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第5話(累計 第137話) ダムガール、旅の途中は暇でたまらない。

「わたくし、こんなに暇をしてて良いのでしょうか?」


「何もかも問題無く進行していますから、御安心しておくつろぎくださいませ、アミちゃん姫さま。リナちゃん姫さま、お茶の追加はどうですか?」


「ありがとう存じますわ、ヨハナさん。アミータお姉さまが立派な自動車。確か『キャンピングカー』というものでしたかしら? それを作ってくださったおかげで旅も快適ですし、凄いスピードですわ。以前、王都から公爵領まで来る際には馬車で一週間は必要でしたのに、まさか一日でいけるなんて驚きですの」


 道路状況も良く、快適に我がキャンピングカーは一路王都へ向かう。

 これまでのインフラ構築のおかげで王都までの街道は一部を除き、歩道付二車線のコンクリート舗装済み。

 ゴムタイヤも開発出来ている上に、ちゃんとオイル型サスペンションも完璧。

 ほとんど揺れない車内はしごく快適。

 車窓からは、とても早いスピードで流れる村々や往来の人々、そして遠くの山並みが見える。


 ……お昼ごはんはウチの実家で食べて、今は一路王都ね。


「でも、皆さんがお仕事をしていますのに、わたくしだけ楽していますのは、何か悪い気がして……」


 しかし、何も起きずに快適な旅の中。

 わたしは暇を持て余し、つい愚痴をヨハナちゃんにこぼしてしまう。


「アミちゃん姫さまには、王都についてから大仕事。陛下らとの会食が待っております。リナちゃん姫さまを守るためにも、アミちゃんが頑張っていただく必要がありますの。なので、王都までの途上はご安心してお休みくださいませ」


「そうですわ、アミータお姉さま。今はごゆっくりお休みくださいませ」


 しかし、ヨハナちゃんやリナちゃんから休め休めと言われてしまう。

 実際、今晩は夜遅くに王都に到着予定。

 タウンハウスで一泊後、翌日には王城にて簡単ではあるがレセプションが待っている。

 その際に陛下や高官、王都に住む上位貴族らにリナちゃんを紹介するという大仕事も待っているのは、事実。

 かといって、何もしないのでは暇でしょうがない。


 ……といって、ドゥーナちゃんはハンドルは絶対に握らせてくれないし、いくら揺れにくいといっても車内で本は読みたくないわ。


 なお、今回の自動車キャラバン。

 先導のジープ型魔導自動車を始め、途中での必要物を満載したトラック、人員輸送用車両、二台のゴーレム輸送車、更に二台の貴賓客用キャンピングカー。

 その他、複数の警備車両からなる大規模遠征部隊。

 構成員は基本、わたし専属の工兵隊を中心に、グリシュさまやティオさまが選んだ精鋭からなる。

 わたしが乗る女性用キャンピングカーも、運転手も女性が良いとドゥ―ナちゃんが運転してくれている。


 ……でも、馬車での移動だと多くの馬糧。お馬さんが食べる飼料や沢山の水が必要なの。魔導自動車は魔力さえあれば動くから、荷物が少なくなったり、途中の村にご迷惑をかけなくても良いしね。


「しょうがないですから、今後の計画でも練りましょうか。リナちゃん、何か欲しいものはありますか? 可能な限り適えてあげますわ」


「ありがとう存じます、お姉さま。かと言いましても大抵のことは、お父ちゃんやお母さま。そしてディネお姉さまやアミータお姉さまに適えて頂きましたわ」


 暇つぶしにリナちゃんに欲しいモノを聞いてみるが、既にかなえてもらったと満面の笑みを返してくれる。

 邪悪で下品と蔑まれ、更には雑魚扱いと敵味方からもひどい扱いをされてしまうゴブリン族。

 そんな中、母や父、姉からの確かな愛情を受け、母から高度な教育を受けたリナちゃん。

 善良すぎて、逆に心配になるくらいな良い子。

 更に外見も華奢かつ可憐で、誰もが保護欲をそそられてしまう美少女。

 その上に、どこの令嬢にも負けないくらいの気品や気位を持つ。


 ……リナちゃんがこの先、グリシュさまと共に魔族の代表として、皆と仲良く共存共栄できる切っ掛けになると良いよね。


「ほんと、リナちゃんは良い子ね。わたくしにとっては二人目の可愛い妹だわ」


「あ、ありがとう存じます、お姉さま。わたくし、本当に幸せです。お父ちゃん、陛下とはもう二度と会えないと思っていましたし、最悪殺し合う事態も考えていました。ですが、お姉さまたちのおかげで家族全員、仲良く暮らせるようになりましたから。ね、ディネお姉さま?」


「そうですね、リナ。この先も色々あるかと思いますが、わたくしもリナを守り、アミータさまを守ります。それが多くの民の笑顔に繋がる。そう信じていますから」


 眩しい笑顔で、わたしを褒めたたえてくれるリナちゃん姉妹。


「ということで、アミちゃんは大人しく次になさることを考えて、実行前に皆さまに御相談くださいね。もう勝手に行動は勘弁ですの」


「分かりましたわ、ヨハナちゃん。さしあたって考えてますのは、法王国での行動。どうすれば法王猊下をぎゃふんと言わせ、野望をあきらめさせるか。そして聖剣をパクり、もとい借りる事が出来ますかですわ」


「それは難しい問題ですわね。お聞きしました話を総合しますに法王猊下は法王になる際の宣言として、魔族根絶を訴えた様子。更に国内ではステイラ神以外の信仰が禁止されているそうですの」


 ヨハナちゃんに話を振られたので、今後の課題。

 法王一派をどうにかして黙らせるかを話してみると、意外な事にリナちゃんが法王周辺の情報を話してくれる。

 どうして法王国内に詳しいのかと尋ねてみると、


「うふふ。わたくしもアミお姉さまのお役に立てます様、励んでいますのよ。さしあたって神殿の方から教えて頂きましたの。あの方には魔族の子らも差別なくご教授なさってくださいましたから、感謝を告げる機会もありましたので」


 わたしが知らない間に、リナちゃんはちゃんと立場を生かして社交で情報収集をしている。

 情報収集どころか、情報漏洩の方が多くなりかねないわたしよりも充分に優秀だ。


 ……ゴブリン族が愚かだって言い出したのは誰ぇ? 絶対にわたしよりリナちゃんの方が賢いよぉ。


 その後も王都につくまで、わたしはリナちゃんと沢山お話をした。

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