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Paradise Eclipse ―楽園適性試験?まさかというかやはりというか、これデスゲームですよね?―   作者: 針々
第二章 銃士編(仮タイトル) 

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7/7

Stage2-1 生存者たちの朝。


混乱に満ちたボス部屋で佇む僕達…。

誰も言葉を発しなかった。


15分。


いや、もっと長かったかもしれない。


時間の感覚すら曖昧になるほど、僕たちは現実を受け止めきれていなかった。


  「とりあえず、街に戻ろうか…」


  「そうだね…」


優が答えたのを皮切りに、他のみんなもとぼとぼと歩き出す。


  「街までの帰り道でも、モンスターがポップアップするかもしれない。気を付けて行こう。」


  「うん…」

  「おう…」

  「…」


ボス攻略の喜びから一気に突き落とされ、さすがの3人も意気消沈しているようだ…



  「なあ兄ちゃん、さっきのメッセージ、やっぱりガチなんかな?」

   桜木が話しかけてくる、声にいつもの元気がない。


  「さぁ…分からない…でも一度HPが0になると再挑戦はできなさそうだ。

   これまで以上に慎重に戦うしかない。」


   「そうか…」


その会話を最後に皆黙り込んでしまう。

元来た道を戻り、優達と合流した新宿駅前まできた。


  「じゃあ、僕たちはここで…皆さん本当にありがとうございました。

   最後まで生き残って下さい…。」


そう言って、細川君・合田君は去っていった。


  「じゃあな、兄ちゃん達、またどこかで会おうや」

少しだけ気持ちが落ち着いたのか、声の大きさが少しだけ戻った桜木がそう言い、仲間たちと去っていった。


そして駅前の広場には僕達だけが残る。

時刻は0時50分


  「今日はもう遅いし、どこかに泊まろう」


  「そうだな…さすがに眠くなってきた」

  全然眠たくなさそうな樹が答える。


地図屋で買ったマップを見るとどうやら近くにホテルがあるらしい。


新宿の街は静かだった。

つい数時間前まで攻略の喜びに沸いていたプレイヤー達も、

今は皆うつむきながら歩いている。


4人でホテルまで移動し、4人部屋に入る。

そして4人ともベッドに寝ころび、ぽつぽつと話し始めた。


  「これからどうなるんだろう…」

   優が不安げにつぶやく。


  「しばらくすれば、試験の担当者がこのプログラムを中止してくれんじゃねーの?」

   樹が少し期待を込めて言う。


  「どうかな。管理者権限の移譲まで含めて全部計画通りだったなら、望みは薄いと思う。」

   聡が樹の希望を砕く。


  「いやでもさ、こんなの法律的にアウトだろ!親たちが気づいて試験の担当に連絡してくれんじゃね?」

   樹が別の意見を出す。


  「ほぼないね、このEDENプログラムは期限がはっきり決められていない長期試験って伝えられているから。

   少なくとも半年やそこらじゃ誰も騒がないと思う。」

   聡は即答した。


   「まじかよ…」


再び重い沈黙が落ちる。

不安を抱えたまま皆ねる準備を始めた…



(このままじゃみんな眠れないか…よし!)


 「みんな、よく聞いて」


僕の声に3人がベッドから起き上がり、僕の方を見る。


  「この試験は今まで僕達が生きてきた中で最大の壁だ。

   ゴールは遠く、辿り着けるか分からない。」


僕の話をみんな真面目に聞いている。


  「でも、僕、負けるつもりないんだよね。今までだってずっとそうしてきた。

   最初から白旗上げて降参なんて…ありえない!」


僕の話を聞き、みんな考え始める。


そしてしばらくの沈黙の後、樹が声を上げる。


  「…確かに、バスケでもどんな強いチームが相手でも最後まで食らいついて勝ってきた!

   今回の試験も同じだ!!」


  「実際、今回第一フロアは攻略できた。少なくとも不可能じゃない。」

   聡がそう呟く。


  「確かに、僕達が揃えば無敵か!」

   優がいつもの元気を少し取り戻したように答える。


   「そう!僕ら4人が揃えばどんな相手にだって負けっこない!」


   「「「アハハ…」」」


(よかった、みんな少しだけ元気を取り戻したみたいだ…)


  「明日のことは明日考えるとして、今日はもう寝よう!」


  「だな!」樹が答える


そうして部屋の電気を消し、長かった試験の一日目は終わった。

電気は消えた。


けれど、誰一人としてすぐには眠れなかった。


目を閉じるたびに、


『死亡者数 23855』


という数字が脳裏に浮かんだからだ。


この先、その数字に、自分が加わるのかもしれないのだから。


-------------------------------------------------------------------------


世紀歴20×0年4月11日 9時00分


アラームの音で目が覚める。

肌に触るベッドの質感や枕の柔らかさで、昨日あったことは全て夢だったのではないかと疑ってしまいそうになる。

しかし、視界に映る自分のHPバーがここが現実世界ではなく、今自分に起きていることは紛れもない事実であることを示している。


ベッドから起き部屋を見渡すと、優はすでに起きていた。


  「おはよう。」


  「あ、玲、おはよう…」


優の声には元気がない。

突然デスゲームに囚われたと知ったことが昨日の今日のことだ、無理はない。


  「うーん…」


  「あー、良く寝た!」


聡と樹も起きたようだ。


  「なんか一晩寝たらすっきりしたわ!腹減った、朝メシ行こう!」


樹は、切り替えが早いようで、元のペースに戻っているように思う。


  「だね、そういえば昨日から何も食べてないじゃん。」


全員、身支度を整えホテルから出る。

ホテルの支払いをするときに、持っているコインが増えていることに気が付いた。


(ボス攻略の報酬…全部で大体12000コインか…)


