謁見2〜孤児院長の場合〜その2
謁見2話目です。
次回はむしろそっちがメインの裏謁見です。
楽しんで頂けましたら幸いです。
また、他の作品も別曜日に投稿しておりますので、よろしければそちらも是非っ!!
「学校、で御座いますか。」
サヨーデはニハクニレイの言葉を吟味する様に呟いた。そして、そのまま黙り込む。
王はというと、依然として瞑目したまま口を開かない。
ノママーニはというと、無だった。その部屋のオブジェと見間違うほどのクオリティでもって、景色の一部として同化していた。
誰もが重く口を噤んでいる。
それもそのハズ、古来より学舎というのは非常にナイーブな問題を孕んでいるからである。それもそのはず、インターネットなどという便利なものはあるはずもなく、生徒は教える人間の思想を大きく受け継ぐ傾向が高かったからだ。
言うなれば、それは刷り込みに近い。学校が白いものを黒だと教え込んでしまうと、それを信じ込んだまま成長してしまう。
思春期の時期に刷り込まれた者の思想は、大人になってからだと変えるのは非常に難しく、また時間を要する。
そしてこの場合、主導者側が問題であった。教会主導の元、人を教育させたとして、果たして中庸な人物に育つだろうか。
多くの場合、その答えは否であろう。当然、サヨーデを始めとして他の二人もそう考えている筈だ。
「ううむ、これは、なかなかに難しいですね。」
「はい、こちらとしても波風は立てたくないと考えてはいるのですが、大きな組織ゆえ全員がそう考えているかというと・・・・・・。」
「よからぬ思想を植え付ける可能性があるかもしれぬ、と。」
「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
再び沈黙が辺りを覆った。
沈黙を破ったのは、やはりナァルフォードだ。
「・・・・・・友達。」
「はっ、今、何と??」
ニハクニレイは弾かれたようにナァルフォードを見つめた。
「百人・・・・・・一緒に登校・・・・・・。」
サヨーデは訝しむように眉を顰めていたが、次々と飛び出るナァルフォードの言葉に徐々に表情が明るくなっていく。
「給食・・・・・・ピクニック・・・・・・修学旅行・・・・・・舞踏会・・・・・・。」
「こ、これはっ!出たっ!!!!陛下の連続多弾単語っ!!!!」
説明しよう!連続多弾単語とは、ナァルフォードの治世に置いて度々登場する行為であり、数々の問題に直面した時、王の途切れることなく連続して紡がれた単語が、魔法弾のような勢いでもって問題を瞬く間に解決に向けて塗りつぶしていくという奇跡の御技である!!!
後世においては一種の言葉による思考への威圧行為ではないか、ナァルフォードは行き詰まる思考を単語というキーワードの奔流で解決策を浮き上がらせ、問題解決を図ってきたのではないかと実しやかに囁かれている!!!
そして、怒涛の単語をその身に浴びた男達はやがて一つの解を得る。
「そ、それはもしかして我々の学舎と王立学園とを併設していただける、とっ!!」
「確かに、学園は貴族層と平民層に分かれて立てられている!その平民層の方に孤児院達を入れて授業を受けさせれば、全ての問題は解決するっ!!」
サヨーデとニハクニレイは湧き上がる興奮にその身を戦慄かせた。
何という光明、何という慈愛の精神。本来の立場であればすげなく断ってもいいというのに、ナァルフォードは子供達の為に解決策を見出したのだ。
「くぅわあぁぁぁ!!・・・・・・キャンプ、ファイヤー!!!」
「ああっ!!」
「おおっ!」
「陛下ぁぁぁ!!!!」
そして国王は一際大きな声で叫び上がると、力尽きたように玉座へと身体を沈ませた。
もはやこの場に表情のないものはいなかった。国王の目に光るのは親のいない子供達を思うが故の涙か。
ニハクニレイは感動から滂沱の涙を流して、サヨーデもそっと目頭に手を当てた。
ノママーニは歯を食いしばり、流れる涙を拭おうともせずにナァルフォードを強く見つめていた。その手はキツく握り締められている。
サヨーデは赤くなった目を拭うとすぐに動き出した。
「財務省に校舎の増設を掛け合って参ります!!それと、文官達に新たな教師の登用の指示もっ!」
「私はこのことを教皇猊下にお伝えし、すぐにでも許可を頂いて参ります。」
「ノママーニ卿、貴殿は教育に使う教科書などの在庫の確認を頼む!」
「はっ!仰せのままにっ!!」
やることが決まれば、後は動くだけだ。三人は慌ただしく、謁見室を後にしようとする。
ふと、ニハクニレイが立ち止まり再び跪いた。
「陛下、私の忠誠は神に捧げております。ですが、私のこの身体は陛下の為の働きに捧げることをお約束いたします。思想を偏らせる不届な輩は未然に必ず排除してみせます。ナァルフォード陛下に、神の幸が在らんことを。」
深く頭を下げたニハクニレイは、そういって部屋から立ち去っていった。
ナァルフォードは一人部屋に残った。その顔は俯いていて、表情を窺い知ることが出来ない。
「昔日の・・・・・・苦さか。」
その後王立学園に増築という形で併設された孤児院も含めた平民学舎は、後世に多数の人材を生み出し、世に送り出した。
ニハクニレイは教皇へと上り詰め、彼はその在位している間は親王家を唱え続け、信徒にもその方針を徹底させた。その生涯にわたり綴られた日記には、今日のことが事細かに記され、後世において当時の王国と教会の密接な関係を調べる上で充分な資料となったという。
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