第60話(累計 第233話) エピローグ2:ダムガールは、夢を語る。
「配信をご覧の皆さま。わたくしは貴方がたのいう第11257世界に住まう一人。マグレイア王国、ヴァデリア伯爵アヴェーナ家が長女。そしてヴォルヴィリア公爵イグナティオさまの婚約者にして、先日、王陛下よりアヴェーナ女男爵を賜りましたアミータと申します。これまで、わたくしの行動を見守り頂き、ありがとう存じました」
今日は、異世界に向けての配信映像の撮影日。
ヨハナちゃんにドレスの着付けと綺麗な化粧をしてもらい、ナイト798さんの持つカメラの前で話している。
……前世では、テレビには映してもらった事は無かったわね。まさか、中世風異世界に転生後にテレビカメラの前でお話する機会があるなんてびっくりなの。
「これから、わたくしの物語について、順番にお話してみます。何故、わたくし、アミータがダムに拘るようになったのか。それは、前世にあります。わたくしには別の世界、貴方がた程ではありませんでしたが、宇宙進出の初期段階にあった世界にて、土木技術者として学び、働いていました」
わたしは、貴族令嬢らしい薄い笑みを浮かべながら、これまでの事を語る。
ナイトさん曰く、これまで配信で直接本人が物語を語る例はなかったらしい。
盗撮に近い形での配信ばかり、ことファンタジー系世界では配信の意味すら理解されるはずもなかったそうだ。
「……などなどのことがあり、わたくしには科学技術が進んだ世界。前世の記憶があります。なので、この配信についても理解しているつもりです」
カメラの向こう側、少し心配そうな顔のティオさま。
彼の左右にはドヤ顔のヨハナちゃん。
ウムウムという顔のファフさんがいる。
……最初はティオさまの王都の洪水を防いだことから始まったんだよね。
「わたくしは、八歳の時に前世の記憶を思い出しました。それ以降、前世でみた巨大建築物、ことダムをもう一度見る為に行動を始めました」
後ろの方ではアル先生と我が技術者たち。
ドゥーナちゃん、親方、ジュリちゃんがいる。
誰もがカメラに映し出された映像、サブモニターやカメラの仕掛けに興味深そうだ。
……まだ放送技術、というか電波関係はそこまで開発できていないからね。近日中に電信やレーダーとか作らなきゃですわ。
「その途中にて、わたしの行動。貴族令嬢らしからぬ行いに対し反対したり、ジャマをしたりする人も出てきました」
しょうがないという顔の妹、エリーザ。
彼女の横には警護役と言い張るソルくんがいる。
……あらあら。ソルくんってば、リナちゃんだけでなくエリーザにも気があるのかしら? エリーザも聖剣の持ち主だから、そんなに弱くないよ。
「そして、わたくし達は魔王陛下と戦う事になったのです。彼らは貴方がた。商社から兵器や技術を得、わたくしを執拗に狙ってきました」
わたしが名前を出すと苦笑する魔王、イヴァンさま。
その横で仕方がないでしょという雰囲気のグリシュさまがいる。
……まさか、お互いに食卓を囲む仲間になれるなんて、お気楽思考のわたしでも思わなかったの。そういう意味では商社の関与にも感謝よね。
「ですが、わたくしの背後には多くの守るべき人たち、幼き子どもがいました。わたくしの行動で、多くの魔族たちとも共に歩むことができだした頃。魔族の子たちと只人の子どもたち、多くの種族の子たちが共に机を並べて学ぶ事が始まったばかり。なので、わたくしは負ける事が許されませんでしたわ」
グリシュさまの横には、奥さまのメレスギル。
彼女の胸には、新しく生まれた命。
リナちゃんの弟がいる。
肌が淡い緑系なのとエルフ耳、夫婦の姿かたちがちょうど半分になったような可愛い赤ちゃん。
「なので、わたくしは多くの兵器を開発。ゴブリン王が娘、リナさま。リナちゃんを旗印に魔王陛下と戦いを挑みました。リナちゃんは、共に学校で学び、多くの人々と仲良く暮らせる御子。これからの魔族との共存に大切な親友です」
親友と呼ぶと恥ずかしそうなリナちゃん。
お姉さん兼警備役のディネさんと愛おしい目線で弟を眺めている。
「戦いは、わたくし達の勝利に終わりました。しかし、それは剣と弓、魔法の戦いに、機関銃と鉄条網、榴弾砲と戦車に飛行機を持ち込んだこと。今まで以上に多くの犠牲者を生み出す地獄の戦場を生み出してしまったのです。それは、わたくしの前世世界での世界大戦の繰り返し……」
わたしは目線をカメラから落とす。
わたし自身は戦いなんてしたくない。
しかし、世界は非常で残酷。
前世でも、わたしは独善的なテロリストによって命を失った。
この世界でも、同じく力を持って意見をごり押し。
自分たちとは違う者たちの命なんて何も感じずに殺していく。
「悲しい事だと思いますが、わたくしは自分と大事な人々を守るために力を振るう事に躊躇はしません。それは、貴方がたへも同じです。貴方がたが見ている映像の元、そこに生きる人々はゲームのキャラではない。生きる為に足掻き、苦しみながらも幸せを求めている者たちです」
わたしは視線をカメラに向け、カメラの向こう側。
この映像を見ているであろう視聴者に訴える。
彼らが見ているのは、生きている人間だと。
「ですので、彼らをバカにして笑ったり、愚かと蔑んだりしないでください。誰もが生きる為に一生懸命。そこには善悪は無いのですから」
わたしの言葉に、ティオさまは微笑み返してくれる。
……ナイトさんが涙ぐんでいるのは、よく分からないんだけどね。
「ですので、わたくし達の生き様を見て、笑い、涙を流し、感動してくださると嬉しいです。まあ、個人のプライバシーには注意してくれると嬉しいですね。わたくし、これでも今年中には結婚を控えた『か弱き乙女』ですので」
か弱き乙女という言葉で爆笑する皆。
録画中というのを忘れているのだが、まあいい。
わたしにシリアスは正直似合わないのだから。
……一番笑っているのが、ヨハナちゃんというのが困っちゃうの。




