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第12話(累計 第144話) ダムガール、ルキウスくんのご両親に対面する!

「こ、この度は野の花咲き誇るの輝かしい季節に子爵さまご夫婦にお会いできましたことを、嬉しく思います。わたくし、ヴァデリア伯爵アヴェーナ家は長女、アミータと申します」


「そんなに緊張しなくてもいいですわ、アミータさま。貴女さまの事は息子から幾度も聞いてますから。なので、初めてお会いできた気がしませんですの。是非、我が息子の嫁にと思ったのですが、既に公爵閣下とご婚約成されていますのは、少々残念です。ねえ、貴方」


「そうだね、お前。アミータ嬢には是非、公爵閣下に振られた際には当家の嫁に……。あ痛! 冗談に決まっているじゃないか、ルキウス。公爵閣下を前にして本気でこんな事を言うはずもないだろう? ということですので、御気を悪くなされませんように。公爵閣下、アミータさま」


「は、ははは……。ええ、ボクは些細な事は気にしませんですので、大丈夫ですよ。ルキウスさまには、日頃よりお世話になりっぱなしですし。ね、アミお姉さん?」


 国境の領地、エルメネク子爵領地に到着したわたし達。

 ルキウスくんの案内で領主公館(カントリーハウス)に導かれ、今は夕食でのレセプション。

 子爵ご夫婦にご挨拶をしたのだが、わたし達はご夫婦にすっかり振り回されている。


 奥さまにはぎゅと握手された上で、手がぶんぶん振り回され、キラキラとした目でわたしに親し気に話しかけてくれる。


 ……ルキウスくんの嫁になんて、何言いだすのぉぉ、この御両親は!?


 そしてお父さまになる子爵さまも奥さまのノリに話を合わせてくれ、ティオさまに振られたら嫁に来いと半分真顔で言ってくださるのには、困ってしまう。


 ……子爵とも思えないルキウスくんのご両親らしい発言だけど、ルキウスくんの性格は前世込みのはず。なのに、どうして性格もここまで似ているのかしら?


「ええ、ティオさま。もう、困ってしまいますわ、子爵さま。わたくし、そんなに立派でも無いただの暴走娘ですもの。思うがままに行動してしまい、今回の様に厄介な事にも首を突っ込んでしまってますわ」


 ほめ殺しにあっている恥ずかしくなったわたし。

 頬が熱いのを感じながらも、自分の至らなさを語る。

 実際、法王国入りの案件はわたしの迂闊さも原因なのだから。


「御謙遜なさらないでいいですよ、アミータお姉さん。両親はこう言ってますが、僕はお姉さんの事を恋愛関係なしで大好きです。これからも共に世界をステキなものに変えていきましょう」


 満面の笑みでわたしへと顔を向けてくれるルキウスくん。

 まだまだ幼さを感じるが凛々しさを増している顔で、わたしの事も見えていないはずだが笑みを返した。


 ……ティオさまに出会ってなければ。そして、中身を知らなきゃ惚れてたのかもね?


「法王国の件は私共でも色々と思う次第ですので、皆さんお気になさらずに。さて、アミータ嬢の事はこのくらいで。そこの小さくお可愛い嬢さんが、噂のリナ姫でいらっしゃいますね」


「子爵さま。ゴブリンでありますわたくしに対しても姫と呼んで頂き、ありがとう存じます。わたくし、ゴブリン王グリシュが娘、リナと申します。これまでのゴブリン族が行いました罪に関して、父になり代わり謝罪させていただきます」


 子爵さまの視線が、わたしからリナちゃんに向かう。

 しかし、その視線はとても柔らかい。

 小柄なリナちゃんの視線へ合わせる様に腰をかがめる姿に、慈愛をわたしは感じた。


 ……奥さまの微笑みもとっても柔らかなの。生まれつき盲目だったルキウスくんが、とても愛されて育ってきたのがよくわかるわ。


「過去は過去。戦争で命を奪い合うのは正直お互い様です。もう変えられない過去を悔いすぎるよりも、現在。そしてこれからの未来を見てまいりましょう、リナさま」


「誠にありがたいお言葉。感謝致します。王国の方々には理性的な方が多く、わたくし共も沢山助けて頂きました。このご恩、必ずお返しせねばと父とも話しております」


 実に建設的な意見でリナちゃんを慰める子爵さま。

 その発言には政治的な意味も多く含まれるのであろうが、リナちゃん個人に対しては悪意は全く感じられない。

 大公様の陣営では、リナちゃんを褒めつつもゴブリン風情と差別するような感じを多数感じたのとは大きな違いだ。


 ……もとより盲目で差別されがちなルキウスくんの親として、何の罪もない利発で善良な幼子が差別されるのは嫌だと思うよね。わたし自身、差別心が無いとは断言できないけど、それでも何の罪もない子たちが苦しみ嘆くのは見たくないわ。


