながら吃もった。手が微かに震え始めていた。「受けるべきなのか……今すぐ君の気持ちに応えられるのか、分からないんだ」
突然の僕の後退に、朱莉はパチパチと瞬きをして戸惑った。彼女の顔から笑みが消え去り、困惑と恐れの表情に取って代わられた。
「政司くん……? 何を言ってるの?」震える声で彼女は尋ねた。
「言えないことがあるんだ……君には説明できない問題が」僕は彼女を抱きしめたい衝動と戦いながら、もどかしさに拳を握りしめた。「君に約束した未来を果たせないかもしれないのが怖いんだ。何の前触れもなく状況がまた変わってしまった時、君を傷つけるのが怖いんだ」
それに続いた静寂は、身を裂くようだった。
再びそんな壁を作ってしまう自分自身を呪ったが、彼女を僕の時間迷宮に巻き込むことへの恐れは、他の何よりも恐ろしかった。
朱莉は僕をじっと見つめていた。ついに涙が彼女の頬を滑り落ちたが、以前のように振り向いて逃げ出す代わりに、彼女の瞳には激しい決意の光が宿っていた。
彼女は大股で僕に向かって二歩踏み出し、一気に距離を詰めた。
「そんなのどうでもいい!」
感情で声を破裂させながら彼女は叫び、僕のシャツの胸元を強く掴んだ。「あなたが怖がってようが、私に言えないことがあろうが関係ない! 明日のことなんてどうでもいい、私にとって大事なのは今日のあなたなの!」
涙に濡れた彼女の純粋な瞳を見つめながら、僕は凍りついていた。
朱莉は息を吸い込み、オレンジ色の空を見つめながら屋上の端へと一歩踏み出すと、胸いっぱいの力で地平線に向かって叫んだ。
「政司くんのことが好きなの! 大好きなんだよ、大バカ者ー!!」
彼女の叫び声の残響が、誰もいない校庭全体に響き渡った。
彼女は息を荒げ、頬を夕焼けのように真っ赤に染め、顎から涙を滴らせながら再び僕の方を振り返り、挑発的で美しい笑顔を届けてくれた。
「言っちゃった。だから、私から逃げようとしないでよね」
そこに立ち、髪を乱し、僕のために泣きながら笑っている彼女の姿を見た。僕の迷いが完全に消えたわけではなかったが、ループの重みなど、彼女の感情のインパクトに比べればちっぽけなものに思えた。
僕は彼女に向かって一歩踏み出し、明日や時間の巻き戻りなど気にせず、次に何が来ようとも立ち向かう覚悟を決めて、彼女の手を強く握りしめた。
「ぼ、僕も……僕も君のことが――」
その時、鈍い耳鳴りが僕の頭骨を貫いた。
一瞬で空気が凍りついた。
周囲の世界からあらゆる色彩が失われ、深みのある氷のような青へと染まっていった。夕暮れの金色の光は、吹き消されたローソクのように一瞬で消え去り、息の詰まるような暗闇だけが残された。
耳元で高いビープ音が鳴り響き、足元の床が千々に砕け散ったかのように、重力感が完全に消失した。
カチッ。
瞬きをした。そして、また始まったのだ。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
下の☆☆☆☆☆で評価、またはブクマなどをしてくださると、とても励みになります!




