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第4話(累計 第136話) ダムガール、いよいよ旅立つ!

 まだまだ肌寒い早春の朝。

 昇る朝日の中、ピピピと小鳥の鳴く声がわたしの耳にも入ってくる。


「各員、出立の準備は出来たか!?」

「閣下。魔導トラック、それぞれ異常なし。積み荷の確認も出来ております」


 ティオさまの凛とした声での命令に対し、今回同行する各員から準備完了の報告が上がる。

 空が紫から茜色に変わる頃、既にドラゴン形態になったファフさんが朝日に漆黒の鱗をキラキラと輝かせながら、ティオさまやわたしの方へ首を伸ばしてくる。


<坊ちゃま。くれぐれもアミータ姫さまのおっしゃる事を聞き、無茶はなさらぬように。アミ―タさまも御身を大事になさってくださいませ>


「ファフ、そんなにボクに信用無いのかい? 言うに事欠いて暴走する迷走台風のお姉さんのいう事を聞けなんて……。あ! アミお姉さん、ボ、ボクは別にお姉さんが悪いなどとかは、少しも思って……」


「あら、ティオさまも私を暴走台風呼ばわりされますのね、おほほ」


 ファフさんの冗談半分なテレパスに引っかかるティオさま。

 わたしに対し悪口を言ってしまった事に気が付き慌てるのを、わたしは笑いながら揶揄(からか)い返す。


 ……うふふ。慌てるティオさまってとっても可愛いわ。


「アミータお姉さんが暴走台風なのは真実ですし、今に始まった事では無いですね。とはいえ、イグナティオさまも失言です。僕ならもう少し取りつくって……」


「ルキウスさま。あまりお二人で遊ばないようになさってくださいませ。これから長い旅をご一緒にしますのに、お互いに御気分を害されるのはどうかと思いますわ。アミータお姉さま、宜しくお願い致します」


 そこに容赦なく突っ込んでくるルキウスくん。

 あんまりな言葉だが、実際わたしが「暴走台風」なのは否定しきれない。

 これまでも、突発的行動で仕出かした事が多すぎる。

 なので言い返す言葉も無いのだが、わたしの代わりにリナちゃんが言い返してくれた。


<ふふふ。可愛らしいお二人を見ていますと、何かと楽しくなり、ついからかってしまいました。では、先行して飛行いたします。随時、偵察情報をお送りいたしますので、道中の安全はお任せを>


「ファフ、頼むぞ」


 今回、ファフさんはわたし達から先行して空中偵察。

 怪しげな者や野盗、モンスターがいれば通報後、状況次第では攻撃をしてくれる段取り。


 ……街道近郊での事故も報告してくれる予定ね。被害が大きいようなら急いで助けに行かなきゃだし。法王国では、敵のテロも見抜いてくれそう。


 だが、ファフさん単独では通信に偵察と負担が大きいので、彼の背中にある鞍には二人の小柄な女性を乗せる事になった。

 荷物としては軽い方がファフさんも機動性を失わない訳で。


「ファフさん。そして共に飛ばれる飛行隊の方々、お気をつけて」


「はい、アミータ姫さま」


 一人はゴブリン族の若い娘さん。

 グリシュさま直属配下の娘さんで、魔法素質を持っていらっしゃったのでスカウト。

 魔法通信士になってもらった。


「了解です。リナ姫さまもお気をつけて」


 もう一人も魔族、コボルト族。

 小型犬、テリアっぽい可愛い顔の女の子。

 この子も魔法素質があり、更に暗視能力があって見張り役に最適。

 二人ともグリシュさまが推薦してくれたし、リナちゃんも見知った顔の子達。

 信用がおけるので、航空偵察員にお願いした。


 ……リナちゃんからも二人なら安心と推薦されたのが、最終決定ね。ティオさまもリナちゃんの判断を信じたの。じゃなきゃ、大事なファフさんの背中を預けたりしないよね。


<では、お先に!>


 軽く漆黒の翼を羽ばたいたかと思えば、あっという間に上空に上る竜。

 わたし達の頭上でくるりと回ったかと思えば、街道の先へとビュンと飛び去る。

 あっという間に豆粒のように小さくなっていくファフさん(黒竜)


「では、ボク達も出立しますか、アミお姉さん?」

「はいですわ。わたくし達と共に進む者、そして領内に残り守る者。全てに感謝致しますわ」


 ティオさまがわたくしと目線を合わせ、出立を促す。

 ずいぶんと伸びた彼の目線は、殆どわたしと同じまでになった。

 でも、まだまだ可愛さ、あどけなさを残した表情に、わたしは笑みを返す。


 ……あらあら。リナちゃんが泣きそうなの。


 視線の向こうでは、早朝なのに見送りに来て下さったグリシュさまとメレスギルさまが、リナちゃんを抱きしめ合っている。

 ディネさんも嬉しそうで寂しそうな顔だ。


 ……あ、ディネさんもお母さまに抱きしめてもらえたわ。良かったね。


 視線を他にも向ければ、多くの家族が一時の別れの挨拶をしているのが見える。


 泣いているオークの家族。

 抱きしめ合うドワーフ一家。

 握手をしている只人。


 ……皆、愛する人との別れは悲しいよね。あ! アレは見ちゃダメだの!


 視線の端っこで、只人の若い恋人同士がキスしあっているのを見てしまったわたしは、急いで目を外す。

 熱愛光景をみてしまい、わたしはついとティオさまの横顔を見、頬が熱くなってしまった。


 ……誰も失わせないわ。絶対に全員生きて返すのが、わたしの使命!!


「では、皆さま。笑顔を守るために参りましょう! 各員、ご安全に。そして、必ず帰って来ましょうね」


「御意」

「おー!」


 そして、わたし達の旅が始まった。

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