裏謁見〜孤児院長の場合〜
お待たせいたしました!ノママーニのターンです!笑
楽しんで頂ければ幸いです!
また、追放国王も更新しておりますので、そちらも是非読んで見てください!!
その日、俺は登城して謁見の間に向かうのがいつもより遅れてしまった。
理由はというと単純だ。王立学園時代の同期と久しぶりに再会し、いわゆる同窓会のようなものに参加していた為だ。
中には既に二児の父もいて、俺は時の流れを実感した。
若干二日酔いが残っているが、問題はない。俺は急ぎ足で、謁見室への道程を進んでいく。
ふと、謁見室の向こうから言い争いのような声がした。
「っ!・・・・・・っ!」
「・・・・・・。」
今は陛下と宰相様しかいない筈だが・・・・・・。
いや、しかしあのお二人に限って言い争いなんてする訳がない。
耳を澄ませても、まだ距離があるからか、中にいる人間のふ思考は読めない。
ないとは思うが、万が一という場合もある。何かあってからでは遅い。
俺はやや小走りに扉へと近付き、ノックを行った。
「失礼致します!近衛隊謁見の間国王付き小隊第八小隊隊長代理、オーセ・ノママーニ、参上仕りました!」
俺の声が聞こえたのだろう、中の声が止んだ。
ああ、入り辛いなあ。声が止んだから問題はないんだろうけど。
そんなことを考えながら俺は中に入った。
部屋の中にはやはり二人がいた。なんだか気不味そうに俺から目を逸らす。
えっ?なにこの空気。痴話喧嘩を見られたカップルかよ!!
俺は居心地の悪さを感じながらも二人の心を読もうと視線をやった。
(全く、サヨーデは学生時代から本当にうるさいなあ。儂の母親か、こやつは。)
(陛下は学生の頃からたまに幼な子のように我が儘を仰られる。困ったものですね。)
えっ、同級生なん?二人同級生なん!?
ちょっと陛下老けてね?いや、サヨーデ様が若いのか・・・・・・、えっでもそしたら陛下十五歳で即位したってこと?学院卒業と同時に国王就任・・・・・・そりゃあ老けるわなあ・・・・・・っと、やべ、謁見始まっちゃう。
俺はそそくさと所定の位置に着いた。
それを見越したように謁見者の訪れを告げる声が響く。
謁見に訪れたのは孤児院長だった。
(このお方が陛下ですか。なんとも威厳のあるお姿。悪い結果にならぬと良いのですが・・・・・・。)
何というか、すごく良い人そうだ。
でも、やけに不安な気持ちが流れ込んでくるが、どんな問題を持ってきたんだ??
「・・・・・・面を上げよ。」
(ったく、サヨーデのせいで気分が優れない上に教会関係とは、面倒な。よし、今日はムカムカするから高圧的にいこう。)
いや、陛下、それただの八つ当たりですやん!ダメですよ!孤児院長すごい良い人そうですよっ!!
「はっ。」
(むう、何という威圧感でしょう。これが、王の覇気というものですか。けれど、子供達の為にもわたしは引けません!)
院長っ!!すごくプラスに捉えてくださってる!!違うよ!この人八つ当たりしてるだけですよ!!
そんなことを考えている俺の前で、陛下は孤児院長の名前と要件を尋ねた。
(ここでしっかりとした御挨拶を述べれば覚えもよくなる筈だ。)
姿勢を正し、孤児院長は口を開いた。
流石は孤児院長に選ばれた神父様。でも、うーん、変わらないと思うけれどもねえ。
「本日は陛下におかれましては御身の金にも勝る貴重なお時間を小生にお割き下さり、またかような場を設けていただき誠に恐悦至極に存じます。小生はニハクニレイと申しまして、王都に御座います孤児院の院長を務めさせて頂いております。そして、かような場で不躾にもご相談させていただきますことをお許しくださいました陛下の温情に、感激の至りで・・・・・・。」
(・・・・・・何をいうておるのかわからん。まあ、よい。本題に入らせよう。)
陛下っ!?
「堅い挨拶などはよい、理由を述べよ。」
とんでもねえなっ!ほらっ!神父様っ、気にしなくて良かったよ!むしろ難しい言葉は逆効果だったまであるよ!!