昨日の知らせが来る前ならば大喜びしていただろうが、今はそんな気分ではない。


大通りに出ると、ちらほらとプレイヤーを確認できた。

しかし、全員浮かない顔をしているように見える。


  「腹へった~~!何食う?」


  「よく食欲なんて出るね。僕達この試験に閉じ込められたんだよ?」

   聡が少しイラついたように樹に言う。


  「そりゃそうだけど、考えたって仕方ないじゃん!それに腹は減っては戦で死すっていうじゃん?」


樹が答えるが、そのことわざは若干間違えているぞ…


  「それを言うなら戦は出来ぬじゃない?」

   優がすぐに訂正する。


  「まぁ大体でいいよ!それに、悩んでも悩んでなくても変わらないなら、悩むだけ損じゃん!」


樹のいう事は確かに一理ある…が、そう切り替えられる人間は多くはないだろう…


  「はぁ、言うだけ無駄か…」

   聡は諦めたようだ。


話をしながら歩いていると、食品店を見つけた。

中に入ると、おにぎりやサンドイッチなど現実世界と変わらない食品が並んでいた。


僕は、その中からツナおにぎりを選ぶ。

全員が朝ごはんを購入したことを確認し、近くにあったベンチに座る。


「そういえば、昨日のボス戦のドロップ品でなんかいいやつドロップした?」

おにぎりを大口で頬張りながら樹が皆に尋ねる。


その言葉を聞き、僕は自分のアイテムボックスを確認する。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

【ドロップアイテム】日付降順

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


▼装備


【レア】

エグゼキューター ×1

分類:双剣



━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


▼素材


騎士の魔核 ×3


スペード鋼 ×15


黒鉄の欠片 ×5


スペードの紋章 ×1


クイーンズローズ ×5


女王の血晶 ×3


ハートクリスタル ×5


王家の勅令書 ×4


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


▼消耗品


高級HPポーション ×5


高級SPポーション ×5


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



(エグゼキューター…双剣か…ステータスは…)



━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

【エグゼキューター】


レアリティ:R


スペード騎士が使用していた双剣。

処刑人の名を冠する鋭利な剣。


ATK:+15

DEF:+5

AGI:+10

クリティカル率上昇

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


(敏捷補正+10?、めちゃつよじゃん!!)


(でも、僕は双剣は使わないな…おすそ分けするか…)


  「みんな見て!レア武器ドロップしてる!」


三人が僕のメニューを覗き込む。


  「エグゼキューター?!かっけぇ!」


  「ステータス補正すご!」


  「玲、これ装備しなよ!」


樹、優、聡それぞれ口々と絶賛する。


  「うーん、僕はショートソードで行くつもりだから、双剣は使わないかな。

   だれか使う人いない?」


  「これ使わないのもったいねーよ!双剣使いになっちゃいなよユー☆!」

   樹がアメリカ人みたいに双剣を推す。


  「うーん、片手をフリーにできるショートソードが僕には合ってると思うんだよね~」


  「そか、俺も両手剣だしな~」


  「じゃあ、僕が使っても良い?」

   優が遠慮がちに僕に尋ねる。


  「もちろん!じゃあアイテム渡すね!」


  「あ、待って、僕のドロップ品にスペードナイトアーマー スペードガントレット って防具あったから代わりに渡すね!」


  「2個もいいの?」


  「いいよ!双剣のステータス補正凄いし!」


お互いの条件のすり合わせが完了した。


  「じゃ、じゃあ、交換こなんだな(ぐふふ)」

   優からの提案にオタク特有の口臭ボイスで答える。


  「キモっ!」

   優がドン引きしている。

   長い付き合いなんだから、そろそろ慣れてほしいものだ…


そんなやり取りの中、僕と優のドロップ品の交換は終了した。


優から貰った装備を確認する。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


名称:スペードナイトアーマー

分類:軽鎧


ATK:+0

DEF:+10

AGI:+4


特殊効果

・斬撃耐性+10%

・被クリティカル率-5%


説明

スペードの騎士が身に纏っていた黒銀の鎧。

軽量ながら高い防御性能を誇る。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


名称:スペードガントレット

分類:腕防具


ATK:+4

DEF:+6

AGI:+2


特殊効果

・剣スキル威力+3%

・武器弾き成功率+5%


説明

スペードの騎士が装備していた籠手。

剣撃時の衝撃を吸収し、

安定した攻撃を可能にする。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



(この2つを合わせると、完全に僕が貰いすぎだな…今度、優に何かお返ししよ…。)

そう考えつつ早速装備してみる、すると黒と銀を基調とした胸当てと腕防具が僕の体に装備された。


(カックイィ!!)


