ヒトの街へ ①
ヒマに明かして、レイクスに2連滑車を作ってもらって郷の住民に使い方をレクチャーしたり、犬っコロを狩りに行ったり、郷の家屋の補強工事をしてみたり、砂と稲系の雑草の茎を混ぜ込んで練った土を家屋の板壁に塗って隙間風を防ぐ外壁工事をしてみたり、現代日本式の筋交いを入れた倉庫を空き地に新築したりしていたら、布団の鞣しが終わったので、森を出ることにした。
毛皮の鞣しって数ヶ月は掛かるもんだと思っていたが、短時間で漬け込みを終えられる、何とかいう名前の木の皮と魔法が有るから、ほんの2~3日で仕上がるらしい。
鞣し小屋、というか、作業場の建物も、もう少しマシなヤツに建て替えてやりたいんだよな。
大工道具や建築金物が釘の1本も無くて、建てた倉庫の出来が気に入らないから街へ着いたら道具類を色々と入手してこよう。
調子に乗って色々と手を出していたら、郷の大人たちとも仲良くなっていた。
「チキュウ世界へ帰れなかったら郷へ戻ってこいよ!」
「ああ! テツなら大歓迎だ!」
人懐っこい笑顔で郷の男どもにバシバシと肩を叩かれる。
「たまには帰ってきなさいね!」
「そうそう! 森の外の様子も聞かせて欲しいわ!」
「ああ、うん」
郷の女どもも、もう警戒心は無いみたいで友好的―――、というか、都会へ進学する近所の子供みたいな扱いを受けている。
有り難いんだけどな?
「って、ふざけんなよ、お前ら! 俺は日本に帰る、つってんだろうが!」
「「「「「HAHAHA!!」」」」」
外国人みたいな笑い方しやがって!
あれ? 外国・・・なのか?
いや。外国どころか異世界だった!
保守的で警戒心は強いけど、仲良くなってみると気の良い連中なんだよなあ。
逆に、地球へと帰って、まだ、こっちの世界へと来る手段が確保できていたときには、ヒナを連れて郷を急襲しに来てやろうと、決意を新たにした。
ケイナも、ヒナに会ってみたい、って言ってるしな。
スマホの写真にも驚いていたが、何より、同じ年頃の子供に会ったことが無いらしい。
爺さんたちとも、何度も膝を突き合わせて話したのだが、結局のところ、森から出る際にはケイナだけが俺に同行することになった。
危険なんじゃないかと話したんだが、拳闘士? とかいう前衛で殴り合う戦士スタイルの俺には、後衛の魔法術師のバックアップが有ったほうが良いだろう、という判断と、何人ものエルフ族を連れ歩いては目立ちすぎるので、と、一人だけ連れて行くことを了承したら、並み居る大人たちを悉く論破して、ケイナが同行者の座を勝ち取った。
最初に出会った日に、しっかりとした教育を受けている印象に感じたのは、間違いではなかったらしく、やっぱり、種族を代表するハイエンド。
お姫様なんだなあ。
論理だって説得する姿も堂に入ったものだったし、子供とは思えない話しっぷりだった。
滅ぼされたエルフ族の国は、こっちの世界で最も優れた知識と技術を持っていたらしくて、百年単位で外界から隔絶されていても、教育レベルは最高峰のはずだと。
ヒナと同じ年頃に見えても、さすが58歳、と、言ってしまったら、きっちりケイナに聞かれていて、無言で背中をバシバシと叩かれまくった。
エルフ族って見た目通りで耳が良いんだな。
小さなレディーに対して、俺の失言だった。
気を付けよう。
俺はデリカシーが無いからと、カナにもよく叱られたもんだ。
最終目的地は、原生林地帯の北端に位置するトカゲ山だが、少し南へ戻って西へ向かうと、神教会の版図に属さないヒト族の国があるらしい。
俺が触覚ヘビを狩り始めた巨木の森から、西へ方向転換した辺りだな。
郷から真っ直ぐ西進しないのは、”谷”というか、地溝帯というか、深い断層が有って渡れないんだと。
あの崖のことかと思ったら、アレとは全く別のものが有るんだな。
真っ直ぐに人里を目指すので有れば、俺は、逆方向へと方向転換してしまっていたらしい。
まさに、遭難者素人あるある、だな。
遭難者の玄人って、どんなのだ?
ポケットに入っていたゼムクリップを伸ばしてゴシゴシして方位磁石を作って見せたら、レイクスがちゃんとした方位磁石に仕上げてくれたので、もう遭難しねえぞ。
地形的に踏破する負担が大きい場所も有るみたいだが、面倒な場所を避けつつとにかく西へ向かえばヒト族の国へと出るらしい。
目指す先は、ヒト族領域の最辺境。
リテルダニアと呼ばれる、そこそこ大きな多種族共生の王政国家だ。
接触を断って数百年になるそうだが、かつては爺さんの知り合いが居たヒト族国家の中でもマシな国らしい。
数百年間も経って、その国がまだ存続しているのか怪しいもんだが、民族性というか、人間の特色なんてものは、そうそう変わるものではないだろう。
そう結論付けて目的地に決めた。
ヒト族の街へ①です。
リテルダニア王国へ!
次回、あの魔法道具!?




