謁見2〜孤児院長の場合〜
皆さんこんばんは。悪ふざけの時間です。
冗談はさておき、謁見と裏謁見でセットになりますので、今回だけ読まれた方の中にはなんだこの話はと思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、我慢してお付き合い頂けますと幸いです。
それでは、楽しんで頂けましたら幸いです。
今日も今日もとて王城には謁見の予定が入っていた。賢王と名高いアールカ王に助言を貰うべく、大陸の至る所から様々な相談事が持ち込まれるのである。
その日、ノママーニ卿がいつもより、やや遅い時間に登城すると、謁見の間では何やら言い合う声が聞こえていた。
「っ!・・・・・・っ!」
「・・・・・・。」
怒鳴り声とも呼べない、些細なもののようだ。ノママーニの能力を持ってしても、思考の一つとして頭の中に入って来ない。
とはいえ、何かあってからでは遅い。謁見の間にいるのはサヨーデ宰相とナァルフォード王の筈だ。だとしたら、言い合いをしているのは二人であろう。
ノママーニはやや小走りに扉へと近付き、ノックを行う。
「失礼致します!近衛隊謁見の間国王付き小隊第八小隊隊長代理、オーセ・ノママーニ、参上仕りました!」
ノママーニの声が聞こえたのだろう、中の声が止んだ。
入り辛いと感じつつも、ノママーニは扉を開けて中へと入った。
中にいたのは、やはり国王と宰相だ。
ノママーニの姿を見ると気不味そうに目を逸らせた。
ノママーニはうろん気な眼差し二人に目をやっていたが、はっとしたように目を見開いた。
そして、そそくさと所定の位置に着く。
そして、謁見者の訪れを告げる声が響いた。
謁見に訪れたのは孤児院長だった。教会の仕事である孤児院には教会から神父と、シスターが派遣され、運営をしている。
穏和そうな男は、堂に入った足取りで部屋の中央まで進み、形式通り跪き首を垂れた。
「・・・・・・面を上げよ。」
不機嫌そうな表情を崩さないままナァルフォードは院長へと声をかけた。
先程の件が尾を引いているのか、元々あまり教会を好んでいないのか、その声もいつもより鋭く響いた。
「はっ。」
ゆっくりと院長は頭を上げた。
ここで余談だが、アールカ王国が後の世に評価されたことの一つとして、この謁見の手順があった。
それまでの謁見といえば、国王が来る前に関係者が全てその場で待機し、国王が来るのをただひたすらに待つのが通例であった。よく聞く○○陛下の、おなーりー、というやつである。
それがナァルフォードの代になって変わった。あらかじめ時間を定めておき、その時間までに揃っていればいいとしたのである。これにより、ギリギリまで自分の仕事をする時間が出来、文官達の作業効率は著しく上がった。ノママーニにが身分の高い二人よりも遅れて来ることが出来たのは、それが理由である。
話を戻そう。ナァルフォードは院長の名前と要件を尋ねた。
姿勢を起こし、院長が口を開いた。
「本日は陛下におかれましては御身の金にも勝る貴重なお時間を小生にお割き下さり、またかような場を設けていただき誠に恐悦至極に存じます。小生はニハクニレイと申しまして、王都に御座います孤児院の院長を務めさせて頂いております。そして、かような場で不躾にもご相談させていただきますことをお許しくださいました陛下の温情に、感激と至りで・・・・・・。」
「堅い挨拶などはよい、理由を述べよ。」
ニハクニレイは口上を遮られ一瞬身体を震わせると、気を取り直して続きを話した。
宰相は慣れているからか平然とした様子でそのやりとりを眺め、ノママーニは眉尻を下げて口元を引き結んでいた。
「しからば。孤児院に振られる予算の件でご相談が御座います。」
「で、あるか。」
ナァルフォードは頷き、サヨーデへと視線をやった。その視線の意味を読み取り、サヨーデが口を開く。
「ニハクニレイ神父、孤児院の予算は毎年の教会への寄付から割り振られていると伺っておりましたが、それでは足りない、と?」
言外に充分な額を払って居るだろうと表情に圧を乗せ問いかけるサヨーデに、ニハクニレイは額に汗を滲ませた。
「は、はい、それはそうなので御座いますが。ここ最近は戦争もなく景気も安定しております故、孤児自体の数も減っているのですが・・・・・・。」
言い淀むニハクニレイを玉座から手を挙げて制し、ナァルフォードがサヨーデに問いかけた。
「確か、孤児院は花街の女の子供も引き受けているのであったな?」
「左様で御座います。」
ノママーニは驚愕の表情で国王を見上げた。が、すぐに表情を改め元の状態に戻る。
再度余談であるがアールカ王国には風俗がある。王都にはその目的専門の通りがあるほど、大衆の生活に根付いたものとなっていた。それが出来上がった経緯や、女達の働くに至った経緯はさておき、問題はその妊娠率にあった。
この時代アールカ王国では豚の腸を避妊具として用いていたが、天然のものであるため劣化し、また破け易い。
その為、妊娠する娼婦の数は少なくはなかった。そして、その場合悲しい話ではあるが望まれた子である可能性はかなり低い。殆どの場合が養子に出すか、孤児院で引き取るのが主流であった。
話を戻そう。ナァルフォードの言葉にニハクニレイはしたりと大きく頷いた。
「そこで御座います。実は単純な予算というわけではなく、この増えてしまった子供達の教育についてで御座います。」
ナァルフォードは眉根を寄せて目を瞑った。代わりにサヨーデが話の続きを促す。
「教育というと?育てて教会勤務させるのが通例ではありませんか?」
「はい、ですが最近は教会も自主性を重要視しておりまして。進みたい道に進ませてあげるのも、神のお導きなのではないかと。それでこの度、学校を作ることに相成りました、そのためのご相談をさせていただきたいと考えた次第でして。」
「・・・・・・。」
ナァルフォードは依然として目を瞑っていた。
規模の大きい話に、これは長引きそうだと、その場の誰もが考えたのだった。
つづくっ!!!
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