「さあさあ。小難しいお話はこのくらいにして、食事にしましょう。わたくし自慢の当地特産品とシェフの料理をご堪能くださいませ」


「ああ、そうしよう。では、皆の健康と、今後の発展。リナ姫らとの平和で幸せな暮らしが続きますように。乾杯!」


 奥さまからの言葉で、夕食会は始まる。

 彼女の発言通り、中々に豪勢な夕食。

 続々と給仕される料理は、王都や公爵領では見慣れないものばかり。

 給仕役のヨハナちゃんやファフさんも、興味深く料理に目を向けている。


「母上、今日は随分と奮発しましたねぇ。匂いからして普段使わぬ香辛料も沢山使ってますし」


「だってぇ。可愛い息子のお友達やカノジョがいらしてくれるんですもの。少々無理も致しますわ」


 ……なるほど。これはいつもの夕食では無いと。身ぎれいだけど贅沢を好まないルキウスくんの実家らしいわね。


 確かに王家のレセプションほどの豪勢さは無いが、一品一品ごと素材を生かした上品な味わい。


 ……王都の料理がフランス風なら、こっちはイタリアやスペイン風味を感じるの。南になるから、生産作物も違うし。


 肉だけでなく川魚も上品に処理されており、生臭さも感じない。

 更に南らしく、北では見られない柑橘系もソースやデザートに用いられているのが、実に良い。


 ……パンは白い小麦パンなのは当然だけど、パスタや陸稲によるパエリアもあるのが良いよね。これが公爵領や実家だと、どうしてもライムギパンが多くなるわ。


「アミお姉さん。久方ぶりのコメはいかがですか? ボクが母上にリクエストしておきました」


「ルキウスくん。あまり大っぴらに怪しい発言は困りますの。確かに懐かしく美味しいんですが」


 小声でとはいえ、領地名産である米をアピールしてくるルキウスくん。

 前世で「お米の国」生まれだったわたしにとって、転生後初のコメ料理に対し、思い入れが無いはずも無い。

 ただ、わたしの転生を知らない者がいるであろう、この場でのコメントとしては困ってしまう。


「ああ、アミータ嬢。当方では細かい事は気にしませんので、ルキウスのバカ発言は放置でかまいません。こいつの『前』話には、結構うんざりなので」


「ええ。幼い我が子から生まれる『前』がどーのとか、聞けば困惑しますものね、うふふ」


「え!? ルキウスくん、ご両親にどこまでお話ししているんですか!? あ!!?」


 ……子爵ご夫妻っては、わたしの『秘密』にまで気が付いているのぉ!? リナちゃんには、まだ話してなかったのにぃぃ。


 子爵さまたちの発言に驚き、つい反応してしまったわたし。

 迂闊な発言をしてしまったことに気が付き、リナちゃんの方へ顔を向ける。


「アミータお姉さまが『普通』でいらっしゃらないのは、今に始まった事ではございませんです。それに、これまでの数々のご言動や他の方々のお言葉からも、薄々は気が付いてますのでお気になさらず。また別の機会にでも、わたくしには詳しくお話しくださいませ。もちろん父にも迂闊には話しませんので」


 しかし、賢いリナちゃん。

 わたしに笑顔を向けつつ、既に察してますよと話してくれた。


「リナさま。貴女さまに秘密にしていた事は、ボクからも謝罪させて頂きます。アミお姉さん、後は貴女からお話しくださいませ。子爵さまご夫婦に置かれましても、説明させては頂きますが、くれぐれも他言は……」


「そこは十分理解していますので、ご安心を。公爵閣下、アミータ嬢。ウチのバカ息子からして世界から疎外されかねない存在。そのバカ息子を大事に保護していただけるのですから、当方は貴女がたの敵に回る事は決してございません。今後とも、ルキウスを宜しくお願い致します」


「はい、今後とも宜しくですわ」


 とりあえず子爵さまから敵にならない言質が取れたので一安心するわたし。

 味方になると明言しないのが、実に貴族らしい言葉である。


 ……つまり利がある限りは味方ってことだから、それはそれで安心ね。ずっと利を与えていたら良いんだから。


「では、こちらからも情報をお流しします。法王国ですが、今国内は大荒れです」


 そのあと、法王国内での情報が子爵さまからもらえたのは実に良かった。

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― 新着の感想 ―
「こいつに飽きたら連絡をくれ。」って、冗談にも程がある(笑) 最後に「2人のために万歳」とかいうと武田鉄矢のJODANですよね。
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