孤児院長は口上を遮られ一瞬身体を震わせた。
(くっ、わたしの浅はかな考えでお機嫌を損ねてしまった・・・・・・!)
いや、大丈夫だから!わかってないだけだから!頑張って!!
宰相様は慣れているからか平然とした様子でそのやりとりを眺めている。
(流石は陛下。孤児院長といえども、教会の神父。今のやり取りで機先を制したのは大きい。)
いや、買い被りっ!理解出来なくてぶった切っただけだよっ!!
てか二人とも教会関係者嫌い過ぎでしょ!!昔から仲悪いのは知ってるけども!!
「しからば。孤児院に振られる予算の件でご相談が御座います。」
(ここで狼狽えても仕方がありません。正直にお伝えするのみっ!)
ああ、神父様・・・・・・俺、心が痛いよ・・・・・・。
「で、あるか。」
(金の無心か。金の話はわしにはようわからん。サヨーデに任せよう。)
いや、良いんだけど、清々しいくらいにぶれないなあ、この人。
そんなことを思っていると宰相様が孤児院長に鋭い視線を向けていた。
「ニハクニレイ神父、孤児院の予算は毎年の教会への寄付から割り振られていると伺っておりましたが、それでは足りない、と?」
(しかし妙ですね。結構な額を寄付しているはずですが・・・・・・まさか、私腹を肥している輩でもいるのでは?)
ああ、これはちゃんと問い詰めないと確かにダメだ。さて、神父様、どう答える??
神父様は宰相様の威圧に汗を滲ませた。
「は、はい、それはそうなので御座いますが。ここ最近は戦争もなく景気も安定しております故、孤児自体の数も減っているのですが・・・・・・。」
(何という鋭い視線。陛下の右腕というだけのことはありますね。ううむ、何と伝えようか。)
言い淀む孤児院長を、陛下が手で制した。
(経済も治安も安定して孤児自体は減っているのに孤児院に予算がほしい、か。孤児ではないが孤児扱いになる子供・・・・・・娼婦か。)
「確か、孤児院は花街の女の子供も引き受けているのであったな?」
「左様で御座います。」
陛下が真面目に話を聞いている、だと!?陛下!見直した!俺、あなたのこと見直しました!!やれば出来るじゃないですか!!!
俺は滅多にない陛下の様子に驚きの視線を向けた。しかし、すぐにこの態度は不敬にあたるとして表情を改める。
陛下の言葉に神父様は大きく頷いた。
(おおっ、陛下は王家と教会の関係に囚われず、孤児達に目をかけてくださっている!!)
良かったね、孤児院長。今日の陛下は頼れる感じがする!きっと大丈夫だっ!
「そこで御座います。実は単純な予算というわけではなく、この増えてしまった子供達の教育についてで御座います。」
(娼婦の子供か・・・・・・こないだお忍びで行っちゃったんだよな、花街。儂、やっちゃってないよね?いや、やることはやったんだけどね?大丈夫だよね??バレたら王妃に殺されちゃうよ。)
全然大丈夫じゃなかったー!!!いや、何してんの!?あんた国王陛下でしょ?花街行く必要ないでしょっ!!てかそれでさっき思い至ったのか!俺の感動返せよっ!!
目を瞑ってしまった陛下の代わりに宰相様が話の続きを促す。
「教育というと?育てて教会勤務させるのが通例ではありませんか?」
この人だけはいつもホント真面目だな。見習うべき大人だ。
「はい、ですが最近は教会も自主性を重要視しておりまして。進みたい道に進ませてあげるのも、神のお導きなのではないかと。それでこの度、学校を作ることに相成りました、そのためのご相談をさせていただきたいと考えた次第でして。」
「・・・・・・。」
(ふうむ、教会主導の学校ですか、これは、参りましたね。)
(やはり反応が鈍いですね。教皇様にはいい結果を持ち帰るとお約束したのですが、いやはや、参りましたね。)
(ふぅー。・・・・・・参ったなあ。)
・・・・・・陛下・・・・・・あんたはもう帰れ。
つづく!!
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