気分が上がったところで他の二人にも何がドロップしたかを聞く。

  「聡のドロップ品はどんなかんじ?」

気になったので聞いてみる。


  「僕は装備アイテムはスペードガントレットだけだった。」


  「お、ということは僕と、お、おそろいなんだな(デュフフ)」


  「……………キモ」


(長い沈黙の後に辛らつな返答が来た。…思春期かな!?)


  「お!俺なんかよさそうなアイテムドロップしてる!」

   樹が大声を上げる。


  「えーー見してーーー」


僕、優、聡が樹のメニューを覗き込む。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


【レアドロップ】


名称:《女王の王冠の欠片》


ハートの女王が身に着けていた王冠の欠片。

一定数集めることで装備の作成が可能になる。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


  「レアドロップじゃん!」


  「これは何個か集める必要がありそうだね…」


優、聡が口々に感想を述べる。


  「装備品は無かったか…、これから第2フロアに行くわけだし、一度装備屋に行ってみようよ!」

   僕の提案に3人が頷く。


今いる場所から、装備屋までの距離はそこまで遠くなかった。

大通りに店を構える装備屋に4人で入る。


  「らっしゃい!」

地図屋の軽薄そうな男とは違う、いかにも武器屋というようなダンディーで大柄な男性NPCに声をかけられる。


店を見渡すと、剣や斧、盾などさまざまな武器を扱っているようだ。

そして店をぐるりと一周した後、3人の顔を見る。樹は元気そうだが、優、聡の顔はあまり晴れない。




   (しゃーない、ここは僕がひと肌脱いでやるか!)



突然立ち止まり、壁に掛かっている1本のショートソードを凝視する。

僕のその怪しげな行動に3人が集まってくる。


  「玲、どうかした?」

   優が声をかけて来る。


気持ち声を低くして、もったいぶるように言う。

  「これは…妖刀だな…」



  「いや、それはただのショートソードだ」

   僕の声にすかさず、NPCが反応する。


その言葉を無視して掛けてあるショートソードを手に取る。


  「おれの運とコイツの呪い、どっちが強ェか試してみようか…」


  「いや、それはただのショートソードだ」

   僕の言葉に反応した武器屋NPCが再び言う。


  「玲、お前まさか…」

   漫画を読むのが好きな樹はこれからの僕の行動に気がついたみたいだ…


3人の注目を浴びながら、ショートソードを上に投げる。

そして、回転しながら落ちてくる剣の軌道に自分の右腕を出す。


そして…


剣は僕の腕をかすめ、床に突き刺さった。

HPバーがほんの少しだけ減少する。


  「もらわねェ!!!」

僕が大声で叫ぶ。


  「「「あははははは」」」


  「馬鹿だ、馬鹿がいる笑笑」


  「こんなゾロ嫌だ笑」


3人が爆笑している。

聡なんて笑いすぎて床に突っ伏している。


(ぼ、僕の道化っぷりを楽しんで貰えたようだな…)


しかし一名だけ笑っていない人間がいた。そうNPCのおやじだ。


  「試すなら買ってからにしろ」

  真顔で言われた。


(ゴメンなさい…(笑))


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


武器屋を一通り見たが、今自分たちが身に着けている装備以上のものはなかったため、

次の目的地である第2フロアへ向かうことにした。


第1フロアから第2フロアへ向かうゲートは一つだけでは無い。

どうやらボスが倒されたと同時にフロアに約10個ほど出現しているようだ。


MAPを見ると今僕達がいる新宿駅の近くにもどうやらあるようだ。


ゲートに到着した瞬間、第1フロアをともに過ごしたMAPの役割を終えた。


「これがゲートか…」


ゲートの周辺にはプレイヤーがたむろしており、中にはゲートに出たり入ったりしているプレイヤーもいる。


(潜ったら罠でしたってことはないみたいだな…)


他のプレイヤーに習い僕達もゲートの前に立つ。

ゲートの扉は空いており、扉の先には次のフロアの景色が見えている。


  「よーし!新しい冒険に出発!」

  樹が元気いっぱいそう言いながら扉を潜る。


それに続き、僕達もゲートを通る。

そして一瞬にして東京の都会の風景から中世のヨーロッパのような景色に変わった。


  「すっげーーー!」


  「これは、すごいな…」


  「RPGって感じ…」


樹、聡、優がそれぞれ感想を述べる。


(これから、僕達の新しい戦いが始まるんだ…)


そう思った、その時だった。


視界の端に見慣れない通知が表示される。



━━━━━━━━━━━━


【第2フロア到達報酬】


新システムが解放されました


━━━━━━━━━━━━



第2話に続く…。















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